「本来の姿」がもたらすハイレベルのオフロード性能
日本でも正規販売されたCRF450Lだが、昨年カタログ落ちし、国内仕様は店頭在庫以外は入手できなくなった。しかし、逆輸入車ならまだ手に入る。パッセージが輸入した逆輸入車は、パワーもCRF450L本来のものにセットアップしているので、国内仕様とは乗り味がずいぶん違う。
主な変更点は吸排気とサスペンションだが、今回は国内仕様との差を中心にインプレッションしていこうと思う。
国内モデルで大いに議論を呼んだのが、24PSというパワースペック。450㏄にも関わらず、250㏄のトレールバイク並みのパワーしか出ていなかったからだ。これは国内の正規製造基準を満たすための処置で、メーカーからしたら、これでも随分と頑張った方だろう。何しろ、本来のパワーから無理やり吸排気を絞ったわけだから。
しかし、これが逆輸入車なら車検さえ通る規格であればいいわけで、その様子はずいぶんと変わってくる。パワーグラフで見る通り、約40PSのパワーを発揮するようになっているのだ。
実際に乗ってみて、パワーよりも、まず最初に感じるのが、アクセルを開けた時に感じるトルクの谷のなさだ。国内仕様では、一気にアクセルを開けると、吸気が間に合わずにボコボコともたつく場合があったが、この逆輸入車ではしっかり加速する力強さがある。これが一番の大きな違いと言ってもいい。
オフロードにおいて、アクセルに対するピックアップの性能は、走りの違いに大いに関わってくる。ギャップを越えたい、ガレ場を走る、といった時にフロント荷重を減らすべくアクセルを開けて加速するのだが、今回の試乗車は、ここでリニアに反応してくれ、ストレスなく走ることができるようになっている。
一方、パワーという面では、モトクロッサーに慣れている人なら、物足りなさを感じるだろう。ドカンとくる力強さはなく、あくまでマイルド。フラットトルクなので、凶暴さはどこにもない。これは長時間走るロングディスタンス用のセッティングのためだ。アクセルに対して敏感なパワー特性だと、ライダーの腕上がりを簡単に誘発するので、そうならないようにしてあるのだ。
逆輸入車はサスペンションも若干フィーリングが違い、国内仕様と比べて、ハードな味付けになっている。初期から柔らかく沈む国内仕様とは異なり、この逆輸入車は、ゴツゴツと固めで、しっかり感がある。
より高いスピードレンジでの踏ん張り感と、ダイレクト感があるので、路面からのインフォメーションを掴みやすい。といっても、それはオフロード車をある程度乗れるレベルの人の話で、そうでなければ固いと感じるかも知れない。
CRF450Lが持つ、本来のオフロード性能を引き出してみたい、と思うユーザーにとっては、これこそが「欲しい姿」であることは間違いないだろう。
文:三橋淳/写真:柴田直行