本格の作り込みを前に意識のリミッターを解除せよ!
「使いこなせる」「使いこなせない」、といった尺度でバイク選びをしてきたつもりだが、ほとんどの場合、結局は、「使いこなせない」「使い切れない」まま、自分の不甲斐なさを棚に上げて、語ってみたりしてしまう。
背伸びをしたい訳ではないが、モード等の選択肢が多ければ多い方が、またありったけのチカラがあればあっただけ、せっかくなら欲求に応じて全部ノセで所有感を満たすのも悪くはないはず。とはいえ、まず、身の丈が解っていないのだから、困ったものであるが。
もし、GSというジャンルのモデルを選ぶ時、どうしても気になるのが水平対向2気筒エンジン搭載の兄貴分の“R”の存在。そこで「せっかくなら……」と“R”を選ぶ前に、是非とも新生Fを試乗して欲しい。めくるめくワイルドなトラベルプランが浮かんでくるはずだ。
いつものツーリングがアドベンチャー色濃くなり、期待感に胸躍らせることだろう。なかなか抽象的な表現となってしまったが、ハイパフォーマンスを難なく受け止める均衡のとれた車体に、ラフロードも難なくこなせる本格の造りを感じたからなのかもしれない。
アクティブなライディングに応えるであろう筋肉質であり柔軟な造り込みにBMWの本気度が伺える。どことなくマイルドで万人受けし、扱いやすさ重視だった先代までのFに比べ、アスリート気質のパッケージを前にすると、自分史においての未踏領域への誘いと勘違いしてしまうほど、イケル気になってしまう。
ストリートユースにしては腰高感否めなく、とっつきにくさがあるものの、根底に流れるハイレベルな運動性能により、急激に速度レンジが変化しようとも、またラフロードでの走行が余儀なくされようとも、大らかに、そしてキメ細やかに対応してしまう。
そんな、走行するシチュエーションを選ばないといった、実に器用な一面があるというのが850の最大の特徴と言っても過言ではないだろう。
アップライトなライディングポジションで軽やかなステップを踏む車体構成に対し、チカラの演出は容赦ないほどインパクトある設定となっている。フラついてしまいがちな低速域に於いても、豊かなトルクを発生しつつ、全てコントロール下に置ける、繊細に応える操作感に親近感が湧くというもの。
また、いざワイドオープン時には、淀みない強烈な吹け上がりをみせ、車重を忘れさせる鋭い加速力を発揮し、アッパーミドルクラスの底力を垣間見た気がした。
BMW F850GS(2019)
全長×全幅×全高 2310×880×1350mm
ホイールベース 1595mm
シート高 860mm(プレミアムライン)
車両重量 236kg
エンジン形式 水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ
総排気量 853cc
ボア×ストローク 84×77mm
最高出力 95PS/8250rpm
最大トルク 9.3kgm/6250rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 15L
変速機形式 6速リターン
タイヤサイズ前・後 90/90-21・150/70R17
価格 156万1000円〜 (10%税込)
BMW F850GS Detail
写真:松川 忍 文:山口銀次郎