125ccスポーツバイクが教えてくれる運転操作のいろは
僕が免許を取った当初、先輩に「移動できるだけで満足するな。オートバイは自分の意思と機械の性能を摺り合わせながら一緒に走る乗り物だ」と言われた。
昭和の時代、先輩の言葉は重い。加えて「いきなりデカイのに乗りたがらないで、車体が軽くてパワーを使い切れる125cc以下で練習しろ」とも。上から目線が鬱陶しかったのは事実だが、僕にとってこうしたアドバイスは的確だった。
当時の小型ロードスポーツ車は前後17~18インチホイールが主流で、ミニバイクよりも安定性が高くて自然なハンドリング。パワーも15馬力以下で、レッドゾーンまで引っ張るフル加速もクラッチとシフト操作を連携させるリズムも危なげなく身に付けられた。
現行CB125Rはスロットル操作に対して穏やかに反応するエンジン特性で、市街地での扱いやすさに定評がある。ただ、どの回転域でも同じように穏やかな反応はスポーツライディングでメリハリが付けにくく、エキサイティングさも感じられない。
新型CB125RはエンジンがDOHC4バルブ化されたが、これはEURO5規制対応と引き換えにエンジン特性が鈍くなることを避けるためだろう。最高出力は約2馬力アップで、特に高回転域でのレスポンスが向上してキビキビ感が増しているはず。
最高速は4km/hアップにとどまっているが、これはエンジン性能ではなく、電気的な制御によるものだ。
フロントフォークがショーワ製SFF-BPに変更されていることも重要なポイント。現行モデルはシャキッとしたハンドリングが持ち味だが、乗り心地は若干硬い。
そこで鋭いハンドリングと乗り心地のバランスを最適化するため、このクラスには贅沢とさえ思えるハイグレードなフォークを採用したのだろう。エンジン性能アップと併せ、スポーツライディング適性が高まっていることは間違いない。
冒頭の話に戻るが、125ccロードスポーツの軽量な車体に使い切れるパワーというパッケージングは昔も今も変わらない。ライダーの操作にオートバイがどう反応し、何をすると危険なのか知識ではなく体で覚えるためには最適なクラスだ。
新型CB125Rはエントリーユーザーが安心して乗れる扱いやすさに加え、スキルの高いライダーでも存分に楽しめる仕上がりになっているはずだ。
文:太田安治