今回の神社拝走記は、再びバイク乗りを歓迎する秩父•小鹿野エリアへ。「バイク乗りはなぜ秩父に集まるのか?」それが分かった旅だった。
※この記事は月刊オートバイ2018年8月号(別冊付録 RIDE)で掲載したものを加筆修正しております。
非日常で気がつく日常の大切さ
前回お伝えした秩父往還と呼ばれる現在の国道140号線。近頃は、こちらの道が注目されることが多い様に感じます。この道は、秩父から山梨県へと続いていますね。
地図を見ると、秩父市街から西へ伸びる道がもう一本あります。それが、国道299号線。こちらは長野県へと続いています。このことからも、秩父が交通の要所だったことがわかりますね。
旅の中で大きく迷うこと。それは、分かれた道のどちらへ行くかってこと。交通の要所へ向かう時、そこには多くの道と選択肢があります。
だけど、逆に交通の要所に立った時。そこには、選びきれない目的地たちが存在する。
秩父往還とバイク弁当を味わったら、次は299号線へ。山が多く、縦を繋ぐ道はありません。一度、秩父市街へ戻ります。そう、交通の要所へと戻るのです。
「秩父」と一言に言っても、地域によって色々な表情を見せてくれます。疾走っていると、名も無き小さな神社に出会うことがあります。
もちろん出来る限り参拝させていただくようにしています。そんな神社にこそ、知らないことを学ぶ機会が詰まっているから。
そんなことを繰り返しているうちに気付く。見過ごしているだけで、毎日は出会いに溢れているのかもって。
【神社一口メモ】
偶然見つけた釜山神社。参拝後、御朱印を頂こうとしたら神職は留守でした。実はこれ、よくあるケース。神社巡りは、まさに縁。
狼と鹿が道案内してくれる
アルファベットで書かれたOGANOの文字。それが上手にデザインされ、オートバイを形作っています。
299号線を疾走って、辿りついた小鹿野町。前回お伝えした通り、小鹿野では町を挙げてライダーを歓迎しています。そこに鎮座するのが小鹿神社です。
こちらの神社では、全国からやってくるライダーのために、バイクの御祓をしているそうです。そのほか、お守りなどもライダーのために用意されたものがありました。
秩父地方の神社には、狼による言い伝えがあるところが多く存在します。この辺りに狼が生息していたことや、東征するヤマトタケルを道案内したことに由来するそうです。
しかし、この地域では鹿がヤマトタケルの道案内をしたと伝わっているそうです。そのことから地名や神社名に「鹿」が使われているのだとか。
同じ秩父にある神社でも、少しずつ伝承が違うんですね。通る人や使われ方は、道ごとに違います。やっぱり、歴史は道ごとに作られるのでしょうか。
町を挙げてライダー達を待っている小鹿野
旅の後半はずっと、小鹿野で出会ったMOTO GREENIGの小野さんに案内をしていただいていました。時間を気にせず、ただ紹介していただくままに出会いを重ねて。初めての土地で、もちろん自分は知らないことばかり。
だから、とても有難かったです。旅はこうでなくっちゃ。
その方から滲み出ていたのは、小鹿野愛。次々と、お店や神社を紹介してくださいました。わらじかつを食べたお店も、小田さんが紹介していただいたんですよ。
たじま 天ぷら•うなぎ•季節料理
埼玉県秩父郡小鹿野町小鹿野826
秩父といえば、わらじかつ!
どこのお店に行こうかと迷っていると、旅で出会った地元の人に「絶対にここ」と、教えていただきました。わらじかつは、なんと2枚!
下のご飯が全く見えませんでした。一口噛むと、しっかりと染み込んだ味が広がります。天ぷらや鰻料理で培われた味付けが、わらじかつを高級料理に仕上げていました! やっぱり、地元の人に聞くとハズレませんね〜。
さすがライダーを受け入れてくれる町。オーナーご自身がライダーというお店も幾つかありました。
今回の旅で感じたこと、それは「秩父」の広さ。一言に秩父と言っても、地域によって見せる表情が全く違いました。
でも、共通していたことが一つ。それは、旅人を迎え入れてくれる人の心。
昔から交通の要所で、多くの人が集まった場所だからでしょうか。これはライダーには本当に嬉しいポイントですよね。
国道沿いに鎮座する小鹿神社。秩父へ向かう時に参拝するもよし、秩父を離れる時に安全を祈願するもよし。昔の旅人も、僕たちと同じだったに違いありません。
新しく見つけた疾走る理由
RIDEで連載を始めさせていただいてから、1年が経ちました。バイク好きであることは連載開始前より変わりませんが、僕の中で大きく変わったことがありました。
以前は一人で疾走ることがメインでした。いや、それは今も変わってないのですが、新しくいただいた機会、それがRIDE集会。
一人で疾走ることはおろか、神社へ行ったり峠へ行ったりと、疾走る行き先も連載前は「独り」でこなす事ばかり。それが、神社拝走記スタートを機に参加し始めたRIDE集会で、大きく変わったのです。
なんてったって僕がRIDE集会へ参加する理由は、人に会いたいからなんですよ。参加者の皆さんに会うために、疾走って行くんです。
エンジン音は発するものの、言葉を話すわけじゃないバイク。そのバイクと、ただ向かい合う。それが僕のバイクライフでした。
それが今は、同じ気持ちの人たちとの繋がりを感じている。そう、一歩先へ行けた感じ。バイクが連れて行ってくれました。
これを味わってしまうと、きっと後戻りはできませんね。エンジンを止めて、景色を眺めて、そんなことを考えました。
人に会いたくて、人は疾走る。だからまた疾走り出したくなるんでしょうね。この景色の向こうを見たくて…神社拝走の旅は続く!
文:佐々木優太/写真:関野 温
※この記事は月刊オートバイ2018年8月号(別冊付録 RIDE)で掲載したものを加筆修正しております。