オールラウンドネイキッドへのいじる楽しみ
1997年に初代となるカワサキZRX1100が登場し、2001年には1200へ進化。さらに諸規制への適合化を図るために日本専用車DAEGとして2009年から展開し、2016年に生産終了したZRXシリーズ。
生産終了から3年が経過した現在も、カスタム市場で根強い人気を維持するのだが、その回答のひとつを提案しているのが、このケイファクトリーDAEGではないだろうか。
「バイクのひとつの楽しみとしてカスタムがあって、手を入れて遊べるバイク、そしてそのためのパーツが必要だから、パーツを作っているんです」と代表・桑原さんが言う同社。このDAEGはそのデモ車として、’18年春の東京モーターサイクルショーでスーパーチャージャー仕様となった。
そもそも冒頭の変化、ZRXシリーズの変化はバイク界の動きをよく表していて、1992年発売のカワサキゼファー1100をきっかけに市販車のネイキッドブームが訪れた。カスタムとの親和性も良く、速さというひとつの目標を追うレプリカの時代から、個性を追う方向になっていた。
その中でも再び速さをネイキッドに盛り込みたい、カウルもあった方がいいなどの要素を盛り込んで、水冷+ビキニカウルで現れたのがZRX1100だった。
当時の最速モデル、カワサキZZR1100のエンジンに外観的な表情を付け、前後17インチで走りを意識する。4年後のモデルチェンジには多少過激と評価された部分を抑えて現代化を図る。そして2009年のモデルチェンジの際には、中心市場となる日本にはFI化によってDAEGを設定。
日本風のネイキッドバイクがいったん下火となった欧州向けにはストリートファイターのZ1000で対応するという具合。生産から20年が経ち、いよいよ規制適合が難しくなるとシリーズを終了する。ただ、代わりとなるべきネイキッドに’17年末、Z900RSを送り出し、これは成功する――。
これらを踏まえて改めてケイファクトリーDAEGを見てみる。かつてはルックスやパワー感に凄みを持たせる機構だった過給は、クランク軸の回転で混合気を加圧するスーパーチャージャー式。
チャージャーはデンマークのROTREX製汎用型で、加圧新気を溜めるサージタンクパイピングや高回転のインペラー用オイルタンク、軸出力に使うコグドベルトのカバーなどはMSセーリングがワンオフ製作する。これによってノーマル+90psの200psを発揮。
かつてはじゃじゃ馬的な印象があった過給システムだが、ここではサブコンやインジェクターの変更でしっかり調教し、普通に乗れる。乗ったことのある人なら、Ninja H2/SXのイメージが近いと言えば分かるかも知れない。
一方の車体側は、ケイファクトリーのパーツを軸にセットアップが進み、その200psを難なく受け止めて、ライダーを安心させてくれる。内容を列挙すれば、スイングアームがケイファクトリー・アルミ目の字断面となって前後のオーリンズショックとともに路面インフォメーションを高める。
BSTカーボン製ホイールも高い強度と軽量性で運動性を、ブレンボ+サンスターのブレーキ系はタッチと制動性で安心感を、それぞれ高める。この車体側のチューニングは通常の、過給なしのカスタムでも効果がある部分で、ここを過給に対応させていると言える。
このように、かつてとは異なり今風にまとめられたDAEGだが、これはよく考えれば、ZRXというシリーズのネイキッド、オールラウンダーとしての資質がかなり高いところにあるということの裏返しかも知れない。
元々の倍近くのパワーも受け止め、高速道路でも空力のための追加付加物を特に必要としない。それでいて、パーツも豊富で好きな組み合わせで構成できるし、それによってのセットアップ幅も広がる。1100ならばメカチューンも行いやすい。
そうした、ファンあるいはプロの手が入れやすく、腕の見せ所にもなるというベースの良さの再認識。加えて、パーツ群を活用したカスタムの魅力。この2点を適切に表現した1台として仕上がっているのだ。