語り:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川忍/モデル:大関さおり
ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」空力性能と車体設計
"曲がるマシン"を生み出すために磨き上げた、空力を味方にする高度な車体設計技術
「SC82のフレームはLPLを務めた石川(譲)さんが温めていたアイデアで、車体作りに空力を導入することは最初からコンセプトに入っていました。石川さんはご自身も「変態」と言っていましたけど(笑)、朝から晩までフレームのアイデアを考えているような方です。
剛性面で重要なステアリングヘッド部に大きなセンターダクトがあり、リア側上部には左右をつなげるメンバーがない…。そしてリアショックの上側支持部は、エンジンが担う。フレーム、エンジン、スイングアームそれぞれの剛性が絡むのでバランスさせるのが非常に複雑で、これをまとめあげるのはすごく大変なことです。でも上手く、曲がるマシンに仕上がったなと思います。
エアロダイナミスクの設計についても非常に高度かつ繊細なもので、カウル前面のセンターダクト周囲の形状のアールが変わってしまうだけで、性能が出なくなってしまうそうです。また側面のウイングは、ウイング端とダクトの内側はくっ付いていないのですけど、この数mmの隙間こそが非常に大事なんだそうです。
装着されるフロントフォークはSPがオーリンズの電サスで、スタンダードはショーワ製ですが、どちらのフォークでもハンドリング特性が変わることはないです。この事実は、それだけ車体がちゃんと仕上がっているということの証ですね」
ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」電子制御システム
電子制御の技術が可能にした、公道で楽しめるCBR1000RR-Rの218馬力!
「キャブレター車の時代と違って、今は電子制御で出力もコントロールできるようになった。そう言うことも含めて、218馬力を使える公道車が作れるようになったと思います。電スロ、トラコン、そしてウィリー制御などが備わっているので、ここまで乗りやすいバイクにSC82は仕上がりました。もし電子制御がなかったら、ですか? 点火時期とかのマッピングを工夫すればある程度速くて扱えるバイクにはなると思いますけど、初心者の人でも乗れるバイクにはならないですね。昔のマシンがそうだったみたいに…。
公道ではエンジン出力レベルは最強のP1ではなく、P2かP3でもいいかなという感じです。普通のサスならばイニシャルや油面とかで調整するところを、SPの電サスは減衰だけでコントロールしているのですが、SPの電サスはプロライダーが攻めて乗っても不満を感じないレベルでセッティングされています。本当に、何もいじらなくて良いですよ」
ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」ライディングポジション・足つき性
シート高:830mm
ライダーの身長:179cm・パッセンジャーの身長:173cm
「SC82は戦闘的なサーキット向けのライディングポジションになっていますが、スーパースポーツの中では結構リアが低くく、比較的足着きも良いので取っ付きやすいモデルだと思います」と伊藤さんは解説。
SPながらタンデムも可能だが、パッセンジャーの大関さおりさんは「ボトムスがジーンズだと、加減速でお尻が滑って怖いですね。足の曲がりもキツいですが、膝で伊藤さんをニーグリップしてました(笑)」とコメント。やはり積極的に、タンデムライディングを楽しむモデルではないですね。
ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」主なスペックと価格
全長×全幅×全高 | 2100×745×11040mm |
ホイールベース | 1455mm |
最低地上高 | 115mm |
シート高 | 830mm |
車両重量 | 201kg |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 |
総排気量 | 999cc |
ボア×ストローク | 81.0×48.5mm |
圧縮比 | 13.2 |
最高出力 | 160kW(218PS)/14500rpm |
最大トルク | 113N・m(11.5kgf・m)/12500rpm |
燃料タンク容量 | 16L |
変速機形式 | 6速リターン |
キャスター角 | 24゜ |
トレール量 | 102mm |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70ZR17M/C(58W)・200/55ZR17M/C(78W) |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 278万3000円(税込) |
語り:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川忍/モデル:大関さおり