以下、文・写真:三橋 淳/モデル:難波祐香、大西真生
林道ビギナーをアテンドするにあたり、守りたい条件
今までソロツーリングばかりやっていたので、今年はグループツーリングを増やそうと思った。友人たちとはもちろん、輪を広げてみたかった。そこでTwitterだ。
はい!!!!!!!
— 難波祐香バイク声優 (@nyanba_youka) March 15, 2021
どこか連れて行ってください!!!!!
食いついてくれたのは、バイク声優の難波祐香さん。「にゃんばちゃん」として知られるこのお方。以前イベントで知り合ってから仲良くさせて頂いておりますが、こんなに無邪気にお願いされたら、そりゃおじさん頑張るでしょう。
とはいえ、にゃんばちゃんは、林道を走った事がない。そもそもオフロードバイクもウエアもないという。
ちょうどいい機会だ。以前書いた初心者ツーリングのアドバイス的なものを、実践編として展開してみようじゃないか。
で、バイクないというからホンダにお願いして広報車を用意してもらった。CRF250LとCRF250RALLY。いずれもスタンダードだ。にゃんばちゃんの身長は161cm。CRF250Lのシート高は830mm。
彼女が乗れる現在のトレールバイクって、本当にラインナップが少なくなったが、こうしてシート高の低いモデルが存在するのは本当に貴重だ。
2台借りたのには理由がある。先の記事には「初心者はベテラングループについていくな」と書いたのです。ベテラングループのリズムに振り回されないように、初心者グループの方が数が多くなければならない。
というわけで、ビギナーがもうひとりは必要だった。
お願いしたのは……大西真生さん!
彼女と知り合ったのもとあるイベントのことだ。インスタ界隈では人気のバイク女子である。
ただ林道初心者というわけじゃなくて自身でもよく走りに行くそうだが、ベテランというほどでもない。どちらかというとアウトドアのベテランといった方がしっくりくるほど、キャンプ好きなのだ。
女子2人とおっさん1人という構成。世のおじさんたちから羨ましがられそうだが、私の使命は彼女たちに「楽しかったぁ」と笑顔で帰ってもらうことにある。無転倒は当たり前。
そのためのコース取りからペース配分。ランチまできちんとオーガナイズしてこそのベテランである。そう、ここではイベントプランナーばりのおもてなしの精神が必要なのだ!
林道ツーリングビギナーをアテンドするにあたり、守りたい条件がこちら。
・家から比較的近い
・超フラット林道
・美味しいものが食べられる
これに「景色がいい」が加われば完璧だったのだが、東京を拠点として移動していくと、どうしても難しい。景色のいい林道はもう少し山深いところにあるからだ。
まあ、それは林道にハマってくれたら2回目以降でもいい。いきなり最上級に行かなくても、まずはお手軽ランチパックプランですよ。
選んだ林道は、千葉県の内房にある金谷元名林道だ。
ここは2019年まで台風19号の影響で通行止めだったのだが、無事開通しただけでなく、その工事のおかげで林道全体がびっくりするくらい綺麗に整備された。大きな石や凸凹が少なく、初心者向けの林道となっている。
初心者とツーリングをするのに欠かせないアイテム
「おはよーございまーす!」
朝からハイテンションのにゃんばちゃんをお出迎えし、さっそく今日の相棒となるCRFとご対面。
「私が先に来たから、先に選んでもいいんですよね!」
そう言うなり跨ったのは250Lの方。こっちの方が車高が低いのだ。
「乗れました! これなら大丈夫です!」と満面の笑み。足が届くという難関をまずは突破である。
で、遅れてきたマオちゃんは必然的に250RALLYになるが、彼女の方が背が高い(165cm)。なのでこちらも余裕でクリア。これで出発できる。
とその前にやらねばならないのが、B+COMのペアリング。
初心者向けの林道ツーリングをアテンドするには、これがないと成立しないと言ってもいいくらい重要なアイテムだ。
いよいよ出発だが、実は私が最後尾。
「え? 三橋さんが先頭じゃないんですか?」
インカムから声が響くが大丈夫。そのためのB+COMです。道案内をしつつ後ろから見守れるというこの陣形はパーフェクトだ。
だってそうだろう。私のバイクはCRF1100Lアフリカツイン。これから高速に乗る。私が先頭でバビューンと気持ちよく走ったらどうなる? だから後ろを走るのです。
全ては彼女らのペースに合わせる。彼女たちにペースを作らせる。それが楽しんでもらうためには、大事なのだ。
朝の喧騒を抜け、レインボーブリッジを渡って東京湾アクアラインへ。一気に行きたいところだが海ほたるで一度休憩を取る。
千葉県へと渡れば、林道は館山道の富津金谷インターを降りてすぐ。まずは入り口で林道突入の準備だ。準備といっても特に何もしない。「ここから始まるよ!」という心の準備が最大の目的。
あとは荷物の点検くらいのもの。空気圧は落としません。パンクの確率が上がるだけ。もし走りにくい、怖いと訴えてきたときに初めて空気圧は下げればいい。
先導するのはベテランの仕事、ではない
「え? 私が先頭なんですか?」
若干うろたえ気味のにゃんばちゃん。そりゃそうだろう。普通はベテランが先頭を走って後ろからついていくカルガモ走法が主流だ。しかし私の場合は違う。
ベテランは一番最後。これ、山登りの陣形と同じ。リーダーが最後尾で全体を指揮するのです。
もっとも山登りの場合はサブリーダー的なのが先頭を走るから、この場合はマオちゃんが先頭なんだけど、道に迷う心配がないこのシチュエーションでは、あえて先頭を走ってもらおうと。初めて走る林道に誰かの後ろから入るよりも、先陣切って突入する喜びを知ってもらいたいのだ。
それが出来るのもB+COMというインカムがあること。それと平日で交通量が少ないということ。最近林道は人気なので対向車がやってくることもある。
そういう場合はベテランが先頭を走って対向車の有無を知らせた方が安心だ。
そんな思惑からにゃんばちゃんを先頭に送り出す。しばらく舗装路を登ったのちに現れた境界線、魔界の入り口、もとい砂利道の始まりだ。
「ここから林道~!」
テンションMAXの声が聞こえてくるが、彼女の場合は声優さんでもあるのでまるでアニメのシーンを聞いているようにアゲアゲである。
ここからはわ~きゃ~叫ぶ女子をただ見守るだけ。余計な事は言いません。相づちを返すだけ。
綺麗に整備されたばかりの林道だから、怖い場所がないので見守るこっちも安心。しかも先頭を走ってもらっているので、ペースは自分で決められる。だから無理せず走れるのもいい。