ハーレーダビッドソンとは違う道をたどってきたインディアン
ときには全く知識のないバイクの写真を撮る事もある。インディアン「スカウト」はまさにその1台。とりあえず俺の方はスカウトのロー&ロングのスタイルに写欲が刺激され、撮影は始まった。
「インディアンはハーレーよりも歴史が古く……」そのくらいしか知らなかった。たしかに目の前にあるスカウトはクラシックな雰囲気を持っていた。しかし同時に2015年生まれにふさわしい新しさも持ったバイク。しかもそれは違和感なく程よくブレンドされている。
新しさとはギミックやデコレーションではなくアルミフレームや水冷DOHCエンジンなどで、聞けばその最高出力は100馬力を叩き出すという。しかもクルーザースタイルなのに乗った編集者によると「楽しいのは直線よりもむしろコーナーリング」というから好感度が上がる。
スカウトはエンジンのディテールが凝っている。裏表を入れ替えたシリンダーヘッドもユニークだし、エンジン内部のメカ感を表面に浮き出させている。
見られる事を強く意識してデザインされたエンジンは、何度シャッターを押しても飽きない。そして何よりフューエルタンクのカーブが絶妙で、オーナーになる人が羨ましく感じた。
メインカットは夕方前の工場地帯をバックに撮影。スカウトは真横から少し振った角度がカッコ良く見える。カメラ位置を下げて構えると、ちょうど良いタイミングで夕暮れ時の空が雲を背負ってやってきた。
インディアンは1902年にアメリカで初めてオートバイを製造販売した会社で、その4年後にはサンフランシスコからニューヨークまでの大陸横断を当時の新記録で達成している。その後も最高速や、レースの世界で挑戦を続け、ハーレーとは別の道を歩んで来た会社だった、ということも知った。
初代スカウトは1920年に発売されたらしい。昨今、古い名車のイメージを新型車に重ねて企画されたオートバイは多いが、その中でもスカウトは魅力的に見えた。それは単なるノスタルジックではなく、挑戦のイメージがデザインやその作り込みに生きているからだ。
写真・文:柴田直行
柴田直行/プロフィール
柴田直行 しばたなおゆき
1963年3月生まれ
横浜市在住
オートバイとライダーをカッコ良く撮るのを生業にしているカメラマンです。
ホンダVT250Fが発売になった1982年(19歳の頃)にオートバイブームに乗じて雑誌編集部にバイトで潜入。
スズキGSX-R750発売の翌年1986年に取材のため渡米。
デイトナでヤマハFZ750+ローソンの優勝に痺れてアメリカ大好きに。
ホンダCRM250R発売の1994年に仲間とモトクロス専門誌を創刊して、米国系オフロードにどっぷり。
カワサキニンジャ250が発表された2007年から、ゴーグル誌でも撮影を担当し現在に至る。
オンでもオフでも、レースでもツーリングでもオートバイライフが全部好き。