1980年が明けたばかりの頃、一枚のスケッチがスズキ本社に届けられた。それまで世界中で誰も見たことがないオートバイらしからぬデザインのそれはED2=ヨーロッパ・デザイン2号機と呼ばれた。GSX1100S カタナが地平線の向こうで光を放ち始める。

スズキ「GSX1100S KATANA」の主なスペック

画像1: スズキ「GSX1100S KATANA」歴史解説&車両紹介|オートバイのデザインの歴史を変えた革命児
画像2: スズキ「GSX1100S KATANA」歴史解説&車両紹介|オートバイのデザインの歴史を変えた革命児

●エンジン形式:空冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ
●内径×行程(総排気量):72.0×66.0mm(1075cc)
●最高出力:111PS/8500rpm
●最大トルク:9.8kg-m/6500rpm
●ミッション:5 速リターン
●ブレーキ形式前・後:ダブルディスク・ディスク
●全長×全幅×全高:2260×715×1205mm
●タイヤ前・後:3.50-19・4.50-17
●燃料タンク容量:22L
●ホイールベース:1520mm
●乾燥重量:232kg
●輸出車

画像1: スズキ「GSX1100S KATANA」の主なスペック

1981年に初期型SZが市販開始。カウルからタンク、サイドカバーに至るデザインも斬新だが、美しいシルバー塗装のエンジンや滑らかなパイプフレームの仕上がりも見事だ。仕向地には欧州各国をはじめ、北米、オーストラリア、南アフリカ、シンガポールなど多くの仕様があった

画像2: スズキ「GSX1100S KATANA」の主なスペック

スズキ「GSX1100S KATANA」各部装備・ディテール解説

20 年に渡って現役として愛される。こんなオートバイ、「カタナ」をおいて他にはない。

わずか半年あまりでターゲットデザインはプロトタイプを完成させ、1980年夏の西ドイツ・ケルンショーに姿を現したカタナ。それまで見たこともない斬新でシャープなデザインと、「KATANA」、すなわち抜き身の日本刀をイメージしたダイレクトなネーミング、シルバーのカラーリングで世界に衝撃を与える。

GSX1100Eのエンジンを流用した空冷4バルブ4気筒はカタナ専用にクランクやバルブ周りをモディファイ。

ショー会場の人だかりを見て急遽アンケートを作成し、来場者に5段階評価を付けてもらったところ、「結果は5か1のどちらしかない。つまり、『非常に悪い』を除けば、『非常に良い』しか残らない。こりゃいいぞと。発売はこれで決まったようなものでした」(前述・横内さん)。

画像: フロントカウルは整風性とスタイリングを両立したもので、小ぶりながらスクリーンの防風性は意外に高い。

フロントカウルは整風性とスタイリングを両立したもので、小ぶりながらスクリーンの防風性は意外に高い。

誰もがショーモデルとしか思わなかったGSX1100Sカタナだったが、翌1981年秋にマフラーを2本出しとし、小ぶりなスクリーンを追加するなど、機能面で若干の手直しを加えただけで市販を開始。再び世界を驚かせる。

画像: 初期試作時にはビモータ製の4in1集合マフラーを装着していたが、市販時には4in2の2本出しとなった。

初期試作時にはビモータ製の4in1集合マフラーを装着していたが、市販時には4in2の2本出しとなった。

画像: タンクは容量22L(国内仕様は19L)。タンクキャップはオフセットされ、キーで取り外しして給油する。

タンクは容量22L(国内仕様は19L)。タンクキャップはオフセットされ、キーで取り外しして給油する。

それまでの日本車といえば、今で言うネイキッドスタイルかせいぜいビキニカウルが装着されている程度で、ここまで斬新で過激なスタイルを持った市販車が、日本のメーカーから発売されるとは到底考えられなかったのだ。

かくしてカタナはスズキの新しいフラッグシップモデルとして、世界中のライダーから高い評価を獲得するに至り、一大カタナ旋風を巻き起こしたのだった。

画像: スピードとタコを一体ケースに収納。ゼロ指針位置が平行に異なり、回転の上昇とともに独特の動きを見せる。

スピードとタコを一体ケースに収納。ゼロ指針位置が平行に異なり、回転の上昇とともに独特の動きを見せる。

1983年にはSD型となり、1980年前後のスズキ車の象徴でもあった星型キャストホイールをオーソドックスなデザインの6本スポークに変更。カラーリングはブルー×シルバー、レッド×シルバーのツートーン2色とし、エンジンとフロントフォークボトムケース、リアクッションスプリングもブラック仕上げとなった。

画像: ショック下部のレバーを引き上げてプリロードを調整する。リアブレーキはフロントと同径の対向2ピストン。

ショック下部のレバーを引き上げてプリロードを調整する。リアブレーキはフロントと同径の対向2ピストン。

画像: ブレーキはΦ275mmのピストンキャリパーで、フロントフォークにはアンチダイブ機構が装着される。

ブレーキはΦ275mmのピストンキャリパーで、フロントフォークにはアンチダイブ機構が装着される。

特徴的なバックスキン調のシート表皮は「汚れやすい」との声を受けて一般的なビニールレザーに変更。ハンドル外端部の形状も見直される。

画像: ライダー位置がえぐりこまれた、段差の小さいロングシート。初期モデルはバックスキン調表皮が使用された。

ライダー位置がえぐりこまれた、段差の小さいロングシート。初期モデルはバックスキン調表皮が使用された。

1984年のSE型ではカラーリングを変更。この頃から円高によってカタナの相場価格が日本では大きく下がり、正規販売店が逆輸入車の取り扱いを積極的に始めたこともあって逆輸入台数が増加。

1987年型を最後にスズキはカタナの生産ラインを撤収するが、カタナ人気が再燃。スズキ創業70周年記念モデルとしてカタナを再生産。当初は1000台限定であったが、継続して生産され、1991年にはレッド×シルバーも追加された。

画像: スズキ「GSX1100S KATANA」各部装備・ディテール解説

1994年には95馬力の正規国内仕様が発売され、2000年にはファイナルエディションが1100台限定で登場。大好評のうちに、即刻、完売となった。

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