文:太田安治、オートバイ編集部/写真:森 浩輔
ホンダ「CB1000R」インプレ・解説(太田安治)
CBRの血統を感じる145PSの誘惑
初代CB1000Rは2008年から海外モデルとしてホンダのイタリア工場で生産されていたが、2018年のフルモデルチェンジを機に日本生産のグローバルモデルとなり、今年3月にマイナーチェンジを受け新型が登場した。
車格はミドルクラスと同等で、大型車的な威圧感はない。213kgの車重ながらカウル回りに重量物がなく、ハンドル幅も広めなので取り回しは軽く、ライディングフォーム/着座位置とも自由度の高いライディングポジション設定で体格を問わないことも特徴だ。
エンジンはSC57型のCBR1000RR用がベースで、吸排気系の大幅な変更、エンジン内部の細かなチューニングでCB専用といった仕上がり。とはいえ、スーパースポーツ由来のエンジンであることを感じる部分は多い。
極低回転域でのトルクは薄めで、ピックアップの鋭さ、アシスト機能付きクラッチの半クラッチ操作が敏感なことと併せて発進時は気を使うし、振動にも高周波成分が多く感じられる。このあたりはCB1300SFやCB1100の「人当たりの良さ」とは異質。
だが、走り出してしまえば実にスムーズ。6速・30km/h台から加速するフレキシビリティも備えている。100km/h巡航時は4200回転で、このクラスでは標準的だが、6速のギア比をロング設定にして、4000回転弱で巡航できれば楽だと思う。
本領発揮は6000回転台から。ライディングモードを「スポーツ」にしてフル加速するとフロントタイヤが軽々と浮き上がり、レッドゾーンの1万2000回転まで強烈な加速が続いて145馬力のパワーを思い知らされる。
スロットル開け始めの反応も鋭く、相応のスキルのあるライダーが慣れた場所を走るときに適したモードだ。小さいコーナーが続くワインディングなら「スタンダード」の方がコントローラブルで、市街地なら「レイン」モードにセットした方が扱いやすい。
モノバックボーンのフレームに倒立フォーク、片持ちスイングアームを組み合わせた車体は公道の速度域を前提として設定されている感触。スーパースポーツ的な過敏さはなく、どんな速度域、バンク角でも前後タイヤ、特にフロントタイヤのグリップが明確に伝わってくるので荒れた路面でも安心感が高い。
個人的にはゼロ発進がよりイージーになれば文句なし。昨年公開の「CB-Fコンセプト」も登場すれば、国内のライダーに支持されることは間違いないと思う。