文:太田安治、木川田ステラ、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ホンダ「X-ADV」インプレ&解説(太田安治)
走破性の高さが光るATアドベンチャーが大進化
ホンダが提唱する「ニューミッド・コンセプト」を車名とするNCシリーズ。それに、クロスオーバースタイルで加わったモデルがX-ADV。好調なセールスを続けているが、2021年3月に初のモデルチェンジを受けた。
予備知識なしで試乗したが、試乗後に開発コンセプトが「スマート&エキサイティング」と聞いて素直に納得した。
エンジン/車体の基本的な構成は踏襲されているが、走ると明らかに軽快で快適。そして楽しさの深みが増している。
僕が前モデルに抱いていた「アドベンチャールックの一風変わったスクーター」というイメージは払拭され、ADVというホンダ独自のキャラクターがしっかり確立された印象を受けた。
X-ADVのエンジンは低回転域から太いトルクを発生し、そのままフラットに6000回転超まで上昇していく特性が持ち味だが、新型は全回転域でフリクションが減っているようで、とにかく回転上昇が軽い。
DCTをマニュアルモードにして全開加速すると5000〜7000回転に勢いがあり、速さも充分。前モデルはパワー感が足りずにレブリミッターを作動させがちだったが、新型は回す気にならないほどパワフルだ。
もともと、NC系のエンジンはDCTとの相性が抜群にいいが、新型X-ADVは電子制御スロットルを採用してスロットルバルブ開度の制御が緻密になり、吸気ダクト内の多岐に渡る改良、インジェクターノズル変更と併せて低回転域での扱いやすさも増した。
4〜6速のギアレシオも変更され、6速・100km/h時は約3000回転。58馬力にアップしたパワーにより、高速道路の120km/h区間ではタンデムでも向かい風でも余裕たっぷり。
不快な振動やノイズはなく、270度クランクの不等間隔爆発で心地よい鼓動感とサウンドを楽しめる。WMT値とタンク容量から計算した航続距離は約360kmで、ツーリングユースでも不満はない。
フレームは基本的に前モデルを継承するが、ヘッドパイプ回りの構成や肉厚を変更。ギャップ越え時のキックバックが減って、乗り心地全体が軽く、マイルドになった。これならダートでの接地性も増しているだろう。
タフな走りもこなし、ライダーには優しく応えるキャラクターが新型X-ADVの魅力。高速道路や峠道、さらにダートまで快適に走破できるオートバイとして、実に貴重な存在だ。