画像: タイヤにはライトワーク(=ちゃんと機能する)の温度レンジってものがあるんです だいたい15℃を下回ると現在のミシュランは機能しない、てことで時間帯がディレイされました 安全策、賛成!

タイヤにはライトワーク(=ちゃんと機能する)の温度レンジってものがあるんです だいたい15℃を下回ると現在のミシュランは機能しない、てことで時間帯がディレイされました 安全策、賛成!

フランス→アラゴン01→アラゴン02と続くMotoGP3連戦の2戦目。アラゴンGPはいつもの9月中旬開催から1カ月遅れの開催となって、ウィーク初日午前の気温は11℃、2日目午前は10℃! 風も強かったようで、この低温じゃMotoGPのコントロールタイヤであるミシュランが性能保証できない、っていうから、各セッションの開始時刻を1時間遅らせて対応。それで決勝日は少し気温も上がって、日曜朝のMoto3開始時刻には17℃、MotoGP開始時刻は20℃を越えたようです。
リンス初優勝!ミルはランキングトップへ!

アラゴンは、メインクラスであるMotoGPクラスに燃えた! 

画像: これは2周目の1コーナーかな 12ビニャーレスが2番手以下をぐんぐん引き離します

これは2周目の1コーナーかな 12ビニャーレスが2番手以下をぐんぐん引き離します

ホールショットはフランコ・モルビデリ(ペトロナスヤマハ)。けれどファビオ・クアルタラロ(ペトロナスヤマハ)との1コーナーへの根性ブレーキング合戦でややラインを外したスキをついて、マーベリック・ビニャーレス(モンスターヤマハ)がトップに浮上。つまりトップから3台、ヤマハYZR-M1です。
ヤマハは、初日フリーから絶好調で、ビニャーレス→クアルタラロ→モルビデリの順でトップ3を独占。公式予選でも、クアルタラロがポールポジション、ビニャーレスが2番手、モルビデリが2列目4番手と、あわやフロントロー独占の勢いでしたからね。
ただし、FP3ではクアルタラロがマシンから投げ出される大転倒。「メディカルセンターからポールポジション直行!」と公式サイトでもニュースにされていましたね。歩く姿も、路面に打ち付けた左側のお尻が痛そうだったし!

画像: ペトロナススプリンタの2台を抜き去って2番手に上昇する42リンス 後方には36ミルが見えます

ペトロナススプリンタの2台を抜き去って2番手に上昇する42リンス 後方には36ミルが見えます

スタート直後は、ヤマハ3台の後ろにロケットスタートを見せて4列目から4番手あたりまで浮上したアレックス・リンス(スズキECSTAR)、ジャック・ミラー(プラマックドゥカティ)、ジョアン・ミル(エクスタースズキ)がつけます。ここからするするっとポジションを上げたのがリンスでした。
リンスは3周目にミラーを、6周目にモルビデリをかわし、その翌周にはクアルタラロもパス! そこから2周をかけてビニャーレスもパスしてトップに浮上します! リンス、4列目10番グリッドからのスタートだったんですけどね、アッという間にトップまで追い上げて、ホントこの人の追い上げ力ってすごい!

画像: 30タカをパスした73マルケス マシンもツナギも、走りがもうほとんど兄でした

30タカをパスした73マルケス マシンもツナギも、走りがもうほとんど兄でした

さらにリンスの後方には、リンスに後れを取るまじ、とチームメイトのミルもポジションをアップし、8周目にクアルタラロとモルビデリふたりをいっぺんにひとつのコーナーでパッシング! あのシーンはスゴかった! そして13周目にはビニャーレスをもかわして2番手に浮上しました!
これで順位はスズキの1-2! うわわ、スズキの1-2なんていつ以来だ? ケニー&セテ期? またはシュワンツ&バロス期?と記録を調べようとしたんですが、ここで後方からリンスよりもミルよりも速いペースで順位を上げていたのがアレックス・マルケス(レプソルホンダ)!

マルケスは前戦フランスGPで2位表彰台に立ったものの「あれは雨だからねぇ」なんて言われてたんですが、このドライのアラゴンでもどんどんペースアップ! 4列目11番グリッドからのスタートで、2周目には8番手、3周目にはホンダ勢トップの座レギュラーとなった、われらが中上貴晶(LCRホンダIDEMITSU)、5周目にはミラーまでパスして6番手に浮上! マルケス、フランスGPの前までは最高位7位で『期待外れ』の烙印を押されていたようなものでしたが、このご時世、こういう烙印も廃止ですね、完全に覚醒したように見えました。

画像: リンスの背後にここまで迫ったマルケス 1回小さめのハイサイドがありましたが、あれがなかったら…

リンスの背後にここまで迫ったマルケス 1回小さめのハイサイドがありましたが、あれがなかったら…

クアルタラロ、モルビデリのペトロナス勢をかわしたマルケスは、そのまま14周目にビニャーレス、18周目にはミルまでかわして、世界中のスズキファンの「GSX-RR1-2フィニッシュ」の夢を打ち砕いた挙句、リンスに背後まで接近! しかしリンスまでは届かず、今シーズン初優勝を達成したリンスの0秒263後にフィニッシュ! 自己最高タイの2位をドライレースで記録してアラゴンGPを終えました。

画像: フィニッシュの瞬間、ふたりともアレックスw ガッツポーズも似てるのはふたりともスペイン人だから??

フィニッシュの瞬間、ふたりともアレックスw ガッツポーズも似てるのはふたりともスペイン人だから??

そしてリンスは、チェッカーを受けた後のクールダウンラップで、なんとガス欠! これ、エンジニアにとっては最高のガス欠です! 決勝を走り切った直後にガス欠なんて、決勝レースですべてのガソリンを無駄なく使い切った、ってことですからね。あと半周でもガス欠症状が早く出ていたら、この歓喜の初優勝はなかったわけですからね。

画像: 予選7番手からしぶとくポジションを上げたタカ 次の「同コース2回目」は大チャンス!

予選7番手からしぶとくポジションを上げたタカ 次の「同コース2回目」は大チャンス!

画像: インディペンデントチームNo1を獲得したタカ インディペンデントライダーランキングではクアルタラロに次ぐ2位です 3位はモルビデリ、4位はミラー!

インディペンデントチームNo1を獲得したタカ インディペンデントライダーランキングではクアルタラロに次ぐ2位です 3位はモルビデリ、4位はミラー!

でも実は、マルケスの後ろでは、今度はタカ中上も光った走りを見せていて、ミラー、クアルタラロをかわして6位に浮上すると、最終ラップでモルビデリまで抜き去って5位でフィニッシュ! インディペンデント(注:ワークスチームじゃない、って意味です)ライダー最上位でアラゴン01を終えました。
「インディペンデントトップは嬉しいですね。タイヤのマネジメントが難しかったレースでしたが、ベストを尽くしました。ここアラゴンで来週もレースがあるので、今度は表彰台争いができるようにがんばります!アレックスはいいパフォーマンスでしたね、おめでとう」とタカ中上。コツコツ型のタカは、同じコースでの2戦連続に強さを発揮しますから、来週のアラゴン02にも大注目したいですね。

画像: 予選がよくても決勝は…とか、前戦良かったのに今回は…が多いヤマハ 原因究明は終わってるんでしょうか

予選がよくても決勝は…とか、前戦良かったのに今回は…が多いヤマハ 原因究明は終わってるんでしょうか

結局、フランスGPを終えてランキングトップにいたクアルタラロは、やっぱり体が本調子じゃないのか18位まで沈み、これでついにミルがランキングトップに浮上! ヤマハは本当に、良かったり悪かったりの波が激しいですね。安定性がないというか、ヤマハが言うGPマシンの強さ「ロバストネス」(=環境の変化に対応できて、いつも安定した性能を出せること、的な意味)がない。今回もフリー走行から予選は最高によくて、決勝がダメでしたもの。

画像: カタルニアに続いて2度目のダブル表彰台! まん中はレースグループの川崎さん^^

カタルニアに続いて2度目のダブル表彰台! まん中はレースグループの川崎さん^^

対して2度目のダブル表彰台を達成したチームスズキエクスターは、なんとチームランキングでもトップに立ってしまいました! スズキがチームランキング首位に立つなんて……トップライダーがひとり、というパターンが多かったスズキにとっても、歴史的な出来事ですね。パドックでは「今年のベストマシンはスズキGSX-RR」という声も出ているようです。

ミルの6ポイント差にクアルタラロが、さらに6ポイント差でビニャーレス、その3ポイント後方にドビツィオーゾがつけ、その14ポイント差のランキング5位になんとタカがつけています! 表彰台に上がってはいないけれど、これでタカはただひとり「全戦ポイント獲得、しかもトップ10以内」記録をキープしているから! 自己最高位4位を早く更新して表彰台に上がったら、もっとランキングに日本じゅうがザワザワし始めると思います。

MotoGP正式結果
1 アレックス・リンス     TeamスズキECSTAR
2 アレックス・マルケス    レプソルホンダ
3 ジョアン・ミル       TeamスズキECSTAR
4 マーベリック・ビニャーレス モンスターヤマハ
5 中上貴晶          LCRホンダIDEMITSU
6 フランコ・モルビデリ    ペトロナスヤマハ

Moto3 小椋はなぞのスランプトンネル

画像: グループトップを走るシーンも少なくなった79小椋 しかしここからペースが上がらず…

グループトップを走るシーンも少なくなった79小椋 しかしここからペースが上がらず…

第8戦ミザノ02での3位表彰台を最後に、カタルニア11位→フランス9位と調子を崩している小椋藍(チームHondaアジア)。カタルニアGP終了後には、チャンピオン争いのライバル、アルバート・アレナス(アスパーMoto3)のミスにも助けられてランキングトップに躍り出たものの、ここでポイントを引き離すチャンス!というフランスGPで9位に終わってしまいました。
しかしここアラゴンは、デビューシーズンの2019年に初表彰台を獲得し、小椋も好きなサーキット。公式予選では8番手につけ、カタルニア→フランスの予選24番手→17番手からジャンプアップ! 小椋は予選グリッドの悪さがウィークポイントで、今シーズンはそれが改善されてきた感じがしていたんですが、この2戦はまた悪いクセが戻ってきた……それを修正できたかに見えました。
小椋ともうひとり、期待の日本人ライダー・鈴木竜生(SIC58スクアドラコルセ)は2列目5番手グリッドを獲得。2列目っていうのは、グランプリで「まずまずのスタート位置」を意味しています。

画像: まだ左手首骨折のケガも癒えない24「スピードスター」鈴木、徐々に復活です

まだ左手首骨折のケガも癒えない24「スピードスター」鈴木、徐々に復活です

決勝レース。予選3列目8番手からのスタートで、小椋はまずまずのポジションでレースをスタート。一方の鈴木は3番手あたりからレースをはじめ、オープニングラップのうちに2番手に浮上、小椋は8番手あたり、またレース後半に追い上げる作戦かな、と思っていました。
確実にトップ集団にいる鈴木に対し、小椋はセカンドグループの集団に飲み込まれ、ペースが上がりません。レースが折り返しを迎える頃に鈴木は徐々に遅れ始め、一列になったセカンドグループの後方につけることになります。
さぁ小椋の巻き返しタイム!と見ていたこのタイミングで、なんと小椋もずるずると後退してしまいます。一時はポイント圏ぎりぎりを走りながら、なんとか終盤に巻き返して14位フィニッシュ! タイヤチョイスをミスし、選んだリアタイヤが機能しなかったんだそうです。

アレナスも7位に終わったことで、ポイント差もさほど広がらなかったのが幸いでしたが、小椋は依然ランキング2位をキープして、トップまでのポイント差は13ポイント! まだまだいけるいける! ランキングトップのアレナスと3位セレスティーノ・ビエッティがKTMユーザーですから、小椋はホンダ勢トップ! ホンダの期待も小椋にかかってきていますね。

画像: ここへきて少しずつ調子が上がって来た鳥羽は、チーム移籍で2021年もMoto3参戦が決定

ここへきて少しずつ調子が上がって来た鳥羽は、チーム移籍で2021年もMoto3参戦が決定

Moto3正式結果
1 ハウメ・マシア      レオパードHONDA
2 ダリン・ビンダー     グリーンパワーKTM
3 ラウル・フェルナンデス  レッドブルKTM-AJO
4 ロマノ・フェナティ    MAXレーシングハスクバーナ
8 鈴木竜生         SIC58スクアドラHONDA
11 鳥羽海渡         レッドブルKTM-AJO
13 佐々木歩夢        レッドブルKTM-TECH3
14 小椋 藍         ホンダTeamアジア

Moto2は長島が復調の気配??

画像: スタート直後、モノスゴい大渋滞のなか、ミシュラン看板の「L」の下あたりにテツが見えます

スタート直後、モノスゴい大渋滞のなか、ミシュラン看板の「L」の下あたりにテツが見えます

開幕戦優勝という華々しいスタートを切った、日本人唯一のMoto2ライダー長島哲太(レッドブルKTM-AJO)ですが、第6戦オーストリア02の4位フィニッシュを最後に転倒やポイント圏外が続いている、これもスランプの真っ最中! もともとの実力がない選手の不調をスランプとは言いませんから、長島の不調は、これもちろんスランプでしょう。
その長島は、FP1からFP3まで20/15/24番手と、あれれ今回も……と思わせておいて、Q1で2番手とQ2に勝ち上がり、14番グリッドを獲得。ポジションが安定しないのも調子がよくない証拠ですね。

画像: 徐々に調子も上がって来たテツ シーズン終盤にまた輝きを取り戻せるか!

徐々に調子も上がって来たテツ シーズン終盤にまた輝きを取り戻せるか!

画像: 上位に上がってくるとやらかすロウズが絶好調!今シーズン、誰もなしえていない4連続表彰台、2連勝でランキング2位まで上がってきました! これはひょっとして!

上位に上がってくるとやらかすロウズが絶好調!今シーズン、誰もなしえていない4連続表彰台、2連勝でランキング2位まで上がってきました! これはひょっとして!

決勝レースでは、レース前半こそポイント圏内あたりでバトルをしていたようですが、後半に入るとまわりのライダーよりもタイム落ちが少ないのか、ポジションもアップ。この、後半から終盤にかけてタイム落ちが少ないのがテツの持ち味ですからね。単独というより、バトルしてポジションを上げてきた今回、ちょっと復調の気配だといいんだけど!
これでテツのランキングはチームメイトのホルヘ・マルティンに次ぐ6位。7位ジョー・ロバーツ(アメリカンレーシング)、8位レミー・ガードナー(ONEXOXストップ&ゴー)、9位トーマス・ルティ(LiquiMolyインタクトGP)といった日本でもおなじみの面々に追っかけられてます。引き離せー、テツー!

Moto2正式結果
1 サム・ロウズ        マークVDS
2 エネア・バスティアニーニ  イタルトランスレーシング
3 ホルヘ・マルティン     レッドブルKTM-AJO
4 ジェイク・ディクソン    ペトロナススプリンタ
5 レミー・ガードナー     ONEXOXストップ&ゴー
9 長島哲太          レッドブルKTM-AJO

アラゴンも2戦連続

またも2連戦で行なわれるアラゴンGPですが、今度はグランプリ名が「Teruel」(=テルエル)。これはスペイン・アラゴン州の都市名で、ちょうど2000年頃、日本でもグランプリが2回あって、それぞれ「日本GP」と「パシフィックGP」って名前を分けられていたのと同じですね。そのテルエルGPを終えると、2週間のインターバルを置いて最後の3連戦=バレンシアGP×2→ポルティマオで2020シーズンが終わります。うわ、なんだかんだ、やっぱり終わるの早い!

写真/MICHELIN motogp.com 文責/中村浩史

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