今の周辺環境に合わせたアップデートで安全・安心に

テクニカルガレージRUNによる油冷、スズキGSX-R1100(J)。同店による「バージョンアップコンプリート」として手が入れられ、ショップデモ車両ともなっている。アルミ角型パイプによるフレームはブラックアルマイトして今後の劣化を抑え、各部は軽量化やタッチを含めた上質化、そして現代化が計られている。

つまり、油冷各車をこれから快適に乗るための見本と言って良いパッケージとなっているのだ。そもそも油冷モデルは初期GSX-R750からなら35年超え、1200系最終のバンディット1200からでも15年が経っている。

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「その年月が経った車両がどうなっているかを考えないと。バイクが特別というわけでなく、自動車でも家電でも、そんな年月が経ったものをそのまま使えますか? という話です。30年前の家電が新品であったとしても、そのまま通電して大丈夫か。使っていたものなら、なおさら。“ノーマルでも走れてますよ”という方もいるでしょうが、命を乗せて走る上で果たして安全か、安心なのかは疑問です。そこははっきり、辛めに考えてほしい。

少なくとも、今換えられるパートがあってアップデートできるならそれは使った方がいいです。タイヤやドライブチェーンといった消耗品もそうです。それに、これは油冷に強い先輩方もよく言ってきたと思いますが、シールやベアリング類がいい状態か。定期的に新品交換、給脂する。エンジンはいいオイルを使って定期交換、バルブクリアランス調整もする。

安全、安心という部分では、以下の部分の現代パーツへの交換。まずマスターシリンダーすべて。コントロール性も効力も高まります。リヤショックは間違いなく抜けていますから、交換。ここでグレードが上がれば、タイヤと合わせて安心感も乗り心地も高まります。ブレーキキャリパー、ディスクもそうですね。パッドは、古いと残量があってもベースから摩材が剥がれることもありますから、定評のあるものに。それからキャブレター。ここに挙げたものはいずれも新品があったとしても純正では力不足ですし、当時の状態を維持したいという以外では、わざわざ純正である必要は感じません。こうしたところが換わって、ようやく今乗るための普通の状態になると考えてほしいんです」。

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同店代表・杉本さんの言葉は確かに辛めだが、20年、30年ものの機械がどういうものかを考えれば納得できる。時間は確実に経過している。それをきちんと理解することだ。その上で、各部の劣化を抑えつつ、現代的な要素でアップデートしていく。

このGSX-R1100バージョンアップコンプリートは、旧車の域に入った油冷を正しく理解した上で、旧車に対する手間を考えても高い魅力を感じて楽しみたいという層に向けた、ひとつの解答でもあるのだ。

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Detailed Description 詳細説明

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TG-RUNによるバージョンアップコンプリートの手法を施したGSX-R1100。ベースは'88年型の“J”だ。ステアリングステム&トップブリッジはTG-RUNオリジナルで、カーボンモノコックミラーはマジカルレーシング製NK-1。左右マスターはブレンボへと、それぞれアップデートされる。

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燃料タンクは錆びない=今後の劣化の心配がない上に純正より大幅に軽い、TG-RUN×ビーター・アルミ製に変更。Sマークは現行車のものだ。

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外装カラーはGSX-R1100J純正パターンで、純正オプションのシングルシートカバーも装着。TG-RUNで重視するシートもオリジナル加工される。

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エンジンは「今ストリートで使うならGSX-R1100が発揮していた130psあたりのパワーが適度で乗りやすいし、十分」(杉本さん)と、1052ccノーマルのまま。カムシャフトのみヨシムラST-1に変更している。良いオイルを定期的に交換すること、タペット調整をすることも重要、とアドバイス。

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キャブレターはFCRφ37mm+RAM-AIRフィルターに換装し、経年摩耗から回復させた上でレスポンスを良くしている。四隅に補強=マルチリブ入り角材(MR-BOX)のアルミフレームはノーマルだが、表面を保護するためにブラックアルマイト処理を施してある。

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フロントフォークはオーリンズ製正立φ43mmで、フロントブレーキはブレンボ製4ピストンキャリパー+サンスターディスク。本文で説明された推奨箇所はGSX-R1100のみならず、他の油冷モデルにも共通した内容となっている。フロントフェンダーもカーボン製に変更される。

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リヤブレーキは、ブレンボ製2ピストンキャリパーをRUNオリジナルサポートでマウントしサンスターディスクと組み合わせる。

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リヤショックもオーリンズ製に変更。前後ホイールもマルケジーニ・アルミ鍛造のM7RS Genesiとして17インチ化(純正値:2.75-18/4.50-18→3.50-17/5.50-17)および軽量化した上で、今のスポーツタイヤ(ここではブリヂストンS22)を履き、路面からの情報を豊富にしている。スイングアームはアルミ製リブ入り角型のノーマルをフレーム同様にブラックアルマイト処理して、以後の表面劣化を予防している。

取材協力:テクニカルガレージRUN

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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