文:中村浩史/写真:折原弘之
ホンダモデルの歴史に燦然と輝くスーパーヒット
ホンダの400ccの名車、と言えばたくさんの車名が出てくる。ヨンフォアことCB400FOUR、ホークにCBX、CBR400F。それぞれの発売期間は、ヨンフォアが3年、ホークは4年、CBX4年にCBR3年。
それに対して、CB400スーパーフォア(SF)は群を抜いた長期間人気で、その年月はなんと30年! 完成度が高すぎて、もはや新しいバイクなんて生まれない—―って理由にもほどがある超ロングセラー。きみはスーパーカブか!
通常、ひとつのモデルが誕生すると、発売当時は当然のように大人気、けれど時間が経つと徐々に見慣れるようになって、ライバルの追撃も受けて人気が落ちはじめ、マイナーチェンジで魅力アップから人気復活、それを繰り返してとうとう新世代へバトンタッチ、ってパターンが多い。
けれどCB400SFは、発売当初こそライバルがたくさんいて、中にはカワサキZEPHYRなんてモンスターもいたけれど、次第にライバルがどんどん消えてしまって独走——ってパターン。
それにしても、人気の波が激しい400ccクラスのメインモデルを張って30年も生き続けるなんて。あと13年でSRのご長寿記録です!
その理由はもちろん、発売当時から完成度がすこぶる高かったこと。ルックスが人気で、性能がよく、400SFに乗っていることがステイタスだからだ。しかもモデルチェンジのたびごとに完成度が増していく。
高性能だからだけではなく、教習車両に使われ続けていることでもわかるように、初心者にだって扱いやすい。生まれて初めて普通二輪を買うユーザーが「教習所であんなに乗りやすかったあのバイクを」と指名買いするケースが多いのも納得できる。魅力的なモデルであり続けたからこそのロングタームヒットモデルなのだ。
目的と使い方を想定すると省燃費を追求すのは当たり前
CB400SFには、おそらく全年式に発売当時から乗りまくっているし、当初から群を抜いて完成度が高かったのを覚えている。カッコいいねぇ! エラい400ccが出たねぇ! と編集部のみんなで話した記憶もある。
いくら当時スゴかったって言っても現在の目で見るとねぇ……なんて評価軸も確かに存在する。けれど、400SFにそれは当てはまらない。きっと現在の私が、30年前の初期モデルに乗っても、スゴい400ccが発売されたなぁ、って驚愕すると思う。
400SF登場時の大人気モデルといえばカワサキZEPHYRだったけれど、その方向性はまるっきり違っていて、あれもいい、こっちもすごい、という感じ。そして30年が経って、400SFだけが生き残っている。これが現代の環境性能や市場の答えだ。
400SFは数々のマイナーチェンジを受けて生き続けてきた。中でも印象に残っているのは、現在の「ハイパーVTEC・Revo」ににつながったハイパーVTECモデル、それも03年に発表された、バージョンⅢ期だ。
ハイパーVTEC自体は、空冷CBR400F時代に採用された、低回転では2バルブ/高回転では4バルブに切り替える「REV」にある。その切り替えは回転域や、その時のスピード、スロットル開度を総合的に判断して行なわれるんだけれど、このバージョンⅢのハイパーVTECは「6速だけを独立させて切り替え」に変更。これは1〜5速よりも6速だけ高回転域まで2バルブで作動させるもの。ん?なんでわざわざそんな?と思ったら!
「高速道路を走っていて、6速100km/h+αまで2バルブのままだと、燃費が3km/Lくらい上がるんです」
はぁ、たった3km/Lねぇ……。
「この3km/Lで18Lタンクだと約54km。給油タイミングが、サービスエリアひとつ分、伸びるんですよ! テストで実証もしました!」
ここまで考えるか! 燃費を伸ばすだけじゃなくて、ツーリングの給油タイミング、サービスエリア間の距離まで! 400SFはスゴい!