クラシックバイクで最も洗練されたSR400
ヤマハSR400が個人的に気になっている。
1978年のSRのデビューは高校生の時に雑誌で見た。ちなみに78年はキャンディーズが解散、サザンオールスターズがデビューした年。時代は勢いよく新しいものへと流れていた。
SRと同時デビューしたヤマハのラインアップは2気筒や3気筒エンジンへと突き進む中、SRは異色のビッグシングル。ご存知通り、40年間もほぼそのままの形で生産されて、現在でも新車で購入できる。
SRはカスタムベース車としても人気。でも俺はノーマルの形が好きだ。ここからはSRに目が眩んだ俺のお惚け話を聞いてもらおう。
自分の青春時代である70年代は国産オートバイの進化が著しい時期だった。
70年代前半まではおおむね全車「往年の英国車」的デザイン。それが70年代後半には急激に四角のヘッドライトや角タンクを採用してモダン化してゆく。古いデザインは80年代に途切れる様に終わってしまった。
SRはその〈丸〉と〈四角〉の狭間の時期に生まれた。「古き良き英国車風リバイバル」ではなく、リアルに「古き良き最後の1台」として登場した。
俺的にはテールランプ別体の小ぶりなシートカウルに、70年代後半のデザイン過渡期のボーダーラインが見て取れる。
SR以前にはシートカウルがなく、SR以後はテールランプがシートカウルにビルトインされる。
つまりSRは70年代に終わったクラシックバイクデザインの最終型であり、言い方を変えると「世界で最もデザイン的に洗練されたオートバイはSRである」と結論できる。言い過ぎだと分かっているけれど、個人の意見としてそう言いたい。
もちろんSRの魅力はそれだけじゃない。シンプルなエンジンはもちろん、傾けた二眼のメーターも、大きなヘッドライトも、長いストレートメガホンマフラーも好きだ。
SRは「オートバイの魅力や楽しさって何だっけ」と問い続ける。そしてオートバイの原点を楽しみたいライダーは少なくない。その事を知っているヤマハだから、40年間もSRをそのままの形で生産しているのだと思う。
SRに惚れてプロポーズするライダーという写真。高価なバラの花束をこの1カットのために購入し、撮らせてくれるのも『ゴーグル』ならでは。これまた楽しい撮影だった。
写真・文:柴田直行