ホンダ「レブル500」試乗インプレ・車両解説(中村浩史)
エンジンの大きさ以外ほぼ変わらない兄弟モデル
大人気のレブル250には、お兄ちゃんがいる。それが471ccバージョンの「レブル500」。レブル250がシングルエンジンを搭載しているのに対し、レブル500はツイン。車体を共通としてエンジンマウントとマフラー系を専用設定したパッケージだ。
シングルとツイン、しかも排気量が倍ほども違うというのに、レブル250と500はよく似ている。もちろん、見た目はほぼ同じ、フレームに収まるシリンダーの大きさが、ひと目でハッキリわかるほど違うくらいなんだけれど、乗り味が驚くほど似ているのだ。
実際、2台を並べて見比べてみても、詳しい人でなければ250か500かの判別はつきづらいだろう。500の方が、エンジンが威張っている、と覚えていればいいかもしれない。
もちろんエンジンパワーは大違い。トルクだって500の方が大きいに決まっているから、爆発の1発ずつの力は違うんだけれど、パワーの出方、回転のフィーリングが驚くほど似ている。
これは500の水冷ツインを250的に、250の水冷シングルを500的に作り込んでるからなのだろう。どちらもパルス感が味わえるシャープな特性で、500の方が力強い──そんな違い。アクセルを早く大きく開けなければ、250と500の違いが一瞬わからなくなる、といったら言い過ぎだろうか。
ハンドリングもよく似たフィーリング。500の方が車重が約20㎏重い分、動きが落ち着いている印象。250同様、シャープな動きはしないけれど、車重がある分、特にフロントの動きが上質だと感じることもある。
だから、500は250よりも旅が気持ちいい。もともと、高速クルージングも気持ちいい250だけれど、500のトルクとパワーの余裕が、クルージングをさらに快適にしてくれるのだ。
休日、コーヒー飲みに片道2時間のツーリング
お気に入りのカフェに出かけよう、と思った。東京新橋の編集部から三浦半島の南端まで、一般道と高速道路を乗り継いで約80km。のんびり走って1時間半ほどの、お気に入りのツーリングコース。
ちょうど梅雨明け宣言が出されたばかりで、海沿いのカフェからはきれいな太平洋と入道雲が見られるだろうなぁ。
日曜の朝、編集部からまず、都内の渋滞を抜けて……って、この時期の日曜朝は、そう渋滞もしていない。
日頃の混雑が嘘のようにガラガラな都内を流すと、レブル500が気持ちよさそうに空気を切っていく。けれど、街中を流すには250の方がいいな。500は力がありすぎて、ついつい気持ちのいい回転域を探しちゃって、結果いつの間にかオーバースピードになりかねない。
250で街中を40~50km/hで流す気持ちよさを知ってしまってからは、回転を上げずにのんびり走るクセがついちゃったのかもしれない。
編集部から東京タワーを横目に、下道をつないでお台場まで流してみる。夏が来たばかりの海沿いの道は、まだ気温も上がり切っていない時間帯に、なんともいえない湿気と空気の暖かさを味わせてくれる。そうそう、ツーリングの出発って、いつもこんな匂いだ。
高速道路に乗り込むと、街乗りが楽しいレブルがもうひとつの顔をのぞかせる。それは高速クルージングの快だ。タコメーターがついていないから正確には判断できないけれど、5000回転くらいで流すと、ちょうど車速が100km/hあたり。このくらいの回転域が、レブルは本当に気持ちいい。
振動はあるけれど、それは鼓動と呼びたくなる不快ではないもので、風の抵抗を受けながら進む気持ちよさ。この回転フィーリングと、一発一発の爆発を感じ取れるようなパルス感は、まるでVツインだ。アフリカツインにも感じたことだけれど、並列ツインとVツインなんて、もはやセッティングだけで味付けを変えてしまえるのだろう。
トップ6速で100km/h+αでクルージング。視界が開けて加速する時にはアクセルを大きくオープン。この時のエンジンの鼓動感が本当に気持ちいい。走行風の抵抗なんて、こんなスピード域ではなんてことない。高速クルージングは、250だってまったく不満はないけれど、やっぱり500は同じスピードで流していても余裕がある。250ならばトトト、500ならばドドド、だ。
目的地より少し手前で高速を降りて、横須賀あたりをぶらーっと流してみる。トンネル抜けて、海を見ながらどぶ板通りを右手にまっすぐ走ると、自然と鼻歌はクレイジーケンバンドの『タイガー&ドラゴン』だ。そのままどんつきの三笠公園へ。
海岸沿いを走りながら観音崎公園をぐるっと回って、家族連れがちらほら出始めた海水浴場を横目に、それでもスピードはゆーっくり。出発した頃には、やっぱり下道は250がいいなぁ、なんて思っていたけれど、何のことはないギアをひとつ高めに流せば、250と変わらないのんびり感で走ることができるじゃないか。高速道路で感じた250ccの500cc感と、下道で味わった500ccの250cc感──すごいエンジンだな、。このレブル兄弟は。
観音崎公園から浦賀駅前の直角左コーナーへ、まだまだ海沿いにのんびり流すと、ペリー公園を右手に、千葉は浜金谷と結ぶ久里浜港。ここを抜けたら、お気に入りのカフェはすぐそこ。
「おう、ええの乗ってんな」
出迎えてくれたのは、お気に入りのカフェ「PILOTAモト」の店主。そう、お気に入りって言うのは、月刊オートバイで「キャンプやろうぜ」企画を連載してもらっている、辻本聡さんのカフェ。
朝早くに東京を出て、寄り道しながらカフェのオープン時間を目指して100km弱。レブル500は、こんな乗り方が最高に気持ちいい。荷物を満載してのロングツーリングもいいし、街中をサッと30分だけ流すのも気持ちいいけれど、コーヒー飲みに2時間走る──レブルは、そんな贅沢な時間をくれるのだ。
文:中村浩史/写真:島村栄二
ホンダ「レブル500」主なスペック・価格
全長×全幅×全高 | 2205×820×1090mm |
ホイールベース | 1490mm |
最低地上高 | 135mm |
シート高 | 690mm |
車両重量 | 190kg |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 |
総排気量 | 471cc |
ボア×ストローク | 67.0×66.8mm |
圧縮比 | 10.7 |
最高出力 | 34kW(46PS)/8500rpm |
最大トルク | 43N・m(4.4kgf・m)/6500rpm |
燃料タンク容量 | 11L |
変速機形式 | 6速リターン |
キャスター角 | 28゜ |
トレール量 | 110mm |
タイヤサイズ(前・後) | 130/90-16M/C 67H・150/80-16M/C 71H |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 79万9700円(消費税10%込) |