ヤマハ「DT-1」誕生ヒストリー
オフロードバイクを変えた衝撃的なモデルの誕生
ヤマハDT-1は、後世のオフロードバイク界に多大な影響を与えたエポックメイキングなモデルだ。
アメリカ現地法人USヤマハの前身YICは、アメリカ市場向けのモデルとして、新しいオフロードバイクのビジョンを描いた。東部の林間部、西部のデザート地帯、さらにはモトクロスコースまでを走破できるオフロード性能を備えながらも、平日はナンバー付きの公道走行車として使える実用性を兼ね備えたモーターサイクルとは…。
それはつまり、今日のデュアルパーパスの原型となるアイデアだった。この案は日本のヤマハ本社に伝えられ、1966年にDT-1の開発が正式にスタートした。
YICの提案を具現化するために、100kgを切る車重(最大で105kgに抑える)という、常識破りの開発目標を設定した。エンジンは極力小さく収めるという狙いから、125ccのYA-6をベースに選択。排気量が倍になるためシリンダーから上は大きくなったが、クランクケースは125cc並のコンパクトさを実現。フレームにはヤマハ初のハイテンション鋼管を採用したダブルクレードルタイプを選択した。
初めてとなる本格量産オフロード車の開発ゆえ、開発陣は幾多の苦難を強いられたが、1967年、ついに生産試作車が完成。その年の秋のモーターショーで姿を現したDT-1は大反響を呼んだ。同年12月よりアメリカ市場に出荷された最初の8000台は、わずか2カ月で完売。月産2500台の工場生産のうち、約1500台分をDT-1に割り当てることで、ヤマハは3カ月分のバックオーダーに対応した。
1968年3月からいよいよ国内でも販売が始まり、アメリカと同様に日本のライダーたちもDT-1に魅せられて、その虜になったのである。
ヤマハ「DT-1」の主なスペック
全長×全幅×全高 | 2060×890×1130mm |
ホイールベース | 1360mm |
車両重量 | 112kg(乾燥) |
エンジン形式 | 空冷2スト・ピストンバルブ単気筒 |
総排気量 | 246cc |
ボア×ストローク | 70.0×64.0mm |
圧縮比 | 6.8 |
最高出力 | 13.6kW(18.5PS)/6000rpm |
最大トルク | 22.7N・m(2.32kgf・m)/5000rpm |
燃料供給方式 | キャブレター(VM26-SH) |
燃料タンク容量 | 9.5L |
変速機形式 | 常噛5速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 3.25-19・4.00-18 |
ブレーキ形式(前・後) | ドラム・ドラム |
当時価格 | 19万3000円 |
※この記事は月刊『オートバイ』2021年9月号別冊付録「RIDE」の特集から一部抜粋し、再構成して掲載しています。当特集のスタッフ 文:濱矢文夫、深澤誠人、宮崎健太郎/写真:小平寛、関野温、盛長幸夫、山口真利