文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:柴田直行
ハーレーダビッドソン「スポーツスター S」インプレ・解説(宮崎敬一郎)
日本でも大ヒットの予感! 次世代スポーツスター
スポーツスターSは、パンアメリカ用と同系列の水冷ハイパワーエンジン「レボリューション・マックスT」を搭載している。車体デザインはマッチョな圧縮感のあるもので、これまでのスポーツスターファミリー、フォーティエイトばりの太いタイヤを履き、太いパイプのアップマフラーを備える。
車格はそんなに大きくないが、そのワイルドさと威圧感は強烈。大型モデルすら圧倒する迫力だ。このバイクに伝統ある「スポーツスター」を名乗らせたあたりに、このモデルに賭けるハーレーの意気込みを感じる。
ハーレーにしてみれば大冒険だ。従来の空冷モデルはアイアン、フォーティエイトがクルーザーファミリーにラインアップされるが、コイツは「スポーツ」として世に出た新世代モデル。半端はできない。
実際に走ってみると、とにかく何もかもが従来のスポーツスターのイメージからかけ離れている。あるいは、ハーレーという大屋根の下からも飛び出しているかもしれない。
従来のXL883系であれ1200系であれ、かつてのスポーツスターは、大型モデルたちに比べると軽く回る空冷のVツインエンジンを持ち、パルスの息吹こそ弱かったが、排気量の割には低回転域から粘っこく回り、それを乗り手に体感させる排気音も奏でた。
ただ、高回転では騒々しく、現代の水準では非力。スポーツしようとペースを上げると、簡単にサイレンサーを擦る…そんなバイクだった。単に「スポーツ」の概念が今のものではないからだが、むしろその「味わい」がファンを惹き付けてきた。
パワフルでカッチリした新世代モデルらしい走り
しかし、この「S」にはそんなノスタルジックな表情は微塵もない。エンジンはスゴい味付けだ。パワーモードの「スポーツ」は5500〜8600回転のパワーバンドをハッキリと強調していて勇ましい。あえて「スポーツ」をアピールするための味付けとも感じられる特性だ。
実際、その力量もクルーザーのレベルからかけ離れている。トルク型を意味する「T」の名前がついているとはいえ、実に150馬力ほどのパワーを備え、重めの車体を砲弾のように加速させる。ちょっと3000回転あたりに少しトルクの谷があるものの、扱いやすく、下から上まで、英国のバーチカルツインより軽く、素早く回る。
「ロード」モードになると、エンジンの応答は街中で気楽に、ラフに扱えるレベルまでマイルドになる。パワーバンドへの繋がりも紳士的。そして「スポーツ」より低回転域で粘るようなフィーリングも加味される。「レイン」モードは普通に使うには吹けの勢いもピックアップもかなりマイルドだ。
車高が低いので、その分、サスストロークは少なめ。大きな凸凹を乗り越えるのは苦手だが、丈夫なフレームと相まって、その分ハンドリングはカッチリしている。まるで大型のネイキッドのようだ。軽快、とまではいかないが、応答は素直で自然に曲がり、切り返しもダイレクト。ブレーキはハーレー中最強の制動力を発揮するし、許容リーンアングルはストリートスポーツなみに深くなった。
このスポーツスターSなら、ハーレービギナーのみならず、ビッグバイクビギナーであろうと、重さと、パワフルだということを除けば、スポーティなクルーザーとしてすんなり身体に馴染むハズだ。
新型のスポーツスターSは、従来のスポーツスターとは違う次元の新しい乗り物。伝統を受け継ぐ名前こそついてはいるが、スゴくカッコよく、元気のいい、魅力にあふれた新たなスポーツクルーザーだ。
ハーレーダビッドソン「スポーツスター S」カラーバリエーション
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ミッドナイトクリムゾン
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