日本が誇る二輪車メーカー4社は世界各地で高い評価を得ている。そして日本市場では正規販売されていない機種が海外では数多く展開されてもいる。この連載では、そんな知る人ぞ知るモデルをフィーチャー。今回はフィリピンで2020年に新登場したスズキ「レイダーJクロスオーバー」を見ていこう。
文:小松信夫

スズキ「レイダーJクロスオーバー」の特徴

画像: SUZUKI RAIDER J CROSSOVER 総排気量:113cc エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブ単気筒 シート高:775mm 車両重量:97kg

SUZUKI RAIDER J CROSSOVER

総排気量:113cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブ単気筒
シート高:775mm
車両重量:97kg

「グローバルモデル」全盛の現代において、純粋に特定国の市場の要望に特化した「ローカルモデル」は絶滅しつつある、ということをこの連載をやってみて私は気付かされたワケです。今後そんなモデルが存在する可能性が残されてる地域は、世界2位の人口を背景にした超巨大市場のインドと、今まさに猛烈な勢いで発展しつつあるアフリカの一部くらい……。

しかし、そのいずれにも該当しない、かな〜りニッチな市場向けなのに「何じゃこりゃ?」という存在感を放つ最新の「どローカル」モデルがありました。それが今回のテーマ、東南アジアの島国・フィリピンで、スズキが販売している「レイダーJクロスオーバー」なのです!

画像1: スズキ「レイダーJクロスオーバー」の特徴

何がユニークって、それはもう見ればお分かりでしょう。東南アジアでは大人気のアンダーボーンスポーツなんだけど、フロントマスクは現代的オフロードモデルそのまま、フロントフェンダーも完全にオフロード向けデザイン。

画像1: スズキ レイダーJクロスオーバー

スズキ レイダーJクロスオーバー

この何とも言えないチグハグさ、違和感が凄いんですが、フィリピンのライダーのハートにはビンビンに刺さるようで。

画像: ホンダ XRM125(2021年ニュージーランド仕様)

ホンダ XRM125(2021年ニュージーランド仕様)

そもそも、ホンダがフィリピンで2001年に「XRM110」という、アンダーボーン+オフロードテイストなモデルを発売。それがモデルチェンジを繰り返して「XRM125」に進化しながら、根強い人気モデルに成長(今年からニュージーランドでも販売)。

その対抗馬として昨年、まんまXRMと同じコンセプトという直球勝負でスズキがデビューさせたのが「レイダーJクロスオーバー」なのでした。アンダーボーンとオフロードの「クロスオーバー」という、実に分かりやすい車名ですな。

画像: スズキ レイダーJ115Fi(2021年モデル)

スズキ レイダーJ115Fi(2021年モデル)

ベースとなったモデルは、フィリピンにおけるスズキ製アンダーボーンモデルのスタンダードというべき、スポーティなイメージの「レイダーJ115」。

エンジンは最高出力6.8kw=約9.2PSを発揮する113cc空冷単気筒&遠心クラッチ4速ミッションで、仮想敵であるXRM125より排気量が小さい。もちろんスズキにも125ccモデルが存在するんだけど、あえてこちらをベースにして価格をXRMより安くして勝負! ということらしい。

2020年のデビュー発表時にも、派手な演出のイベントを開いてプロモーション攻勢を仕掛けて、日本でも少し話題になりました。

画像2: スズキ「レイダーJクロスオーバー」の特徴

フィリピンでは今もなお「レイダーJクロスオーバー」のキャンペーン攻勢が続いている模様。ついこの間まで、購入者を対象に抽選で1名にフィリピンでも人気らしい新型ジムニー、4名にもう1台「レイダーJクロスオーバー」が当たるなんていう、結構豪華なキャンペーンをしてたみたい。日本ではあり得ないな…。

画像2: スズキ レイダーJクロスオーバー

スズキ レイダーJクロスオーバー

こんな風に書いてると、「レイダーJクロスオーバー」がキャンペーン頼りで、オフ車っぽい格好だけの存在だと誤解されそうですが、どうやらそうではないらしい。

画像3: スズキ「レイダーJクロスオーバー」の特徴

フロントマスク周り以外の「レイダーJ115」との違いで、目につくのはフロントのディスクブレーキのローターが、ペータルタイプに変更されていることと、フォークブーツ、マフラーのヒートガードくらい。

画像4: スズキ「レイダーJクロスオーバー」の特徴

しかし足回りにはオフロードを想定して大きく改良が施されている。剛性を向上させるために、インナーチューブ径をφ31mmとした正立フロントフォークを採用し、ツインショック構造のリアサスペンションも、高性能なダンパーと全く異なるスプリングによって大幅にグレードアップされているという。前後17インチホイールはそのままだけど、標準装着タイヤはセミブロックパターンに変更。

画像3: スズキ レイダーJクロスオーバー

スズキ レイダーJクロスオーバー

スタイリングも、シュラウド風のフレームカバーとか、車名ロゴの入ったシート周りとか、外装パーツは完全に別物だし、結構細かいとこまで凝ったデザイン。シートは形状を変更して、ブレーキング時にライダーが前に滑るのを防ぎ、同時に快適な乗り心地も実現。

よりワイドでアップライトなハンドルと合わせて、ポジション設定にも手が入っているようだ。このように徹底的に細かくこだわって造られ、さらに97kgという軽量さ、もともとしっかりした作りのフレームと合わせ、オフロードでの走り自体も高く評価されている模様。これ、未舗装路もまだまだ多いフィリピンでは重要なポイント。もちろん使い勝手の良さや信頼性、燃費なども高いレベル。

画像: ホンダ CT125・ハンターカブ

ホンダ CT125・ハンターカブ

この「レイダーJクロスオーバー」(やXRM125)の人気ぶりは、フィリピンだけの特異な現象? とも思う。しかし、よくよく考えてみれば、実用的なアンダーボーンの車体とシンプルでタフなエンジン、オフロード走行にも耐える足回りの組み合わせというのは、便利で使いやすいパッケージということだ。

それは今まさに日本でも大人気のCT125ハンターカブとも重なってくる。たまたま今ユーザーに受けるデザインが、日本ではレトロなCT風で、フィリピンでは最新のオフ車風だった、ということで、求めている機能自体はそんなに変わらないのです。

ちなみに「レイダーJクロスオーバー」には、スズキのオフロードのイメージカラーであるイエローをはじめ、レッド、ブルー、ブラックの合計4色のボディカラーを設定。このことも、幅広い要望に応えることを狙っているのがよく分かる。

文:小松信夫


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画像: 【公式動画】RAIDER J CROSSOVER official promotional video | Suzuki 日本語の解説付きです! www.youtube.com

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画像: 【フィリピンの公式プロモーションビデオ】Raider J Crossover Product Video www.youtube.com

【フィリピンの公式プロモーションビデオ】Raider J Crossover Product Video

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スズキ「レイダーJクロスオーバー」の主なスペック

全長×全幅×全高1970×810×1048mm
ホイールベース1224mm
シート高775mm
車両重量97kg
エンジン形式空冷4ストOHC2バルブ単気筒
総排気量113cc
ボア×ストローク51×55.2mm
圧縮比9.4
最高出力6.8kw/7500rpm
最大トルク9Nm/6500rpm
燃料タンク容量4L
変速機形式4速リターン
タイヤサイズ(前・後)70/90-17・80/90-17
ブレーキ形式(前・後)ディスク・ドラム

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