スーパーカブ最大の特徴ってやっぱクラッチレス機構だと思うんですよね。
で、それを実現してるのがスーパーカブ特有の「自動遠心クラッチ」。分解してもなにがどうなってるかよくわからなくて、組みつけの際にもいまいち納得いかなかったりしたのよね。せっかくの機会なので、「自動遠心クラッチはなにがどうなってるのか」を解説しちゃおうかと思います。
自動遠心クラッチの機構解説
というわけで機構説明なんだけど、CGとかで説明できると一番カッコ良いはず。でも、そんなスキルはないのだ。絵も描けないし。なんて話を、Cubyさんとしてたのね。
M&F Cuby
代表:影山さん
じゃあ、クラッチ貸してあげるよ。細かい部品無くさないでね。
まじすか、ありがとうございますだけど、借りたからにはがんばるしかない。
というわけで一個ずつ部品撮影して切り抜いて合成したよ!
ボルト類、Cリングなど一部省略してます。大変だったんだもの。
あとボルト穴の位置合わせとかも割と適当だけどごめんして。
現行スーパーカブは二段クラッチなので内部機構が違う。
ちなみに同じスーパーカブでも、JA07以降は二段クラッチシステムに変わって、より機構は単純に(でも部品点数は多め)になっております。ここに詳しく載ってるよ。
で、今回の主役は旧型。
というわけで、旧型スーパーカブ最大の特長ともいえる自動遠心クラッチ機構について掘り下げてみますよ。
まずは自動遠心クラッチの持つ役割というか機能。走り出す時ってこんな感じだと思うのね。
キックやセルでエンジン掛けたら、足でシフトペダルを踏んで一速に。
そしたら、アクセル開けると走り出す。
赤字の部分で自動遠心クラッチが働いてるのよ。3か所の赤字の部分で3つの異なる働きをしてるの。さらに箇条書きにするとこんな感じ。
- キック(セル)操作時にクラッチを繋ぐ
- シフトペダルを踏むとクラッチが切れる
- アクセルを開けるとシームレスにクラッチが繋がる
この3つの機能をもってるんですね、自動遠心クラッチは。
普通のバイクのクラッチは「クラッチレバーを握るとクラッチが切れる」だけ。
三倍の高機能ですよ。
各々の機能を解説していくぞ。
キック(セル)操作時にクラッチを繋ぐワケ
まずは、キック(セル)操作時にクラッチを強制的につなぐ機構。
クラッチセンター(左)に斜めに溝が切ってあって、それにかみ合うようにドライブギヤーアウター(右)にでっぱりがついてる。この形状の効果で一方向にだけ動くようになってるのね。
「ミッション側から入力があったときだけ、飛び出してクラッチを強制的につなぐ」って感じ。
飛び出すってどういうことよ、こういうことよ。
この写真の向きで言うと、奥に回るときはそのままだけど、手前に回転すると飛び出すって感じ。
この飛び出しでクラッチ繋いでるのね。あと、「ミッション側から」ってのがキモなのね。
キックやセルだけじゃなく、押し掛けができるのもこの機構のおかげ。
シフトペダルを踏むとクラッチが切れるワケ
さて、次が本命。クラッチ本体を見ると、おにぎり&鉄球みたいなパーツがついてるんですよ。正式にはクラッチボールリテーナーってやつね。
Lクランクケースカバーを外したことある人には、印象深いパーツなはず。と、いうのも組み上げるときに、うまくはまらないパーツ筆頭。
で、こいつがなにをしてるかというと、シフトペダルから繋がってるシフトアームの動きによって、クラッチボールリテーナーが広がってクラッチアウターを押してクラッチを切るのね
わかりにくいよね。
どう説明するか悩んでいたらやってくれましたよCubyさん。
M&F Cuby
代表:影山さん
動いてるところを見た方がわかりやすいし、カットモデル作りましょうか。
まじっすか! ありがとうございます、動画撮ります!
M&F Cuby
代表:影山さん
向かって左のシフトアームの操作によってクラッチリテーナーが動いて、結果クラッチアウターカバーが下方向に押される(クラッチが切れる)というとこに注目してください。
右手前のナベボルトの下に隙間が空くのがわかると思います。
動いてますな、下に。
シフトペダルを踏み込むとアームが動く
おにぎりがぐいっとずれて、鉄球もくぼみから飛び出して幅が広がる。
広がったせいでクラッチアウター全体が押される。
そうするとクラッチ板が離れちゃうので、クラッチが切れるって寸法。
で、踏み込んでたシフトペダルを戻すと、おにぎりが元の位置に戻ってクラッチつながるのね。
走行中でも停止中でも強制的にクラッチを切れるってのがキモな気がする。
シフトペダル操作で、クラッチが切れてシフトチェンジも行うってのはこうなってるわけ。
ふたつの作業をワンアクションで行うことができるのも、このおにぎり&鉄球のおかげ。
大事なのです。
アクセルを開けるとシームレスにクラッチが繋がるワケ
で、ギアが入りました。でもエンストしない。これ不思議よね。
要するにスクーターと似て非なるけど似てます。わかりにくいね。
そうそう、こんな説明サイトありました。さすがホンダさん。
アクセルを開けてギアを回すと、遠心力でウェイトが動いてクラッチが繋がるって案配。
逆にいえば、動いていないときは遠心力も弱いからクラッチが繋がってない。
スクーターの場合はさらにプーリーでギア比も変わるんだけど、スーパーカブにはそこは関係なし。
で、その遠心クラッチ機構を達成してるのが、この4枚の板みたいなやつ。これがウェイト。
回転上がってくるとこれが横に開く。そうすると下側にぐいっと飛び出すことになるのね。その飛び出し量がクラッチ板を押し付けて、クラッチがつながるわけ。
動きとしてはこんな感じ。
アップでも。
上の重い部分が遠心力で外にいくと、下の細い部分がさらに下にあるクラッチ板を押し付ける。
で、クラッチが繋がっていくのだ。
逆に、走ってる状態でアクセル戻して回転数下がるとクラッチ切れてくのね。
なので、止まるときには自然とクラッチ切れてるからエンストしない。
よくできてるね。
スーパーカブ50と90ではなにげにクラッチが違う
ちなみに今回使った自動遠心クラッチはスーパーカブ50のもの。遠心機構で稼働する板が4枚×4か所の合計16枚なのね。すぐ上でピコピコ動いてるやつ。
これがスーパーカブ70や90だと、7枚×4か所の合計28枚になるのです。
なので、50をボアアップしたら70とか90のクラッチ使えば強化クラッチになりそうじゃん。
そうなんだけど、純正の自動遠心クラッチは細かい部品ごとに購入になるから、相当割高。かつ組付けもしないといけなくなるのよね。
現実的には強化クラッチキット一択であります。わしもこれ。
とはいえ、中古の自動遠心クラッチが安く手に入るならそれをベースに補修かけてくのはアリですぞ。
まとめと次回予告
構造理解するまでに何度も吐きそうになったけど、まとめてみると割とあっさりね。
で、そもそもなんでこんな機構解説をしたのかっていうと、今度カブ特有の操作とかについて触れようかと思って。そのときにカブならではのクラッチ動作に悩まないようにっていう、いわば伏線ですよ。
スーパー・カブカブ・ダイアリーの過去記事・動画
若林浩志/プロフィール
愛知の地方カメラマン。1973年生まれ。撮影は、バイクと料理とブツ撮りが好き。
所有バイクは、ホンダ・スーパーカブ90とヤマハ・TDR250。平成終盤にキャンプに目覚め、ネットで用品を買いまくる毎日。
趣味はamazonレビュワーランキング上げ。最近はメルカリにハマっています。