CBR1000RR-Rが最も意識する相手はやはりパニガーレ?
今回、最新型スーパースポーツの比較試乗を行うにあたり、最大の注目点は、これまで誰でも乗れる平均点の高いバイク作りを信条としてきたホンダが、その方針を転換して製作したCBR1000RR‐Rがどれくらい凄いのか? ということに尽きると思う。
そもそも、ホンダにバイク作りの方向転換をさせた「張本人」こそ、ドゥカティが2年前にリリースしたパニガーレV4だと考えるのはあながち外れてはいないだろう。
しかも、市場投入からわずか2年で性能向上と商品アップの為にパニガーレV4はモデルチェンジ。これを受けて、後出しのホンダとしてはパニガーレV4を凌駕する性能をCBR1000RR‐Rに与えたに違いない。
というわけで、実際にストリートで2台を試乗した印象だけど、正直ストリートではどちらも「帯に短しタスキに長し」という印象だった。214PSを誇るパニガーレV4Sの1103ccV4エンジンは、デスモドロミック特有のピックアップの良さが魅力ではあるが、ストリートで多用する中途半端な回転域(5000回転以下)ではアクセルのオンオフに対して反応が良すぎてギクシャクしてしまう。
一方、218PSのCBR1000RR‐Rはエンジン回転が極めて滑らかで、アクセルのオンオフに対しても極めて従順。スキップするような回転力のV4エンジンが元気が有り余って仕方ない若者だとすると、抵抗無くスルスルと回るCBR1000RR‐Rの直4は、分別のある大人のような落着きと余裕が感じられた。
また、数値上パニガーレV4Sより車重が重いはずのCBRは驚くほど取り回しが軽く、実走行でも空を飛ぶような軽快感があるし、倒し込みや切り返しも軽く、鋭い。対するパニガーレV4Sは車重そのものは軽いが、エンジンとガソリンタンク周辺にマスが集中している印象で、取り回しは想像以上に重い。ただ、走り出せば重さは消えるし、前後タイヤでしっかり路面を捉えていることが感じられ、クイックシフターの作動もスムーズだ。
一方、直4エンジンが滑らかなCBRのスタンダードは、アクセル操作は気楽だが、クイックシフターがないのでギア操作が重く、前後サスペンションの動きも渋かった。電子制御サスを装備するSPはすべての操作系が軽く、気持ち良く走れるだけにその差は大きく感じられた。電子制御の完成度と安定性では、先行した分V4Sに分があるという感じか。
文:八代俊二/写真:赤松 孝、南 孝幸