文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年6月16日に公開されたものを転載しています。
2018年から限定販売がスタート
現在はピーラー・モビリティ(KTMグループ)の傘下にあるスペインの名門ガスガスですが、2015年には組み立てラインを閉鎖するなど、相当シビアな経営環境にありました。財政支援を求めたガスガスに救いの手を差し伸べたのは、第二次世界大戦後にフランスのテローのライセンス生産から2輪製造業をはじめたスペインのトロットでした。
トロットは1990年代に一度2輪製造業から撤退しましたが、2011年から電動車メーカーとしてブランドが復活。ガスガスの電動トライアルマシンである「TXE」にも、トロットの電動車造りのノウハウが注入されているわけです。
ガスガスTXEの特徴は、一般的な2輪EVには採用されることが少ないクラッチと6速ギアボックスを備えていることです。また電動モーターをアイドリングさせることで、ICE(内燃機関)搭載のトライアルマシンから乗り換えたときに、違和感を覚えさせないようにしています。TXEのトライアルEなどでの成功が影響したのか、近年では本格競技用電動トライアルマシンには、クラッチを与えることがトレンドとして定着しつつあります。
なお車体については、実績豊かなICEのトライアルマシンであるガスガスTXT用の多くを流用。トライアルマシンとしてのパフォーマンスを高めつつ、部品の共用化でコストを抑えています。車重はわずか68kg!! ICEの125ccクラスレベルの、トライアル競技の戦闘力を有しています。
今後はどのような発展を見せるのか・・・?
2019〜2020年も限定発売されたTXEですが、今のところ2021年モデルの販売についてはアナウンスされていません。2019年9月のピーラー・モビリティの発表では、合弁事業の一環としてガスガスとトロットの2輪EV生産はスペインのジローナで引き続き行う・・・と説明されていました。
一方ピーラー・モビリティ傘下ブランドのKTMは、フリーライドEやE-XCなどで10年以上2輪EVを開発・生産していた実績があります。またパートナー企業のインドのバジャジとともに、ピーラー・モビリティは大きなプロジェクトとして「電動バイク・プラットフォーム計画」を推し進めている最中にもあります。
今後も従来どおり、ピーラー・モビリティとガスガス&トロットは、それぞれ独自の2輪EVを開発・製造するのでしょうか? それとも将来的にはグループ内での統合を目指すのか・・・?
トライアル業界でのガスガスのブランドバリューや、トロットの電動車ビジネスが上手く行っていることを考えると、電動トライアルマシン開発は今までどおりの方法で続けるのが良いと思いますが・・・続報を待ちたいところです。
なおこちらの動画は、亀岡トライアルランド代表の森進太郎さんが、ガスガスTXEを紹介する内容です。電動トライアルマシンに興味ある人も、そうでない人? も、ぜひ国際A級のテクニックと、ガスガスTXEの走りっぷりを動画でチェックしてみてください!
ガスガス TXE 主要諸元 ※2018年型
モーター型式 水冷ブラシレス 最高出力 15kW コントローラー 空冷 10〜60V 360A バッテリー 3000mA 50.4/58.8V 36Ah クラッチ 油圧ダイヤフラム 変速機 6速
フレーム クローム・モリブデン鋼チューブラー スイングアーム アルミニウム合金 フロントフォーク 39mm径 180mmトラベル ショックアブソーバー プログレッシブリンク式 164mmトラベル タイヤサイズ 前 2.75-21 後 4.00-18 ブレーキ 前 185mmフローティングディスク 後150mm ディスク 乾燥重量 68kg 全長x全幅x全高 2,010x825x1,130mm ホイールベース 1,320mm シート高 660mm
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)