2021年型でモデルチェンジされたホンダ「X-ADV」。日常の足として、軽二輪クラスのADV150に乗っている伊藤さんですが、新型X-ADVの走りっぷりに感心しきりな様子でした。
談:伊藤真一/まとめ:宮﨑 健太郎/写真:松川 忍/ モデル:Ruriko
画像2: ホンダ「X-ADV」インプレ(談・伊藤真一)

フラッグシップのCBR1000RR-Rよりスゴイ!? X-ADVの絶妙な電子制御技術!

新型の操縦安定性や走りのフィーリングは、これはよくぞここまで作り上げた! と非常に感心しました。サスペンション自体は、スーパースポーツのようなハイグレードのものを使っているわけではありませんが、吸収とダンピングですごく良い仕事をしている、という感触です。

新型X-ADVは電子制御の電スロ(スロットルバイワイヤ)を採用していますが、電スロ採用の初作はまとめ上げるのが非常に難しいです。その点で新型X-ADVは、実に上手くまとめ上げたな、と思いました。自分はCBR1000RR-Rの開発に関わりましたが、X-ADVはRR-Rよりも難しいと思いますよ。小径リアタイヤですし、オンロードもオフロードも走るわけですから。

X-ADVは15インチ小径リアタイヤで、荒れた路面のオフロードでもちゃんとブレーキを握れるABSや、機能するトラコン(ホンダセレクタブルトルクコントロール)を実装しています。電子制御で一番難しいのは、制御が入ってから「復帰」するときです。トラコンの場合、まず後輪がスリップして制御が入りますが、止めるのではなくて、グリップさせてちゃんと加速させることが大事です。

一般にリアタイヤ外周の周長が長い方が「鈍感」ですが、リーンさせると接地している箇所の周長は変化します。だからリーンアングル、垂直G、加速Gなどいろいろな要素をセンサーで拾って計算するのですが、X-ADVは15インチリアタイヤで、オフロードなどの低ミュー路で機能させているのがすごいです。復帰が遅れることなく、まるで予測型のトラコンみたいだな、と感心しました。

X-ADVはMT仕様の設定がなく、変速機はDCTのみを採用しているのも特徴です。MTとDCT、両方の設定があるモデルの場合、自分はMTを基本的には選びますが、X-ADVについてはMTがなくても良い…と言うか、DCTであることを意識させないですね。そういう味付けなのか、X-ADVはこれで良いよね、と自然に思わせる感じです。

新型X-ADVのDCTを体験すると、電スロとDCTの組み合わせはとても合っていると思いました。ワイヤー引きのスロットルよりも、電スロの方がより細かくDCTを制御することができます。採用初期のDCTは、このタイミングで変速する? という違和感を覚えることもありましたが、それら採用初期のDCTと新型X-ADVのDCTの仕上がりは雲泥の差で、比較対象にもならないです。

画像3: ホンダ「X-ADV」インプレ(談・伊藤真一)

左手リアブレーキレバーと、DCTのコンビは最高! でも、あえて他機種には採用しない理由が?

テスト中はスポーツモードを好んで選びましたが、高速道路では100km/hくらいで5速になってしまいます。ちょっと回転を落として6速で走りたいときは、手元のスイッチでシフトアップすれば、スポーツモードのスロットルレスポンスの良さを楽しみながら、6速で走れます。スタンダードモードでも過不足なく走れますが、自分の感覚にはスポーツモードが合ってましたね。

それから、長年ロードレースをしていたクセで、リアブレーキを引きずってスロットルを開けたりするのですが、それが優秀なX-ADVのトラコンの作用を阻害するときがありました。ロードレーサーの場合、そういう操作するとトラコンが切れたりしますが、公道用モデルの場合は電制と手動で、一緒にやっちゃいけないことがあるなと思いました。

これは旧型でも思ったことなんですが、X-ADVは左手のレバーでリアブレーキ操作できるのが良いですね。ただ、フロントダブルウィッシュボーンのゴールドウイングでやるときように、フロントブレーキで速度をコントロールした方が、新型X-ADVはUターンしやすいんだな、と思いました。以前から、アフリカツインのDCTモデルに乗ると、左手リアブレーキレバーを採用したら良いのに…と思ってましたが、テスト屋さんたちがとことん色んなことを試しているホンダが、あえてDCT車に左手リアブレーキレバーを採用しないのは、理由があるのかもしれないですね。

画像4: ホンダ「X-ADV」インプレ(談・伊藤真一)

旧型の試乗後は、とても出来が良くて感心するものの「欲しい!」とまでは思いませんでした。でも新型X-ADVは、ついつい撮影移動の休憩中に、販売店に電話して納期を問い合わせてしまいました(笑)。今、個人的な欲しいホンダ車ランキングでは、アフリカツインのアドベンチャースポーツとレブル1100が2強ですが、新型X-ADVは普段使いには一番でしょうね。

アフリカツインは大きくて重たく、背も高いから気軽に使う…という感じではないですよね。そしてレブル1100はライディングポジション的にも、積極的に長距離走ろうとは思わないです。そう考えると、新型X-ADVはちょうど中間で具合が良いモデルが出てきたな…と思いました。同じプラットフォームのNCシリーズと比べると新型X-ADVの価格は高く感じてしまう人も多いでしょうが、その仕上がりには高級感があり、性能的にも機能的にも素晴らしく高次元でまとめられていますから、価格に見合った1台だと思います。

オフロードでもブレーキをしっかりかけられるABS!

画像2: ホンダ「X-ADV」インプレ|大幅に進化した2021年型を高速道路&オフロードで徹底テスト【伊藤真一のロングラン研究所】

「新型のライディングモードは、スポーツ、スタンダード、レイン、ユーザー、そして新たにグラベルが加わりましたが、ABSの設定が絶妙ですね。X-ADVのタイヤは、一般的なオフロード車よりかなり小径ですが、低ミュー路でも安心してブレーキをかけることができます」と伊藤さんはその仕上がりを絶賛していた。

画像3: ホンダ「X-ADV」インプレ|大幅に進化した2021年型を高速道路&オフロードで徹底テスト【伊藤真一のロングラン研究所】

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