かなりのレベルまで楽しめる本格的なスポーツ性が魅力
KLX230の個性を際立たせているのは、いわゆる「フルサイズ」と呼ばれる250㏄モデルにちょっとだけ足りない、232㏄という排気量。
エンジンはOHCの2バルブでパワーも19馬力。
これだけ見ると、東南アジア向けの汎用エンジンを搭載したモデルだろう…と思ってしまうが、それは違う。
エンジンは新設計された専用品。
フレームも専用設計。KLX230は、必要にして十分なパワーと、それに見合った車体を徹底的にフィッティングさせたという世界戦略モデルで、スポーツテイストを持ったキャラクターを魅力にしているのだ。
小柄なモデルの多いこのクラスだが、車格は大きめでかつてのKLX250やCRF250Lに近い高さがある。ただ、幅などはずっとスリムだ。
サスペンションは苛酷な路面での走破性を意識して長めのトラベル量を持っているし、悪路で暴れる車体を安定させやすくする重心の高さ、その際にホールドしやすいシートの高さも備えている。
ただ、従来のフルサイズでは足着きが厳しいというライダーには、それらより少し楽、という程度。
シート高は高めの設定になっており、このクラスの人気機種である、セロー250のように甘やかしてはくれない。
小柄で取り回しやすさを魅力にしている軽量オンオフモデルに比べると大柄なKLXだが、決して見かけ倒しではなく、バネも快適指向というより耐衝撃力をしっかりと確保された設定だ。
林道を元気よく走って大きなゴロ石にぶち当ったり、くぼみに突っ込んでも簡単には底付きしない。
衝撃に耐えて、つんのめることなく戻るし、ウネリや段差を使ってジャンプしたり、フロントをリフトさせたりするのもたやすい。
ただその分、乗り心地はセローなどより少し硬めに感じる。
また、外国製のレーサー的オフローダーや、フルサイズモデルのような、衝撃吸収力や強度に優れたフォークを使っているわけではない。
大きめの衝撃を受けたときは、その分ハンドルに衝撃が伝わる。
ただ、KLXは初級~中級のライダーでも楽しめる、というのがコンセプト。
ステアケースが続くような悪路や大きなゴロ石があるガレ場だって、身軽さと車体の頑丈さで踏破できる走破性はとても頼りになる。
オフでの19馬力はかなり元気だから、いいペースでダートツーリングだってできるのだ。
このバイクの兄弟モデルにはオフロードコース専用モデルのKLX230Rがある。
車体の基本は公道向けモデルと同じで、エンジンはバランサーを外してピックアップを良くし、エンデューロタイヤを履いている。
Rの魅力は軽さと使いやすいエンジン。
サスの衝撃吸収力はほどほどで、250レーサーほどの酷路走破性はないが、ミニコースくらいなら余裕で駆け回れる。おそらく、タイヤを換えるだけで、公道仕様もこれに近い走りができるはずだ。
今回はオフロードのショートコースと公道での試乗だったが、KLX230はどんなバイクなのかをまとめてみよう。
エンジンの低中域には粘り主体の強いトルクがある。
フラットなトルク特性で力も程よく扱いやすい。
とはいえ、ここイチバンの力が必要なときには回した方がいい。
乗り心地はスポーティーで少し硬め。スタイルもいわゆるスポーツオフローダーだ。
だが、ツーリングに十分なゆとりを発揮するだけのパワーや快適性は持っていて、このサイズと軽さを活かし、林道だけでなく、ちょっと過酷な獣道や廃道など、タフさを求められるオフロードや、ある程度サスの衝撃吸収力や安定性を求められるような走りまでこなせる。これは光る魅力だ。
このクラスの国産デュアルパーパスが絶滅寸前の今、オンモデルには求められない走りの可能性を持った、コストパフォーマンスのいいバイクでもある。
オフ専用の“双子”も同時登場!
市販レーサーのKXとは違い、オフロードでのファンライドを気軽に楽しめるコース専用モデルの「R」も同時登場した。
こちらはバランサーを外した仕様のエンジンやアルミスイングアーム、タイヤ銘柄など、細かな仕様の違いはあるが、基本的には公道仕様と共通。
ステージは違っても、軽快なパフォーマンスと楽しさは共通だ。