ホンダ「GROM」(グロム)試乗インプレ&解説 -太田安治-
スポーツバイクの魅力を知るには最適な一台
125㏄クラスは手軽なスクーターが主流だが、最近はマニュアルミッションのスポーツモデルやミニバイクが数多くラインアップされ、気張らずにライディング技術を習得できるエントリークラスという大事な役割を担っている。このグロムもそんな一台だ。
スロットルワークに加えて、クラッチとシフト操作を連携させ、回転数によって変わるエンジンパワーを状況に応じて使うのがスポーツライディングの第一歩。このグロムはマニュアルクラッチと4速ミッションを備え、パワー特性は穏やか。これはコミューターとしての乗りやすさを狙った結果だが、練習にもうってつけの特性となっている。
市街地から舗装林道のような峠道までを走り回ってみたが、小柄な車体+前後12インチの小径ホイールの割に安定感が高い。メイン市場であるアジア諸国の道路事情を考えれば納得の設定で、車体を抑え込みやすいライディングポジションと併せて、荒れた舗装林道でも不安なく走れてしまう。なにより、この穏やかなハンドリングはビギナーにとって大きな安心材料。
ただ、めいっぱい飛ばすと前後サスペンションがバタつき、小径ホイールのネガな面が露呈する。速度に伴ってホイールベースの短さに起因する突き上げ感も強まるので、快適速度は70㎞/h以内だが、ストリートユースであればまったく問題ない。
カブ系の発展版である水平シリンダーの空冷単気筒エンジンは実にフラットな特性。タコメーターの必要性も感じないほどで、排気音の高まりを目安にシフトアップするだけでスムーズに加速できる。
高回転でパワーが盛り上がる特性ではないので、早めのシフトアップが効率的だ。4速ミッションもこのパワー特性に合った設定で、5速や6速が欲しいとは感じなかった。
先代グロムとの違いは外装デザインと、ハンドル、シートの変更でライディングポジションが少し前寄りになった程度。パワーやハンドリング特性は踏襲されている。それだけグロムが世界戦略車としてバランスの取れた完成度になっていると言っていいだろう。
スポーツモデルとミニバイクの中間的な性格で、実用からミニバイクレースまで、幅広い用途に応えるグロム。カスタムパーツで自分好みに仕上げる楽しみもあり、オートバイ入門にピッタリの一台だ。
文:太田安治/写真:赤松 孝/モデル:木川田ステラ
ホンダ「GROM」(グロム)主なスペックと価格
全長×全幅×全高 | 1755×730×1000mm |
ホイールベース | 1200mm |
最低地上高 | 155mm |
シート高 | 760mm |
車両重量 | 104kg |
エンジン形式 | 空冷4ストSOHC2バルブ単気筒 |
総排気量 | 124cc |
ボア×ストローク | 52.4×57.9mm |
圧縮比 | 9.3 |
最高出力 | 7.2kW(9.8PS)/7000rpm |
最大トルク | 11N・m(1.1kgf・m)/5250rpm |
燃料タンク容量 | 5.7L |
変速機形式 | 4速リターン |
キャスター角 | 25゜ |
トレール量 | 81mm |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70-12 51L・130/70-12 56L |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 36万3000円(税込) |