(レポート:オートバイ編集部 松本正雅)
休日返上、わずか3カ月で作り上げたコンセプトモデル
ロッコ・カノーザ 氏
Ducati Motor Holding spa
スクランブラーブランド
プロダクト・マーケティング・マネージャー
EICMAでのドゥカティブース。来場者の視線はストリートファイターV4やパニガーレV4、V2に注がれていたが、それに負けないくらいの人だかりができていたのが、スクランブラーコーナーに突如展示された2台のコンセプトバイクだった。その名もデザートXとモタード。このマシンはいつ頃開発がスタートしたのだろうか。
「2台とも、アイデア自体は何年も前からあったのですが、実際に動き出したのは最近になってからでした。具体的にEICMAに出展してもいい、というゴーサインが会社から出たのは今年の7月ごろのこと。そこから先は、夏休み返上で制作にかかりました」
こう教えてくれたのは、スクランブラーブランドのプロダクトマネージャー、ロッコさん。それぞれ個性の際立った、8機種のモデルラインアップを誇るスクランブラー・ファミリーのカギを握る人物のひとりだ。
聞けば、ドゥカティという会社は市販予定が決まっていないバイクは、原則としてショーには展示しない方針のようで、過去にコンセプトモデルが展示されたのは、唯一初代ハイパーモタードがデビュー前にコンセプトバイクを展示した1度きりだそう。いかに今回の展示が「例外中の例外」であるかが、お分かりいただけるだろう。
ということで、まずは気になる2台、それぞれのマシンの説明をしていただいた。
「デザートXはスクランブラー1100のエンジンとフレームを使用したコンセプトモデルで、イメージしているのはビッグタンクを備えた、ラリー用のマシンです」
ここで言うラリー用のマシンとは、当然ながらかつてのパリ・ダカールラリーを戦ったマシンのこと。独創的なマスクを形作っているLEDの2眼ヘッドライトも、そうしたラリーマシンをイメージしてのことだ。
その独特なスタイルがかつてのダカールレーサー、カジバの「エレファント」を想わせるが、何か関係はありますか、という質問に対して、ロッコさんはこう答えてくれた。
「確かにカジバのエレファントからもインスピレーションを得ています。かつてはドゥカティもカジバグループに属していたこともありますから、カジバは言ってみればドゥカティのヒストリーの一部なのです」
一方のモタードについては、このような説明をしてくれた。
「モタードはスクランブラー800のエンジンとフレームを使ったコンセプトで、パーツの一部はデザート・スレッドのものを使用しています。位置づけとしてはスポーティなグレードとなっていて、既存のラインアップで最もスポーティな『フル・スロットル』よりもスポーティな性格という設定です」
また、このモタードコンセプトは、タンクの化粧パネルが中央から左右に2分割できるカバーとなっており、従来とはまた違った「着せ替え」が楽しめる仕様となっている。
初のコンセプトモデル展示となったハイパーモタードがそのまま市販化されたことを考えれば、このスクランブラー・ファミリーの2台が市販化される可能性も十分にありそう。期待して待ちたいところだ。
(レポート:オートバイ編集部 松本正雅)