文:小松信夫
あの空冷2バルブシングルを受け継ぐ、現役モデルたち
速さではなくて扱いやすさや自然への影響の小ささを重視し、多くのライダーに親しまれてきたセロー。昨年、セロー250が生産終了となり、最終モデルとして用意されたファイナルエディションが人気になったのは記憶に新しいんですがぁ!
実は今もアメリカ向けとか、「セロー250」と非常に良く似たXT250とゆーモデルが、堂々と売られてますな。2022年モデルまで出てるしね。「これはセローじゃなく、あくまでXTなのだ」ということなんですか? なーんて意地の悪いことはいいません。巷間言われているように、日本国内では法規によってABSが義務化されたから、ABS仕様が用意できないセロー250の販売が終わっただけ。そのまんま売れる国では売るよねそりゃ。車名もよく考えれば、以前セロー250のモタード版みたいなXT250Xってのを国内でも売ってしなぁ。その昔、そのまんまXT250ってのも国内で売ってたけど、そっちは直接の関係はないか。
北米向けのXT250とセロー250ファイナルを見比べると、当たり前ですがメカニズムはほとんど同じですわね。カラーリングや細部の仕上げ、諸元上の差は置いといて、目立つのはヘッドライト周りとテールランプ周りが違うことくらい。
XTは2018年以前の折れ曲がったリアフェンダーのセローがベースになってるのね。
さらにセローはリアホイールにフランジリムを使って、スポークホイールなのにチューブレスにしてるけど。
こちらXTは普通のリムだから、チューブタイヤを履いてるようで。チューブの方が修理やメンテがしやすいという、アメリカのユーザーの声を汲み取った質実な選択なんでしょうか。あとリム自体もセローは軽量なアルミ製だけど、チューブレス化もしてないXTだから、少々重くても頑丈さ重視で鉄リムでしょう(これは憶測)。
とはいえ、違いはそれくらい。日本の林道で愛されたセロー250=XT250のオフロードでの基本的な扱いやすさは、雄大な大自然の中を走るアメリカンなオフロードライダーたちからも今だに評価されてるってことなんでしょうかね。
世界は広くてですね、セロー250やXT250をそのまま売るんじゃなく、あの粘り強くて頑丈な250cc2バルブ空冷シングルを搭載した、使い勝手の良いデュアルパーパスモデルが他にも存在しておりました。それが南米大陸のアルゼンチンやブラジルなどで売られてる、XTZ250シリーズでございます。
こちらがXTZ250A、というかこの写真はブラジル仕様なのでランダー250と言うべきか。おとなしいスタイルのセローから一転、クチバシ状のフロントフェンダーとか、全体に割とモダンなスタイリング。しかし、クチバシとは別にダウンフェンダーを備え、やや舗装路向けの性格らしいタイヤや足つきを考慮したと思われる形状のシートなど、どちらかといえば街乗りを意識した(?)モデルのようで。152kgとXTよりちょっと重いのは玉に瑕。燃料タンクが14Lもあって航続距離が長いし、アドベンチャーツアラー的に使われてるのかも。
一方、こっちはアルゼンチンではXTZ250Aと併売されてる、無印のXTZ250。ある意味、セローの異母兄弟的なモデル。足回りも似た感じだしね。こちらは無味無臭な、いかにもオフロードモデルっぽいシンプルなスタイル。タイヤもオフ向けで燃料タンクもコンパクト(でも11Lも入る)で、オフロード走行重視らしい。ただしエンジンをはじめ、極めてオーソドックスな造りのフレームやサスペンションは基本的にAと同じ。Aよりは軽いけど、やっぱりXTよりは重い。
そのフレームにしても、トップチューブがエンジンに近い位置を通っているセロー独特なものとは完全に別物の、オフロードモデルによくある一般的なフレーム形状になってるのが大きな違い。セローのフレームは結構凝ってるから、生産工程に手間がかかるんだろうね。当然、お値段にも響いてくるから、フレームが別のモデルを開発した、ということでしょう多分。でも機能的には必要にして十分なんだろうな、日本でもコレ売ればいいのに…確かランダーにはABS仕様あるし! でも、セロー人気が強烈すぎて売れないか。
あと、セローとの関連とか全く関係ない余談ですけど、ちょっと気になったことが。無印の方のXTZ250の、現在アルゼンチンで売ってるモデルのボディカラーなんですがね。この青いのはヤマハカラー。
で、このブラックはちょっと置いといてですね。
こちらのホワイトをベースに、青いグラフィックを組み合わせたの、なんかどっかで見た様な気がしませんか? 10年くらい前のどっかのモタードがこんなだったかな?
で、トドメはこれ、レッドなんですけど。さらに強烈な既視感に襲われます。これも昔、どっかで見たようなデザイン。グラフィックの色使いとか。音叉マークに違和感を感じちゃう。 もう、ここまできたら、ブラックじゃなくてグリーンを用意すれば全部揃う(何が?)のに、と思ったり思わなかったり。
文:小松信夫