で、バイクをスムーズに走らせることに一番詳しいのはだれだろう、そうだレーサーだ。
だからスーパーカブに特化したレーサーを探すのだ。
カブレースのスペシャリストが来てくれたぞ。
さて先生探し。世の中にはスーパーカブで走るロードレースが割と色々あってですね。「全日本カブ耐久&オープンスプリント」、「モンCUB耐久レース」、「CUB-CUP」など。
で、全日本カブ耐久のスプリントクラスや、モンCub耐久で優勝しまくってる「まえ坊」選手という方がいるんですよ。別件で何度か取材してるけど、とにかく速いし、しかもフォームがかっこ良いんですよね。前回押しがけしてくれたのも、この人。
で、そんな「まえ坊」選手に協力してもらいました、ありがとうございます。
まえ坊先生
レース経験は「スーパーカブでのレースのみ」という、筋金入りのカブレースのスペシャリスト。
「元々はレースとかは向いてないと思ったんですけど、スーパーカブで初めてコースを走ったらハマってしまいました。そこからカブでのレースを続けています」と言うが、今やカブレース界隈で名をとどろかせるトップライダー。
取材前日にも全日本カブ耐久のスプリントクラスで優勝してきたという強者だ。
で、どれくらいすごいかわかりやすい動画をyoutubeより。
この動画の11分あたりがやばい。エンジョイクラスとはいえ、スーパーカブでNSF100を抜いてトップでゴールしてる。
(なお、ラップタイムが速すぎてタイム加算が発生。リザルトとしては優勝してないというオチも)
で、会場は、愛知県新城市にある「しんしろカートコース」さんにご協力いただきました。
カブだけではなく気軽に安全にモータースポーツを楽しめるコースで、敷居が低くてサーキットを走ったことない人でも気軽に走行できるぞ。
取材協力:しんしろカートコース
初心者大歓迎のサーキット。ミニバイクだけじゃなく、中型大型バイクもOK。サーキットとはいえ敷居は非常に低いので、未経験者にもオススメ。レンタルカートもあり。
新東名高速道路「新城IC」および、東名高速道路「豊川IC」から車で約20分。
住所/愛知県新城市一鍬田字赤座ヶ入55
TEL/0536-29-4458
営業時間/9:00~16:30(冬季16:00)
定休日/木曜日
というわけで本記事での走行写真・動画はクローズドサーキットでレーサーが行っています。わかりやすくするために、動作なども大げさに行ってもらっています。
また、「まえ坊」選手の「まえ坊流ライディングテクニック」の紹介になります。その他のライディングテクニックを否定するものではありません。あくまでも参考意見とお考えください。
カブをスムーズに走らせるうえで重要なのは三点
先生は見つかったし場所も確保。さてなにを教えてもらおうか。
一番教えてほしいのは、スムーズな乗り方。できれば聞くだけで目から鱗が落ちる系のやつね。「速く走りたいならコースをめちゃめちゃ走りこむのだ!」とか、そういうスパルタ求めてないのよ。
で、色々話し合った結果、スーパーカブ特有のポイントとして以下の三点を。
・フォームについて/ハンドルに力をかけすぎない。
・ブレーキについて/エンブレ、リアブレーキを上手に使う
・シフトダウンについて/踏み込みによるクラッチ操作を意識してスムーズにつなぐ
再三になるけど、速く走るというよりは、スマートに走るために、無駄のないスムーズな操作のコツを聞く感じ。
まずはライディングフォーム
まえ坊選手(身長168cm)の乗車姿勢。シートの後端に座ることでリア荷重を確保している。
車両はプレスカブをベースにしたスーパーカブレーサー。レーサーとはいえノーマルクラス用の車両なので、おおまかにはノーマルとほぼ一緒。ただ、ステップは自作ステップでちょっとあげてある。
せっかくなのでアップステップについてもうちょっと。リトルカブ用のステップ&ペダルを流用することで、アップステップ化できるぞ。
まえ坊選手の車両では、バンク角を稼ぐためにさらにショート加工と曲げ加工を施し、ステップもオリジナルのショートステップにしてる。
自分の場合は、やや後ろ目に乗車姿勢をとっています。スーパーカブでは、特にフロントサスペンションのコントロールに注意がいるので、ハンドルを無理にこじったり、押さえつけたりしないように注意して下さい。
フロントに荷重をかけたいときは、上体を伏せたりリアブレーキやエンブレを利用することで効率よくフロントに荷重をかけることが出来ます。
体格の違いなどもあるので、単純にただ後ろ目に座るというよりは、自然な位置取りが大事っぽい。
あと、見てて思ったけど、ツーリングなどで荷物積むときにキャリア前方に少し隙間開けて積むと乗りやすさとかに違いが出そう。
フロントブレーキには、頼りすぎない
お次はブレーキング。スーパーカブのフロントブレーキって正直使いにくいですよね。レーサーだとなんとかなるのだろうか。
ブレーキというよりサスペンション構造の問題ですね。スーパーカブのボトムリンクサスだと、Fブレーキを掛けた時にどうしてもフロントがリフトしてしまいます。これは構造的な問題なので、やはりフロントブレーキの割合を減らす方向になります。
自分の場合はエンブレとRブレーキを主体にブレーキングをしています。Fブレーキは軽く合わせるくらいですね。
具体的には、コーナーの手前で早めにエンブレを使って、補助としてRブレーキ。Fブレーキは軽く姿勢制御というニュアンスです。
もしFブレーキを使うような場合でも、ほとんどの場合コーナリング開始前までにFブレーキをリリースしています。
するとFサスペンションは自然と沈み込み、コーナリングの姿勢になります。
テレスコピックフォークと違ってFブレーキをかけてもフロントが縮まないので、スーパーカブならではの部分ですね。
このリフトする動きのおかげで、普通のバイクのようにFブレーキを強くかけづらいのね。
で、せっかく目の前にレーサーがいるので、実際にフロントサスペンションの動きが見てみたい。
同じコーナーで「Fブレーキ主体でのブレーキング」と「エンブレ+RブレーキにFブレーキで軽く調整するブレーキング」をやってもらいました。
確かに突っ張ってる。エンブレとRブレーキ主体で十分に速く走れることは、まえ坊選手の戦績が物語ってるわけで。
それにしても、「早めにアクセル戻してエンブレ」って、いかにも安全重視な走りが、タイムを出す走りにつながるのは面白い。
公道の場合はサーキットより何が起こるかわかんないので、常に余裕を持って走るべきとも言えますね。
シフトダウンのショックを少なくしたい
最後はシフトダウン。スーパーカブってシフトダウンすると割と派手なことになりますよね。がちゃんぐおーん!みたいな。なのでシフトダウン時には、クラッチを切って回転を合わせることで、よりスムーズにシフトダウンできるぞ。
百聞は一見にしかずというわけで、ちょっと大げさ目にやっていただいております。
シフトダウンするときに、シフトペダルを少し長く踏んでアクセルで回転を合わせることでスマートにシフトダウンできます。
ただ、完璧に回転数を合わせてしまうとエンブレ効果も薄くなるので、軽く合わせる、という感じですね。
特にスーパーカブにはタコメーターがついていないので、そこまでシビアになることもないと思います。
ちなみに、シフトダウンするときって、「ステップに土踏まずをのせたままカカトでシフトダウン」と「ステップから足を外してつま先でシフトダウン」の2つのやり方がありますよね。ちなみに若林は後者。どっちが良いと思いますか?
自分も昔は足を外してました。ステップから足を外すと、どうしてもその瞬間に荷重が抜けてしまい、それがロスになることから、いまは足をのせたままカカトでシフトダウンしています。
とはいえ、一般公道ではそこまで攻めないですし、足首の柔らかさなどもあるので、自分に合ったやり方が一番だと思います。
イメージとしては、ちょっと長めにシフトを踏むって感じなのね。
てっきり、「踏み込み続けてその間にアクセルをあおる」ってイメージだったけど、もっと自然な感じ。逆にいえば、ちょっと落ち着いてシフトダウンするだけで結構変わってきそう。
今日のまとめと次回予告
速く走れるということは、やはりスムーズな操作を追求してるんですね。
今回の3点を意識すればもっと楽に走れる気がしてきましたよ。
ちなみに次回は、オフロード編を予定。とはいえ、別にオフロードレースを始めようってわけじゃないですぞ。ロングツーリングやキャンプ場に行くときとか、舗装してない道や急坂を登らなきゃいけない時ってありますよね。そんな時に、少し余裕を持て走れるように、コツを教えてもらおうかと。
次回はオフロード編。凄い人が教えてくれるぞ。
蛇足:熱中症にはお気を付けを。
取材時の気温は38度。めちゃめちゃ暑かった。
レーシングスーツで頑張っていただいたまえ坊さんには感謝しかない。
写真・文:若林浩志
スーパー・カブカブ・ダイアリーの過去記事・動画
若林浩志/プロフィール
愛知の地方カメラマン。1973年生まれ。撮影は、バイクと料理とブツ撮りが好き。
所有バイクは、ホンダ・スーパーカブ90とヤマハ・TDR250。平成終盤にキャンプに目覚め、ネットで用品を買いまくる毎日。
趣味はamazonレビュワーランキング上げ。最近はメルカリにハマっています。