「R」の文字をひとつ加えてRR-Rとした新型ファイアーブレード。主戦場をサーキットに移し、勝利にこだわったマシン造りに徹底したというが、実際はどうなのか? K16が開発メンバーに話を訊いてみた。
インタビュー:宮崎 敬一郎
あくなき“勝利”を狙うファイアーブレード新世代
CBR1000RR-R…もう既に本誌やwebオートバイで報告した、ホンダが誇る新型SSだ。
どんなバイクか? ひと言で言えば、コイツは「ホンダがフッ切れた」バイクだ。とにかくレースで勝てるポテンシャルを持つよう、全てをリニューアルしている。
大きな変更点で言うと、これまで守ってきたユニットプロリンクを廃し、エンジン後端で支持するプロリンクにしたり、エンジンは徹底的にフリクションロスを低減した217.6PSユニットを採用したりしている。
出口寿明 氏(左)
本田技研工業株式会社
二輪事業本部 ものづくりセンター
パワーユニット開発部 動力研究課
技術主任
石川 譲 氏(右)
本田技研工業株式会社
二輪事業本部 ものづくりセンター
完成車開発部 完成車統括課
課長 技師
「ホンダの自信と誇りは仕上がりに表れている」
コンロッドはチタン。カムからピストン、ピストンピンにいたるまで、摺動抵抗低減のため、あらゆる種類の硬質メッキを施している。
ボア・ストロークは高回転域の馬力性能やバルブ周長を最大限稼ぐため、MotoGPマシンのRC213Vと同じ。たとえライバルが次世代モデルに進化しても優位に立てるパワーを目標としている。
…そんなことを言うと、意地でそのスペックを越えたがるライバルがいるのでは? と尋ねると、エンジン担当の出口さんは「パワーを稼ぐのにはとても苦労しました。
機械的な造りだけでなく、制御系から一体に考え、使えるパワーに仕上げるのが大変なんです」と、やすやすとは越えられない、と言う。
そこはやはりホンダ。「フッ切れた」とはいえ、誰にでもその大パワーを使わせようとしているのだ。
そんなパワーを押し込めたシャシーは大幅に剛性を上げている。リアサス懸架の変更やエンジンを核として剛性バランスを取り直している。
強度を上げつつ、適度なしなりを持たせて…と説明されたが、要は、しなったり、大荷重を支えたりする折り合いを、これまでよりずっと大きな荷重が掛かった状態で、操作しやすくバランスさせたのだろう。
LPL(開発責任者)の石川さんに、サーキットで200㎞/h以上で全開のまま力任せに切り返すような操作をしたときはどうなる? と聞いてみると「軽くなっていますし、これまでのCBRでは不可能なレベルの安定感や接地感です。
スリックタイヤを履いてもそれは全く変わらず、車体は音を上げません」との答え…。
もう、ほぼレーシングマシンである、と言ってるようなものだが、やはりそこはホンダ。誰が乗ってもそんな操作を簡単にできてしまうのではないだろうか?
聞けば聞くほど、早く乗ってみたくなった。(インタビュー:宮崎 敬一郎)