RZ250が日本のスポーツバイクの歴史を変えたあと、対抗するかのようにスズキが市販を開始したRG250Γはハッキリと、それ以降の日本のバイク史をある方向へ導き始めた。レーサーレプリカ——それは日本に一大ブームを巻きおこしたバイク界の「劇薬」だった。

スズキ「RG250Γ」主なスペックと発売当時の価格

画像1: スズキ「RG250Γ」歴史解説&車両紹介|レーシングマシンのままの市販車が栄光の車名を引っ提げて登場【伝説の250ccガンマ】
画像2: スズキ「RG250Γ」歴史解説&車両紹介|レーシングマシンのままの市販車が栄光の車名を引っ提げて登場【伝説の250ccガンマ】

●エンジン形式:水冷2スト・パワーリードバルブ並列2気筒
●内径×行程(総排気量):54.0×54.0mm(247cc)
●最高出力:45PS/8500rpm
●最大トルク:3.8kg-m/8000rpm
●ミッション:6速リターン
●ブレーキ形式前・後:ダブルディスク・ディスク
●全長×全幅×全高:2050×685×1195mm
●タイヤ前・後:100/90-16・100/90-18
●燃料タンク容量:17L
●ホイールベース:1385mm
●乾燥重量:131kg
●発売当時価格:46万円

そのコンセプトと装備はまさに「レーサーレプリカ」

1983年3月に登場したRG250Γには、すでに当時のロードレースで実用化していたアルミフレームや前輪16インチホイール、フルカウル、そして市販車で初めてミシュランタイヤを純正採用するという過激な装備を次々と投入。RZやVTから一足飛びに「レーサーレプリカ」という名前に相応しい市販車を完成させたのだった。

「ユーザーが本当に望むものを作る、それが3年計画で決めたスズキのコンセプトだった。ユーザーが望むものといえば、それはレーシングマシンでしょう。レーシングマシンは、見ることはあっても触ることが難しく、乗ることなんてできるわけがない。それがレーシングマシンそっくりの市販車、RG250Γを作ろう、という話につながっていったんです」と、当時のスズキの開発グループを束ねていた、横内悦夫さんの話を聞いたことがある。

筆者は当時17歳の高校生だったが、それまで憧れだったRZがかすむくらいの目新しさ、斬新さ、そして一気に未来がやってきた感があって、ゾクゾクしたものだった。レーシングマシンがお金さえ出せば買うことができて、そのまま公道を走れるという事実は、高校生にすら身震いを覚えさせたものだっただけに、ライバルメーカーには、さぞインパクトある出来事だったことは想像に難くない。

1982年の世界グランプリ500ccクラスを制したフランコ・ウンチーニがカタログや雑誌広告に登場し、スズキワークスカラーと言える白×青に彩られたRG250Γは、その過激な装備が受け、大人気を博す。その性能も250ccクラスのトップを行くもので、ライバルを蹴散らしてベストセラーの座を奪取。しかしこのことが、RG250Γ以降の日本のバイク史を大きく変えてしまう。

RG250Γはユーザーからしてみれば待望の一台だった。しかし、ライバルメーカーにしてみれば「とうとうここまで…」という、掟破りの一台だったのかもしれない。言ってみれば、それぞれのメーカーが自ら引いていたはずの、ロードレーサーと市販車との境界線を大きく踏み越え、「そこまでやるか!?」という仕上がりだったからである。

そのひとつが価格。RZ250が35万4000円、VT250Fが39万9000円だったのに対し、RG250Γが46万円。車検がないことをはじめ、維持費が安いという250ccクラスのモデルの価格を、一気に引き上げてしまったのだ。

デビュー直後にRZ&MVX と対決!

月刊オートバイ1983年5月号では発売直後のRG250Γを富士スピードウェイに持ち込み、ヤマハRZ250R、ホンダMVX250F の2ストライバル勢と最高速&ゼロヨンを実測するガチンコ対決。最高速はRG250 Γ:176.47 km/h、RZ250R:174.76 km/h、MVX250F:173.08km/h とガンマがトップとなる数値を記録。ゼロヨンではRG250Γ:14秒05、RZ250R:13秒99、MVX250F:14秒14 と僅差でRZ-Rが勝利。

画像: スズキ「RG250Γ」主なスペックと発売当時の価格

この企画には、ポート研磨やピストン加工を施し、レーサーRGB500の前側2本と同形状のチャンバーを装着したRG250Γ改も参戦。最高速193.55km/h、ゼロヨン12秒82をマークして、RG250Γのポテンシャルの高さを証明した。ちなみにノーマルのサーキットでの燃料消費率はガンマ:8.82km/L、RZ:10.35km /L、MVX:8.27km/Lであった。

スズキ「RG250Γ」各部装備・ディテール紹介

画像: 市販車として初めてアルミフレームを採用したRG250Γ。前例がなかったことだけに、材料の手配から加工、表面仕上げ、さらに量産工程など問題は山積みだったという。アルミフレームが市販車で当たり前となったのは、紛れもなくスズキの功績。

市販車として初めてアルミフレームを採用したRG250Γ。前例がなかったことだけに、材料の手配から加工、表面仕上げ、さらに量産工程など問題は山積みだったという。アルミフレームが市販車で当たり前となったのは、紛れもなくスズキの功績。

画像: 空冷のRG250と同じボアストークのまま水冷化を果たし、最高出力は当時の自主規制上限の45馬力。アルミフレームを採用した軽量な車体と合わせ、ライバルの中で抜きんでたパワーウェイトレシオを達成。

空冷のRG250と同じボアストークのまま水冷化を果たし、最高出力は当時の自主規制上限の45馬力。アルミフレームを採用した軽量な車体と合わせ、ライバルの中で抜きんでたパワーウェイトレシオを達成。

画像: アルミフレーム、アルミ角スイングアームに加え、チャンバー+ アルミサイレンサー別体スタイルのマフラー。

アルミフレーム、アルミ角スイングアームに加え、チャンバー+ アルミサイレンサー別体スタイルのマフラー。

リアのプリロードは5段階に調節可能。調整ノブはスイングアームピボットあたりにダイヤルとして露出していた。

画像: この頃の市販車は2本サスからモノサスへの過渡期。スズキはフルフローターと名付け優位性をアピールした。

この頃の市販車は2本サスからモノサスへの過渡期。スズキはフルフローターと名付け優位性をアピールした。

画像: 中央に3000rpmから始まるタコメーター、左にスピード、右に水温計を配したメーターパネル。

中央に3000rpmから始まるタコメーター、左にスピード、右に水温計を配したメーターパネル。

画像: スクリーンの位置は意外に高く、ウインドプロテクション性もかなりある。ハンドルも思いのほか高いポジションにセット。

スクリーンの位置は意外に高く、ウインドプロテクション性もかなりある。ハンドルも思いのほか高いポジションにセット。

画像: 前輪16インチホイールをVT250Fに続いて採用。タイヤはGPレースイメージの強いミシュランを純正指定。

前輪16インチホイールをVT250Fに続いて採用。タイヤはGPレースイメージの強いミシュランを純正指定。

画像: 前後に段差を付けたシートは加速時のストッパーを兼ねる。シングルシートカバーもオプションで用意された。

前後に段差を付けたシートは加速時のストッパーを兼ねる。シングルシートカバーもオプションで用意された。

画像: エアプレーンタイプのタンクキャップ。メインキーでロックできる格納式のノブを引き起こして開閉する。

エアプレーンタイプのタンクキャップ。メインキーでロックできる格納式のノブを引き起こして開閉する。

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