ロイヤルエンフィールド「コンチネンタルGT 650」インプレ(太田安治)
飽きのこない魅力と価格設定に惹かれる
イギリス車がスポーツモデル界の主役だったのは1950〜60年代。トライアンフ、BSA、ノートンが有名だが、ロイヤルエンフィールドは世界最古の名門ブランド。このコンチネンタルGTは最新技術を駆使した新世代モデルながら、60年代に大流行したカフェレーサースタイルを特徴とする一台だ。
タンクからシート後端までの水平基調ライン、ポリッシュされたアルミパーツとクロームメッキ仕上げパーツで往時の雰囲気を漂わせているが、乗り味は現代的。エンジンは2500回転で最大トルクの80%を発揮する低中回転型で、ゼロ発進が力強く、エンジン回転数を気にせずポンポンとシフトアップしてもスムーズに速度が乗っていく。
2気筒らしい鼓動感が濃いのは3000回転台、速度にして50〜80km/hあたり。高速道路クルージングの6速・100km/h時は4000回転で、一次振動を打ち消すバランサーの効果で振動の質はマイルドであり、長時間走行で手足がしびれることもない。
感心したのはスロットル開け始めのピックアップとエンジンブレーキの効きがごく自然で、オートバイのキャラクターと完璧にマッチしていること。このインジェクションセッティングはライバル車よりも際立っていて、270度クランクの不等間隔爆発と併せ、流すようなペースが実に心地いい。
スチールダブルクレードルフレームはかつてレース界を席巻したフレームビルダー「ハリス」の設計だが、前後サス、ピレリ製標準装着タイヤと共に公道の速度レンジに合わせた特性。スーパースポーツのようにフロントのグリップを活かして旋回するのではなく、スロットルを開けるとリアタイヤを軸にしてタタタッ! とトラクションを感じさせながら素直に向きを変えていく。ステップレシオが揃った6速ミッションを使って4000回転近辺を保ち、スローインファーストアウトで峠道を駆け抜ける楽しさは他車にない魅力だ。
僕がオーナーならセパレートハンドルの取り付け幅を左右とも20mm程度詰め、フロントフォークの初期作動をスムーズにする方向でセッティング変更し、少しだけスポーツ性を上げて楽しみたい。外装パーツのカスタムや磨いて眺めることも至福の時間となるはず。古きよき時代の雰囲気と最新モデルらしい完成度を併せ持つオートバイが80万円前後というのは間違いなくお買い得だ。