近すぎて気づかなかったバイクパラダイス
レイザーラモンRGさんと初めて熊本阿蘇をツーリングしたのは、熊本を大地震が襲った2016年の夏でした。
地震が起こったのは今日からちょうど5年前の4月14日。その混乱が収まった頃に、ふるさと熊本のために何かしたい、何か動きたい、というRGさんの言葉に動かされるように九州・阿蘇へと飛んだのでした。
「ちょうど地震があった前日まで震源地近くの小学校でロケをしてたんですよ」というRGさん。被害のあった地域を回り、役所の方にお会いし、実際にバイクでいくつかの被災地を回ったRGさんは、バイクとライダーの力が熊本を救う、ってことを信じていました。
「いろんなところでお話を伺ったんですが、動きの取りやすいバイクで救援物資を運んでくれたり、開店休業状態の商店に買い物に来てくれたり、あちこちでバイクが活躍してました。いいなぁ、やるなぁ、バイク乗り!と思ったんです」
それからRGさんも、実際にバイクで阿蘇を走る機会が増えたのだそう。本誌をはじめとする雑誌取材で、イベント出席で、そしてプライベートで。
「熊本で生まれて小さい頃に引っ越したので、バイクで走ったことなかったんですよ。妻も熊本なので、夏休みや年末年始には帰省していましたが、クルマで動くじゃないですか。そうすると、バイクのよさが一層わかる。熊本って、バイクで走るとチョーよくないですか?」
RGさん……アナタそんなこと、今ごろ気づいたの?(笑)。九州の、いや日本じゅうのライダー、九州がバイク天国だって、とっくに知ってますけど~!
休憩スポットがあるのに停まりたくない旅
それからRGさんは、ことあるごとに熊本をバイクで走りました。
震災の被害状況を見ながら、復旧作業の迷惑にならない時期には、20万人のフォロワー数を誇るツイッターで、現在位置をつぶやきながら阿蘇を走り回るプライベートイベント「RGを捕まえろ」をやったし、2019年には日本屈指のビッグイベント「ピースライド」に、ゲストとして参加しました。
20年にもピースライドにゲストとして参加が決まっていたんだけれど、今度はコロナ禍の影響でイベントそのものが中止に。RGさん、イベント参加も、阿蘇をバイクで走り回るのも楽しみにしてたのに――。
「でもその頃に、1日スケジュールが空いてるんです。朝、飛行機で熊本入り、夜には東京に帰って来なきゃいけないんですが、そんな弾丸ツーリング例をできませんか?」
早速RGさんの意向を、ピースライドも主催する阿蘇モビリティツーリズムの事務局に打診したところ、日帰りや半日滞在でも楽しめるツーリングプランを提示してくれました。
走っても走っても走り足りない阿蘇だけれど、日帰りだって楽しさの片鱗は味わうことができるのだ!
「いろんなガイドマップに載っている観光地もいいんですが、現地のライダーがよく立ち寄るスポットをつなぎ合わせて、半日+αのツーリングプランを作ってみました。RGさんには、美味しいものを食べて、素晴らしい阿蘇の絶景を堪能してもらって、気持ちのいい阿蘇をバイクで走ってもらいたい」とは、阿蘇モビリティツーリズムの副会長を務める、熊本市のテラバル自動車学校の代表、片桐英夫さん。熊本で、数々のバイクイベントを企画実行する仕掛け人だ。
朝イチの飛行機で熊本空港に降り、バイクは今回、阿蘇モビリティツーリズム事務局が、ホンダGOのサポートを受けて、CB1000Rを用意してくれました。RGさんにしてみれば、空港に降り立ったら目の前にCB1000Rが待っているという夢のような環境。持参したヘルメットだけで阿蘇ツーリングがスタートしたのだ!
日帰り6時間では走り切れない無限のルート
まずは空港からのスタートで、震災で寸断された国道57号線の迂回新ルート「二重峠トンネル」を走って、熊本のライダーお勧め「ヒバリグリル」へ。ここでまず熊本グルメのひとつ、肉料理をいただきました! 熊本と言えば赤牛だけれど、和牛も絶品! ヒバリグリルの肉料理、熊本のライダーならだれもが知っているお店なんだそうです。
昼食を済ませたらいよいよワインディングへ。事務局が推薦してくれたいくつかのスポットを、ワインディングをつないで走りまわるのです。
今回走ったのは、阿蘇のほんの一部である、ミルクロード、阿蘇スカイラインにヒゴタイロード。もっと時間があれば、20年夏の大雨で通行止めになっているマゼノミステリーロードも、やまなみハイウェイも走りたい。行きたい場所がたくさんある阿蘇は、走りたい道がたくさんあるのだ。
天気にも恵まれた天空のワインディングは、走りが気持ちよくて、停まるのがもったいないけれど、停まって休憩したくなるスポットがたくさんある。そんな贅沢な悩みを感じながら、RGさんとCB1000Rは走る、走る。
熊本・阿蘇の大動脈である国道57号線を挟んで、今度は噴煙も頼もしい阿蘇中岳、大草原の草千里ケ浜を望みながら南阿蘇エリアへ。
あの地震から5年が経って、寸断された国道57号線も復旧し、3月には新阿蘇大橋も開通。従来からあった、ミルクロードに通じる北外輪山大津線と立体的にクロスするように、北側復旧道路も新設され、将来的には北東に伸びて熊本~大分への物流の道にも発展していくようです。
日帰り6時間では走り切れない無限のルート
RGさんはもちろん、編集部にとっても、熊本・阿蘇はオートポリスサーキットやHSR九州へのレース取材をはじめ、ホンダ熊本製作所の取材などで馴染みの深い場所。行くたびに新しい発見があり、地元の友人がお勧めしてくれる名所だって回り切れない。クルマでドライブも楽しいけれど、オートバイで行きたい場所なのだ、阿蘇ってところは。
「空港について日没まで6時間くらいですか? それでも走りましたねぇ!立ち寄りたいところ、いろいろ候補出してもらったのに、停まるのがもったいなかったですね」とRGさん。
阿蘇モビリティツーリズム事務局によると、今日のコースはほんの一部。空港を起点にした半日コースだっていくらでも作れるし、これが1泊、2泊なら、ツーリングルートが無限に作れるのが阿蘇のすごいところ。
さらに、今回のRGさんのように、熊本や福岡まで飛行機で飛んで、レンタルバイク「ホンダGO」<https://www.honda.co.jp/HondaGO>を利用するって手もある。阿蘇なのにどーして福岡かって? それは、福岡市内から阿蘇まで、バイクでほんの2時間だから、福岡まで旅のエリアを広げれば、もっと飛行機の便数も多いし、ホンダGO対象店も増えるからです♪
美味しいものを食べて、爽快な絶景ワインディングを走って、気持ちのいい人たちに出会える熊本・阿蘇ツーリング。今はまだコロナウィルスが蔓延していて、気軽に外出ができない時期だけれど、少しでも落ち着いたら、密にならないように、誰にも接触しないソロツーリングなんていいかもしれませんね。
「阿蘇、バイクでしか走りたくないと決心しがち」
RGさんが誰に言うでもなくつぶやいた阿蘇あるあるでした!
写真・本文/中村浩史
※月刊オートバイ 2021年2月号に掲載したページを加筆修正しています※