文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年5月15日に公開されたものを転載しています。
スクーターの大ヒット作の名を継承した電動スクーター!
多くのベテランライダーの人たちにとって、ヤマハのパッソルと言えば1977年に発売され、「ソフトバイク」という新しい市場を築いた原付一種の名作「パッソル」を思い出すでしょう。
2002年11月、ヤマハは東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県(一部地域除く)で電動コミューターを初めて販売しています。その記念すべきモデルに与えられたのも「パッソル」の名前でした。メーカー希望小売価格は20万円(専用充電器は別売で15,000円)。当時15万〜17万円だったICE(内燃機関)原付一種のスクーターよりは少し高価でしたが、かなり価格面で頑張ったことがうかがえます。
2003年5月から、パッソルは全国販売を開始。カラーバリエーションは「ライトグリーニッシュブルーソリッド3」、「ライトリーフグリーンソリッド4」、「テンダーホワイト」、「ビビッドオレンジソリッド1」の4色。さらにオプション(5,000円)で4色の「Passolカラーチェンジキット」を用意し、好みの色を選べるようになっていました。
ヤマハの2輪EV開発は1990年代初頭からスタート
そもそもヤマハは1993年から電動ハイブリッド(アシスト)自転車「PAS(パス)」を発売し、2016年には累計出荷台数200万台を達成するなど、この分野のパイオニアとして大成功をおさめています。ヤマハの2輪EVについては、1991年の東京モーターショーに出展した「FROG」を皮切りに研究開発が進みましたが、その開発にはPASで培った制御技術も役立っています。
アーバン・ミニマム・コミューターを開発コンセプトとするパッソルは、「YIPU」=ヤマハ・インテグレイテッド・パワー・ユニット」と名付けられた超薄型パワーユニットがその特徴であり、車体も全長153cm、重量44kgと小型・軽量に仕上げられているため、駐車・保管が手軽に扱えるのが大きなセールスポイントでした。
要のバッテリーには新神戸電機、日立製作所と共同開発した、脱着式リチウムイオンバッテリーを採用。このバッテリーは単体重量約6kgで、安定した高出力で低温時も性能低下の少ない特性を持っていました。またリフレッシュは不要で、急速充電にも対応していました。
車体搭載状態、取り外し状態のいずれの状態でも家庭用電源からの充電が可能で、1充電あたりの電気代は当時約12円。なお航続距離は32km(30km/h定地)でした。
ヤマハ Passol 主要諸元
全長×全幅×全高 1,530mm×600mm×995mm 軸間距離 1,040mm 最低地上高 115mm シート高 745mm 車両重量 44kg(バッテリー未装着時38kg)乗車定員 1名
1充電走行距離 32km(30km /h定地走行テスト値) 最小回転半径 1.6m
原動機型式 Y801E 原動機種類 交流同期電動機 定格出力 0.58kW 最高出力 0.95 kW/1830rpm 変速機形式 遊星減速機
ブレーキ形式(前/後)ドラム(リーディングトレーリング) タイヤサイズ(前/後)60/100-12 36J(チューブタイプ) 懸架方式(前/後)テレスコピック/ユニットスイング フレーム形式 バックボーン(アルミパイプ)
バッテリー種類 リチウムイオンバッテリー バッテリー電圧/容量 25V/14Ah 充電時間 80%まで1.5~2時間/100%まで2.5時間 バッテリー充電電源 AC100V
メーカー希望小売価格 200,000円(専用充電器別売15,000円、2002年11月、一部地域限定販売) 240,000円(専用充電器含む、2003年5月、全国販売)
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)