ライディングスクールの主宰を10年以上務めるモーターサイクル・ジャーナリスト柏 秀樹 氏が持論を展開する連載企画。今回のテーマは「運転技術の上達に欠かせない4つのアクション」です。バイクに思うように乗れていないという方、ぜひ動画とともに最後までご覧ください。

「4つのアクション」を実現するうえで、忘れてはならないこと

4つのアクションは、ワインディングの曲がり方や危険回避テクニックのひとつにして損はないと思う。

損得というよりも、この4つのアクションが個別にちゃんと練習できて、どのパターンでもいつでも組み合わせができるとバイクはもっと自由に楽しく安全に走れるようになるということ。

では、最後にもう一回チェック。

入門と基礎は似て非なるもの。どんなハイレベルになっても3秒かけて鼻で息を吸う。7秒かけて口でゆっくり息を吐き切る。

つまり呼吸管理。そして脱力管理と連動。これは基礎としてずっと重要なライディングの原理原則。

画像: www.autoby.jp
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両肩をグッと大きく上げながら鼻で息を吸いながらハンドルグリップをギューッと握って、肩、ヒジ、手をガチガチにする。そこからゆっくり7秒かけて息を吐きながら肩、ヒジ、手をユルユルにする。脱力連動の柏秀樹流「10秒マインドフルネス」だ。

次に4フォーム。飛ばすことよりも前にちゃんと4つのフォーム、リーンウイズ、リーンイン、リーンアウト、ハングオフが自由に大きく動けてしかも10秒マインドフルネスができるかを確認。

そして4つのフォームがちゃんとできるようになったら、4つのアクションで曲がる段階入る。

体重移動、ステップ荷重、タンク荷重、逆操舵。どの曲がり方が正しいとか間違いではなく、5分か5kmに1回の呼吸脱力管理ベースに4フォームと4アクションが、いつでもどこでもちゃんとできるか。

むやみに飛ばすよりも、冷静に自分への問いかけを忘れず、バイクと以上のやり方で会話すれば、走った分だけライディングは必ず進化する。

飛ばして速くなるより、飛ばさずに早く上手くなってほしい。本当の速さとはそういうものだ。

より安全で、より疲れずに乗れたら、バイクはもっと楽しくなるよ。

「4つのアクション」を活用したライディングを写真とともに解説

カワサキ Ninja H2 SX SEでタンデムした場合

画像: カワサキ Ninja H2 SX SEでタンデムした場合

カワサキのNinja H2 SX SEでタンデムの場合は、高剛性な車体ゆえに低速走行時に重量感が強い。

なのでここでの走りは、Dの逆操舵でラインを選択。Bのイン側ステップへの荷重やCのタンク荷重はその補佐として使う。

逆操舵メインで車体が早めに大きくバンクしようとした頭をイン側にいれても上体がセンターに残り、写真としてはリーンウイズフォームに写るわけだ。

ドゥカティのスーパースポーツモデルの場合

画像: ドゥカティのスーパースポーツモデルの場合

ハイペースの高荷重コーナリングでこそ曲がる楽しさが味わえるVツインのドゥカティ。

ためらいなくコーナー手前で一気に大きく頭をイン側の前方向に出す。つまりA:斜め前方向。

単気筒バイク並みにクランク幅の狭いドカティはそれだけで素早く反応して曲がってくれる。中途半端だとかえってメリハリが出にくい一面がある。頭を大きく一気にインへ。思い切りが大事。ハンドルはこじらない乗り方を優先。

ヤマハ セローの場合

画像: ヤマハ セローの場合

セローのように軽量級のバイクは、どんな入力も簡単に反応。動きがわかりやすい。イン側ステップでも上体をインに入れるのもCのようにタンクを外から押し付けるのも、すぐにレスポンス。

逆操舵をするならさらに手には力を入れないで穏やかに押し出すとちょうどいい。

軽量級バイクこそ脱力確認絶好のターゲット。呼吸と連動して脱力することを習慣化しよう。

トライアンフ タイガー1200でのタンデムの場合

画像: トライアンフ タイガー1200でのタンデムの場合

電子制御サスによってソロと同じ車両姿勢が取れるため、運転操作は実にナチュラル。タンク荷重Cはほとんど効かず、Bのステップ荷重でやや反応。

Aは頭がやや外側にあるリーンアウトの状態。カーブの先の見通し確保が主体のため。Aの頭をイン側に入れる体重移動ではとても自然な舵角のつき方を示す。

逆操舵でのレスンポンスは過剰ではないし、しっかりとした車体剛性も実感できる。

BMW R1250GSアドベンチャーでのタンデムの場合

画像: BMW R1250GSアドベンチャーでのタンデムの場合

このバイクは縦置きクランクによるロール方向のレスポンスが非常に良い。しかもフラットツインによる低重心もその魅力を後押ししている。

なのでイン側ステップへの荷重で簡単に曲がり始める。

このクラスの重いバイクでは反応がほとんどないCのタンク荷重でも、手の力を抜いてやればしっかりレスポンスする。

この状態で「う」の外足荷重で車体を起こしてラインを外に持っていくのも容易。「え」の方向へステップを抜重すると自動的にイン側ステップへの荷重が移動できる。これもGSはわかりやすい。

フラットツインによるヘッド周りの軽快性が、このバイクの扱いやすさの決め手となっている。

「あ」は左コーナー旋回中に障害物を見つけ、センターライン側にラインを一気に変えたい場合に使う「加操舵」を試す方法。

右手を前に押すとハンドルは左に切れる。すると車体が一気に起き上がって右へ行くというテクニック。

ハンドルを切り足して車体を起こす方法は、このバイクに限らずすべてのバイクで実感していただきたい。まずは穏やかな入力から確認したい。

完全停止直前(時速2km/h以下)に行うステアバランスによる右足着き、左足着き選択とコーナリング中の逆操舵はまさに原理は同じ、ということ。

どれが正しいか、ではなくどのようにでも使い分けたり、複合させて安全快適で楽しければいい。

自在に使えると楽しいし、安全でしかも楽チンな4アクションを習得してほしい。

文:柏 秀樹

画像: KRS柏流4アクション:バイクの曲がり方・ライン修正4例の講習 www.youtube.com

KRS柏流4アクション:バイクの曲がり方・ライン修正4例の講習

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画像: KRS柏流4つの曲がり方4アクション:ライダー目線バージョン www.youtube.com

KRS柏流4つの曲がり方4アクション:ライダー目線バージョン

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柏 秀樹 プロフィール

画像: 柏 秀樹 プロフィール

大学院生(商学研究課博士課程)の時代に、作家片岡義男氏とバイクサウンドを収録した「W1ツーリング~風を切り裂きバイクは走る~」を共同製作。大学院修了後にフリーのジャーナリストとして独立。以降、ダカールラリーを始めとする世界中のラリーを楽しみながら、バイク専門誌の執筆活動や全国各地でトークショー出演などを行っている。

バイク遍歴60台以上、総走行距離100万キロ以上、そして日本中の主要ワインディングロード、林道のほか世界の道を走ってきた経験をもとに2003年に始めたライディング・アート・スクールをリニューアルして2009年から新たにKRSこと柏 秀樹ライディング・スクールを開校。バイクやクルマの安全と楽しさを一人でも多くの人に熱く伝えることを生き甲斐にしている。

柏秀樹持論

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