文:太田安治、木川田ステラ、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ホンダ「PCX160」インプレ・解説(太田安治)
コミューターユース中心で高速も使うライダーに最適
初代PCXが国内販売されたのは2010年3月。2012年に最初のマイナーチェンジを受けたが、同時に追加されたのがエンジンのボアを広げて排気量を増やしたPCX150。軽二輪区分で高速道路(自動車専用道路)を走れることから、400ccや250ccスクーターから乗り換えるライダーも取り込み、好調なセールスを続けてきた。
その後もPCXシリーズはマイナーチェンジ/モデルチェンジで改良を重ね、2021年1月にユーロ5規制対応の現行モデルにフルモデルチェンジ。この際、PCX150は排気量を拡大し、PCX160となった。
高速道路を走れるだけに、操縦安定性は気になるところ。前モデルではフロントブレーキを掛けながらの寝かし込みやバンク中のギャップ通過時など、大きな荷重が掛かると車体がねじれて旋回性が微妙に変化することがあったが、新型はこれが消えた。
ハンドリングの重さ、硬さは感じないから、単に剛性を高めたのではなく、ねじれバランスを部位ごとに最適化した結果だろう。
リアタイヤは14インチから13インチに小径化され、外径を小さくした分ホイールトラベル量を増加させている。リアのストローク量は10mmアップしているが、1サイズ太いタイヤ幅でエアボリュームを増やして衝撃吸収性を上げ、減速帯を通過した際などに感じるリアのドタドタ感を抑えている。
また、フレームの形状変更でシート下のスペース容量が、2L増量しているのも見逃せないポイント。ドラムからディスクへ変更されたリアブレーキは、市街地や峠道で頻繁に使ってもタッチと効きが一定していてコントロールしやすいが、欲を言えばリアにもABSが欲しいところだ。
PCX160の排気量は156ccで、124ccのPCXとの差は32cc。わずか32㏄と言うかもしれないが、比率で言えば25%ものアップ。全速度域で確実に力強く、登り坂やタンデムでの差は歴然としている。
さすがに高速道路の120km/h区間は走行車線をキープすることになるが、都市高速なら充分。通勤通学メインで短区間だけ高速道路を利用する、という使い方にはベストチョイスだ。
250ccクラスのスクーターとの決定的な違いは気軽さ、機動性、そして価格。趣味性よりもコミューターとしての用途をメインに考えるのであれば、PCX160に優位性があると思う。