熱心なハーレーファン以外は、モデルごとの違いや車名も、ちょっとわからない。
それがハーレーダビッドソンな世界。
今回は、ビッグツインの「入口」とも言えるソフテイルスリムを乗りつくしてみた!
文:中村浩史/写真:やすこうちてつや/車両協力:ハーレーダビッドソン熊本

ハーレー浦島太郎が見る新しい世代のハーレーダビッドソン

画像: Harley-Davidson Softail Slim 総排気量:1746cc エンジン形式:空油冷4ストOHC4バルブV型2気筒 シート高:660mm 車両重量:304kg ベース価格:税込237万9300円

Harley-Davidson Softail Slim

総排気量:1746cc
エンジン形式:空油冷4ストOHC4バルブV型2気筒
シート高:660mm
車両重量:304kg

ベース価格:税込237万9300円

日本にたくさんいるハーレー浦島太郎

実に久しぶりにハーレーダビッドソンに乗った。自慢じゃないが私、このメジャーブランドのモデルに、ほとんど乗ったことがない。それも試乗の仕事がらみのみで、ハーレーと名のついているオートバイで走ったのは、人生で数えるほど、数100kmだ。

前回に乗ったのは、今年のはじめだっただろうか。神社参拝男・佐々木優太の企画のヘルプで、安藤なつさんのファットボーイの運搬をお手伝いした数10キロ。この時が、おそらく人生でいちばんハーレーと時間を共にした日だっただろう。

あぁ、そうか、これファットボーイか! 『ターミネーター2』でシュワルツネッガーが乗ってたやつだ、とそれくらいの認識しかない男なのだ。

画像1: ハーレー浦島太郎が見る新しい世代のハーレーダビッドソン

そのファットボーイに乗って思った。おぉ、ハーレーよく走る! 思った以上に曲がるし止まるし、クルージングが気持ちいいツーリングバイクだ、と。排気量いくつなんだろう、スポーツスターじゃないから1340ccかな、ホイールベースどんくらいだろう──その程度の知識もない。

だいたいがハーレー全体が苦手なのだ。食わず嫌いにも程がある。そんなにスポーツバイクにガチガチでもないけれど、やっぱりクルーザー、特にハーレーダビッドソンは別物だ、ってずっと思ってきた。そういうバイク乗りは多いと思う。
だから逆に興味が出てきたのだ。そんな理由で、今回の現行車再検証はハーレーダビッドソンだ。

ハーレーには現在、3つのファミリーがあって、それがストリート/ツーリング/クルーザー。
さらにスペシャルモデルとして、3輪のトライク、オフィシャルカスタムのCVOがある。先日、発表されたアドベンチャー「パンアメリカ」は、レボリューションMAXとして加わったニューファミリー。ダイナって呼ばれていたリアツインショックのシリーズはなくなったんだね。

中でも、ストリート=スポーツスターはもはやハーレーという枠を飛び越えてひとつのブランドに昇華した定番人気モデル。かつてはFL系ビッグツインなんて呼ばれていたツーリングは、ハーレーのひとつの顔である長旅を愛するファンに支持されているファミリー。その中間、街乗りもツーリングもイケる、っていうのがソフテイルを代表とするクルーザーファミリーだ。

画像2: ハーレー浦島太郎が見る新しい世代のハーレーダビッドソン

安藤なっちゃんのファットボーイも、このソフテイルシリーズ。オフィシャルにはクルーザーシリーズと呼ばれるこのソフテイルが、ハーレーの主力ゾーンといったところなのだと思うのだ。

今回、試乗できたのはソフテイルスリム。ローハンドル、前後16インチホイールを持つ、誰が見たって「お、ハーレーだ」っていうフォルム。ハーレーに事前知識がない私なんかにも「これは乗ってみたいな」って思わせるカッコよさだ。素人感まる出しで言わせてもらうと、ファットボーイ類のスタイリングだなぁ、と思う。

Born in The Milwaukee
8バルブのミルウォーキーエイト

画像1: いまどきのハーレーはこんなに走る! ハーレーダビッドソン「ソフテイルスリム」に乗って現行モデルの魅力を探る(2021年)

ハーレーに詳しくない人だって聞いたことがある、ナックルやショベル、って愛称で呼ばれるハーレーのエンジン形式。2017年にデビューした、その最新エンジンが、この「ミルウォーキーエイト」で107/114の2種類がラインアップされている。

この数字は排気量のことで、107は107キュービックインチ=1745cc、114は1868ccという意味だ。先代エンジンは「ツインカム」と呼ばれる文字通りDOHCの2バルブ。ミルウォーキーエイトはこれをシングルカムの4バルブとし、ツインプラグ、バランサーを搭載。初めて乗る人には低回転トルクのお化けで、高回転では思った以上にパワーが出る! と説明したい。

ド低回転からあふれるトルク 気を抜くとリアタイヤが逃げる

低めのハンドルとフォワードステップボードにどっかりと座るハーレーポジション。下半身は両足を前に投げ出して、上半身はほぼ正立。スポーツスターほど細くはないが、太く重い車体も、このシート高なら苦にならない。

キーレスエントリー、セル一発でビッグツインが目を覚ます。インジェクションモデルで、始動性はよく、アイドリングもすぐに安定するけれど、回転数が約800回転と異常に低い! これもミルウォーキー8の特徴のひとつだ。

画像: ▲街中をのんびり流してワインディングを駆け上がっていつもの絶景ポイント「南阿蘇 ケニーロード」へ。そんな走りが、ソフテイルによく似合う。

▲街中をのんびり流してワインディングを駆け上がっていつもの絶景ポイント「南阿蘇 ケニーロード」へ。そんな走りが、ソフテイルによく似合う。

そろりとスロットルを開けると、あふれる低回転トルクが心強い。アイドリングすぐ上はバラつくけれど、その上がきれいに回るエンジン。街乗りで50〜60km/hで走っていると、デジタルタコメーターは2500〜3000回転で、それ以上の回転数は、湧き上がるトルクでドンと背中を押されるようにスピードが乗り始める。

ちょっと濡れた路面では、調子に乗って開けると、すぐにリアタイヤがスピン! 気を抜いちゃいけない、これは1.7L超えのビッグツインなのだ。

限られた回転域にある気持ちのいいスイートスポット

街中を走っていると、3000回転も回していれば充分。ハーレー素人の私が思うような「デケテン・デケテン・デケテン」って3拍子アイドリングは味わえなかったけれど、この低回転でスピードが乗るフィーリングは、ちょっと国産モデルじゃ味わえない。

だけど、鼓動が気持ちのいい回転域は、この1500〜3000回転あたり。1500回転以下ではバラつくし、3000回転を超えると、パワーがぐんぐん乗ってくるものの、両手にビリビリと硬質な振動が伝わってきて、ぜんぜん気持ちよくなくなってしまう。

もちろん、きれいに回るVツインのビートなんて、ハーレーファンが望んでいない、味気なく感じるものなんだろうけれど、ハーレー素人からすれば、そう感じてしまうのだ。

だから、自然と3000回転以下を使って走るんだけれど、これでぜんぜん不満がないのも事実。いやぁ、見た目のイカツさやド迫力と裏腹に、静かに穏やかに、そして平和に走れるのがイマドキのハーレーなんだなぁ。

ハーレーが次期愛車の候補に入ってきた!?

Vツインのよさを味わえるもうひとつのステージ、高速道路では、圧倒的な安定感に驚くことになる。どっしり低く長い車体は、直進安定性が強いとは予想していたけれど、この太いタイヤ、この重い車体が、安定したヒラヒラなハンドリングを見せてくれるのだ。これ、ちょっとびっくり。

低回転型エンジンは80km/hで1800回転、100km/hで2200回転あたりなんだけれど、フォークもリアサスも、そんなにストロークしていないのに、ハーレーは路面にべたーっと張り付くように曲がっていく。

画像: ▲苦手と思っていたワインディングさえソフテイルスリムは悠々と駆け抜けた。ただし過信は禁物! これは1.7L越えのビッグツイン。スロットルの開けすぎには注意だ‼

▲苦手と思っていたワインディングさえソフテイルスリムは悠々と駆け抜けた。ただし過信は禁物! これは1.7L越えのビッグツイン。スロットルの開けすぎには注意だ‼

高速コーナーの安定感だけではなく、その後に踏み込んだ低〜中速コーナーが連続するワインディングでも、ステップボードがガリガリガリッって接地するのを気をつければ、結構なハイペースで走り抜けることができる。

タイプとしては、小径の太いフロントタイヤを起点に曲がっていく感じだけれど、この大きさ、この重さはまったく気にならない、苦手にも感じなかったのだ。このハンドリングこそ、ハーレー素人の私がいちばんびっくりしたことだった。

もちろん300kg超えの車体は重いに決まっている。けれど、このビッグサイズを苦にしなくてもいい車体設計がきちんとできているのに驚いた。重いバイクの運動性が高くないのは当然だけれど、では軽くしよう、という歴史が日本車で、重いままラクに扱えるようにしよう、という歴史がハーレーなのかもしれない。

次のバイク何にしよう? と悩んだ時は、ハーレーも候補に入る気がしてきた。

画像: ▲熊本地震で崩落した阿蘇大橋に替わって架けられた新阿蘇大橋を望むパーキングで。熊本・阿蘇は相変わらずのツーリング天国でした。日本中から多数のライダーが熊本を訪れる日常が早く戻って来ることを願っています。

▲熊本地震で崩落した阿蘇大橋に替わって架けられた新阿蘇大橋を望むパーキングで。熊本・阿蘇は相変わらずのツーリング天国でした。日本中から多数のライダーが熊本を訪れる日常が早く戻って来ることを願っています。

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