文:伊藤フミヒト(自動車保険の窓口)/※写真はイメージ
知っておきたいバイクの任意保険の「等級制度」
バイクの任意保険には「等級」という制度が設けられている。これは保険の利用実績(事故歴)によって判定される「ランク」のようなもので、等級が上がるほど割引率も大きくなる、という保険料決定における大変重要な仕組みだ。
ここまでは理解している人も多いと思うが、実際に「等級が上がってどれだけ保険料が安くなっているのか」について知りたい人は多いのではないだろうか。
また、等級については「どんな事故で等級が下がるのか」「バイク買替えや保険会社変更時の等級の引き継ぎはどうなるのか」といった疑問も多い。
そんな人に向け、この記事では、
・等級制度とは一体なんなのか
・等級別の割引率について
・等級が下がる事故と下がらない事故(ノーカウント事故)
・バイクを買い換えた場合や、保険会社を変えた場合の等級引き継ぎ
など、「等級制度」について基本から丸ごと解説する。
初心者だけでなくベテランライダーも、等級制度について理解してなかった人は、これを機に仕組みを覚えておこう。
バイク保険の等級制度って何?
等級制度とは、保険の利用実績(事故歴)によって決められるランクのようなものだ。
カウント開始は1等級からではなく、原則6等級から(セカンドカー割引を使えば7等級から)。
保険を使わなければ毎年1つずつランクが上がっていき、逆に保険を使うと翌年の等級は1〜3ランク下がる、という仕組みだ(厳密にいうと、保険を使っても等級が下がらない「ノーカウント事故」というものもある。これは後ほど詳しく解説しよう)。
等級は高いほど割引率は大きく最大で63%の割引。逆に1~3等級の低い等級などは、割引どころか最大64%の割増となる。もっとも、等級が低い=保険使用が多い、ということで保険加入を断られるケースもあるのだが……(これは借金の返済滞納歴がある人は「リスクあり」と判断され、融資を断られる、ということに似ているだろう)。
コツコツ等級を上げることは、結果的に大きな保険料につながるため、ドライバーの皆様には是非安全運転を心がけていただきたい。
【バイク保険の一言メモ】
ちなみに、バイク保険は「人」にかかる保険ではなく「バイク」にかかる保険だ。つまり、等級もバイク(個別の車体)に紐づいている。例えば、2台目を新しく増車した場合も今のバイクと同じ等級で使える、という話ではないことを覚えておこう。
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バイク保険の等級別割引率【早見表】
では、実際にみなさんのバイク保険はどれだけ割引になっているのか。以下早見表になるので確認してみてほしい。
ちなみに、6、7等級に「F」というマークが付いているが、これは「新規でない(=2年目以降)」という意味だ。新規加入の場合は6s、7s等級という表記になる。そして、新規加入の場合、約4%〜の割増になる、ということを覚えておこう(割増率は保険会社による)。
また、「事故有り」という単語も気になるはずだ。これは、等級ダウン事故で保険を使ったことにより、「事故あり係数」がついたのである。そして、事故あり係数の有無で割引率は変わってくる。
例えば、3等級ダウン事故を起こしたとすると、翌年から3間は事故あり係数がつくため、事故なしの割引率よりも小さな割引しか適用されない。しかし、その3年間を無事無事故で過ごせれば、事故あり係数は撤廃され、事故なしと同じ割引率に戻る、という仕組みだ。
このように、「事故有り係数」のあり・なしによっても割引率が変わる、ということを覚えておこう。
1回の事故で等級はどれだけ下がるのか?
1回の事故(保険使用)で等級はどれだけ下がるのか、結論から言うとカウントの仕方は次の3つ存在する。
ノーカウント事故 | 人身傷害保険や搭乗者傷害保険、 また弁護士費用特約やファミリーバイク特約の利用などについては 保険を使っても翌年の保険料に影響しない。 |
1等級ダウン事故 | 盗難・火災・台風・洪水・落書き(いたずら)・飛び石・その他偶発的な損害……など、 ドライバーの運転というよりは外的な要因による事故の場合は1等級ダウンで済む。 (詳しくはご加入の保険約款を確認)。 |
3等級ダウン事故 | 上記以外の事故(詳しくはご加入の保険約款を確認)。 |
このように、ノーカウント事故というものも存在する。ノーカウント事故の場合は翌年への影響が一切ないので、遠慮なく保険をつかってほしい。そのための保険なのだから。
等級の引き継ぎはできるのか?(買替え・保険会社乗り換えの場合)
例えばバイクを古いバイクから新しいバイクに買替えた場合や、保険会社を乗り換えた場合、この場合コツコツ進めた等級は引き継げるのかというと、答えは「yes」である。どちらの場合も等級は引き継げるので安心してほしい。
ただし、バイクの買替えの場合は「排気量区分」が同じバイクの場合のみだ。具体的には、125cc未満と125cc超の2区分。これが異なるバイクに乗り換える場合はまた等級は6等級からのスタートとなる。
また、自動車からバイクに乗り換えた場合(逆もしかり)の等級引き継ぎもできない。これも覚えておこう。
等級進行にロスがない乗り換えタイミングは「満期」
ここで等級進行に関する節約テクニックをひとつ紹介しよう。
等級は保険会社を乗り換えても原則引き継がれるが、もっとも等級進行に影響しないタイミングは「満期」ということを覚えておいてほしい。
これは、等級の進行が「始期日」を起算点にカウントされることに起因する。
上の図のように、途中で乗り換えてしまうと、乗り換えた時点がまた起算点となってしまい、乗り換え前の時間経過が無駄になってしまう。極端な話、11ヶ月目で乗り換えをすると、またそこから1年待たなければならないため、大きなロスとなる。
「等級進行」と言う観点から言えば、できるだけ満期〜その直後に乗り換えるのが最も合理的、ということを覚えておいてほしい。
まとめ
・等級とは、保険料に関わる重要な要素。1〜20等級までで区分される。
・等級が上がるほど割引率は大きくなり、最大で63%の割引となる。逆に1等級の場合は64%の割増に。
・新規で6等級からスタートし、保険使用がない、またはノーカウント事故の場合は毎年1等級ずつ上がっていく。
・保険を使うと1〜3等級ダウンし、事故あり係数がつく。
・保険会社の乗り換えの場合は等級の引き継ぎ可能。バイクの買替えの場合は排気量が同じ場合のみ引き継ぎが可能。
以上、バイク保険の等級制度についてある程度網羅して触れてみた。これまで抱えていた等級に関する疑問などがとけたのなら嬉しく思う。
事故を起こさなければ基本的には保険を使う機会もないため、なんだか持ったにない気もするが、そんな優良ドライバーが少しでも合理的な保険料となるような仕組みがこの等級という制度だ。
毎年コツコツと進めていけば保険料は安くなっていくため、ぜひ安全運転を心がけてほしい。
文:伊藤フミヒト(自動車保険の窓口)/※写真はイメージ
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profile|伊藤フミヒト
ウェブサイト『自動車保険の窓口』代表。交通事故専門の弁護士30人以上への取材経験を持ち、交通事故の賠償問題に精通。賠償金増額の仕組み、また後遺障害等級認定の裏事情を深く知る。