現在は2ストロークモデルを楽しむのは難しい時代だが、バイクの歴史を振り返るとその存在はとても大きい。輝かしい歴史を持つヤマハ製2ストロークにスポットを当ててみよう。この記事ではヤマハ発動機の製品第1号であるYA-1を紹介する。
ヤマハ「YA-1」の特徴・歴史
ヤマハ発動機の1号機、今もなお美しいスタイル
1955年4月に行われた道路交通法の改正は、日本のモーターサイクル業界に多大な影響を与えた。125cc以下の2輪車(=原付)は、免許よりも遥かに取得が容易な許可証で運転できることとなった。
日本楽器はこの道交法改正を睨んで、バイク業界への進出を決めており、バイク製造の社命を1953年11月に発していた。国産車は2~3速のギアボックスが当たり前だった時代に、YA-1はその水準を上回る4速ギアボックスを採用。この4速は後に175cc版を製作することを考慮し、十分な強度と精度が与えられていた。
1954年3月の開発開始から2カ月後には試作第一号が完成し、その10月には運輸省(当時)の型式認定取得という短期間の開発でYA-1は誕生した。初年度の1955年に2452台、翌1956年に4389台、そして最終年となる1957年には8804台を販売する大ヒットモデルとして成功をおさめている。
その高性能ぶりからレースでも活躍したYA-1は、その塗色にちなんで「赤とんぼ」の愛称で親しまれた。
ヤマハ「YA-1」主なスペック
全長×全幅×全高 | 1980×660×925mm |
ホイールベース | 1290mm |
車両重量 | 93.6kg(乾燥) |
エンジン形式 | 空冷2スト・ピストンバルブ単気筒 |
総排気量 | 123cc |
ボア×ストローク | 52.0×58.0mm |
圧縮比 | 6.0 |
最高出力 | 5.6PS/5000rpm |
最大トルク | 0.96kgf・m/3300rpm |
燃料供給方式 | キャブレター |
燃料タンク容量 | 9L |
変速機形式 | 常噛4速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 2.75-19・2.75-19 |
ブレーキ形式(前・後) | ドラム・ドラム |
当時価格 | 13万8000円 |
※この記事は月刊『オートバイ』2021年9月号別冊付録「RIDE」の特集から一部抜粋し、再構成して掲載しています。当特集のスタッフ 文:濱矢文夫、深澤誠人、宮崎健太郎/写真:小平寛、関野温、盛長幸夫、山口真利