文:太田安治、木川田ステラ、オートバイ編集部/写真:南 孝幸、赤松 孝
ヤマハ「YZF-R25 ABS」のインプレ・解説(太田安治)
公道にしっかり軸足を置いた「正常進化」スポーツ
2019年登場の現行型YZF-R25は、普段使いでの乗りやすさを保ったままスポーツ性能もハイレベルなものとした「正常進化」モデルだ。
スタイリングを一新し、ハンドル位置はちょうどバー1本分に相当する22mmほど低くなったが、最大のポイントは倒立フロントフォークの採用。これでハンドリングがどう変わったか気になるところだ。
結論から言うと、走りのステージがスポーツライディング側に大きく広がった。サーキットはもちろん、公道レベルでも接地感の高さ、操作に対して車体が反応する際の速さをしっかり体感できる。
インナーチューブとアウターチューブの嵌合部が長い倒立フォークはフォーク全体の剛性が高くブレーキングやコーナリングで大きな荷重を受けてもインナーチューブのたわみ、システム全体のねじれが起きにくい。加えて、バネ下重量が軽くなるので路面追従性も上がる。その分高価だが、前モデルとの価格差はABS付きで3万円少々だ。
実際に走らせると、ハンドル位置が下がったことで体重が乗りやすくなり、低速域での落ち着きが少し増している。渋滞路でのふらつきが抑えられるので、市街地では好ましい変化だが、それを感じ
られるのは30km/h程度まで。クルージング速度域では前モデル同様に軽快なハンドリングになる。
10%程度の急な下り勾配でフルブレーキングして一気にフルバンク、という走り方も試したが、剛性は高く、ブレーキを残したまま寝かし込んでもフロント回りがバタつくことがない。前後サスペンションが踏ん張ることでフルバンク中の安定性はさらに高まり、バンク角も前モデルより増した。
こう書くと、真価を発揮するのはスポーツライディング時だけと思われそうだが、フロントタイヤの接地感が掴みやすく、車体姿勢を乱しにくいという特性はビギナーにも優しいし、市街地での乗り心地も前モデルより少し硬いかな、という程度の違いだ。
エンジンは基本的に変更なし。低中回転域の力強さによりゼロ発進が楽で追い越し加速も速く、高いギアでトコトコ走るのも得意。中回転域からの全開加速ではフラットに速度が乗り、エキサイティングさには欠けるが、実際の速さはトップレベルだ。