「俺写」連載15回、『ゴーグル』で撮った初期の作品を振り返る
こんにちは、カメラマンの柴田です。
平成時代にゴーグル誌で撮影した思い出の1台を写真とともに紹介するこのコラム。夏に連載が始まり早くも15回目。今回ご覧いただくこのハーレーは2008年モデルのナイトスター。撮影したのは2007年の9月だった。
ビッグツインに比べると保守的だったスポーツスターシリーズ。そこに登場したハーレー純正の本格的メーカー製カスタムであったナイトスター。このチャレンジは後年のアイアンやフォーティエイト、セブンティツーなどのヒットモデルへと繋がった。
もっともナイトスター自体は人気モデルではなかったから、覚えている人も記憶が薄くなっているだろう。しかしこのバイクは今見てもかなりお洒落な1台。その後のダークカスタム系の色使いへと繋がるブラックアウトした車体色や、そこに載せたエンジンのグレーとブラックとポリッシュを組み合わせに感心した。
スリムなフロントフェンダーを持つステーは、後輪を駆動するベルトのカバーとセットでブレットホールのアクセント。フロントフォークにはブーツカバー。さらにスイングアームが逆傾きになるほどに車高は下げられた。質の高いネオレトロは日本でもヒットしそうだが、2007年では少し早過ぎたのかも知れない。
この写真を撮った頃、俺はゴーグル誌の撮影が始まったばかりで、担当の編集さんと阿吽の呼吸はなく「こんな写真、あんな写真」と撮影の度にデュスカッション(口ゲンカとも言う)を繰り返していた。
ゴーグルの本流であるスタイルブックのページは御大ZIGENさんが撮っていて、俺が撮る走りやバイク置きのカットがZIGENさんの写真に負けないようにしたい。バイク雑誌なんだけど、バイク雑誌らしくない。でもバイクが好きな人にちゃんと響き、そこにドラマを感じるような。そんな写真で、ゴーグルを飾りたかった。
ゴーグル誌は毎号、撮影の段階でページへのビジョンがしっかりある。それに沿って編集さんにリードしてもらいつつ、時には自分がアイディアを出しながらイメージを写真にしてゆく。そうして創っていくのは、平成時代も令和の今も本当に楽しい仕事だ。
この写真はライダーが写っていないからこそ、読者自身が写真に入り込みやすい仕掛けになっている。あなたが暖簾の下のナイトスターに跨って走り出すイメージに耽ったり、オーナー気分になって眺めたり。そんな風に楽しんでくれたら俺としては最高。
このナイトスターの写真は、そんな当時の自分の心を思い出させてくれる1枚だ。
写真・文:柴田直行
柴田直行/プロフィール
柴田直行 しばたなおゆき
1963年3月生まれ
横浜市在住
オートバイとライダーをカッコ良く撮るのを生業にしているカメラマンです。
ホンダVT250Fが発売になった1982年(19歳の頃)にオートバイブームに乗じて雑誌編集部にバイトで潜入。
スズキGSX-R750発売の翌年1986年に取材のため渡米。
デイトナでヤマハFZ750+ローソンの優勝に痺れてアメリカ大好きに。
ホンダCRM250R発売の1994年に仲間とモトクロス専門誌を創刊して、米国系オフロードにどっぷり。
カワサキニンジャ250が発表された2007年から、ゴーグル誌でも撮影を担当し現在に至る。
オンでもオフでも、レースでもツーリングでもオートバイライフが全部好き。