文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年12月15日に公開されたものを転載しています。
世界モトクロスGPやAMAスーパクロスで活躍したS.トーテリが、開発に協力!!
スタルク・フューチャーは2019年設立のスウェーデンにルーツを持つ多国籍企業で、本拠地はスペイン・バルセロナ界隈にあります。オフロード業界はおろか、2輪業界でもまったく無名だったこのスタートアップは、2年前からスタルク・ヴォルグ(スウェーデン後で「強い狼」の意味)という電動モトクロッサーを開発。2度世界モトクロスGP王者に輝き、AMAスーパークロスでも活躍したセバスチャン・トーテリが、開発ライダーを担当しています。
スタルク・ヴォルグのスペックで最も注目されるのは、その「パワー」でしょう。現在のレギュレーションで最強クラスである4ストローク450cc単気筒のモトクロッサーが、最高出力60馬力くらいであるのに対し、スタルク・ヴォルグは約30%アップの80馬力! そして450cc車比で2倍以上の後輪トルクを発生する・・・と主張しています。
果たしてモトクロッサーに80馬力という大パワーが必要なのか? と思う人も多いでしょうが、電動ならではのメリットでスタルク・ヴォルグは出力を自由にユーザーが設定することが可能であり、車体側にも固定可能な、スマホのアプリの操作によってパワーカーブ、エンジンブレーキ、トラクションコントロール、仮想フライホイールウェイトを好みに応じて調整し、最大100のライディングモードを作成することができます。つまり技量や好みに応じて、2ストローク125cc的な特性も、4ストローク450cc的な特性も、この1台で楽しめるというわけです。
標準仕様の価格は11,900ドル≒135万4,900円!
2輪EVで最も不安材料視される航続距離ですが、スタルク・ヴォルグはシリアスなモトクロス走行で最大40分、フリーライド的なリラックスしたレクリエーション走行では最大6時間の走行が可能と公表されています。そして充電方法にもよりますが、バッテリーは最短1〜2時間でフル充電することが可能。バッテリーの最大の敵である「熱」に対しては、空冷式ながら高い冷却効率で対処。車体全体の軽量・コンパクト化に寄与しています。
スタルク・フューチャーのCEO兼共同創設者であるアントン・ワスは、オフロード業界の「停滞感」を理由に電動のスタルク・ヴォルグを開発した・・・という趣旨のコメントをしています。欧州ではICE車が環境に与えるダメージなどを理由に、近年多くのオフロードコースが閉鎖の憂き目にあっていますが、この負の流れを止めるためには電動化はひとつの方策であると、スタルク・フューチャーは考える企業のひとつです。
ICE車が走れる場所が減っている・・・ということを深刻に考えて、電動バイクを開発するメーカーにはスウェーデンのケーキがありますが、スタルク・フューチャーのスタルク・ヴォルグ開発動機からは、日本に比べると欧州ではよりシリアスに環境問題が憂慮されている状況にあることがうかがえます。
なお2023年型として、2022年秋にリリース予定のスタルク・ヴォルグは、スタンダード(60馬力)が11,900ドル≒135万4,900円という価格設定がされています。100万円ちょっと、という日本製4ストローク450ccモトクロッサーの価格に対しても、十分に対抗できる戦略的なプライスタグで、電動モトクロッサーに興味がある人には魅力的に思えるのではないでしょうか? そしてアルファ(80馬力)はプラス1,000ドル・・・となっています。なお注文には、100ドルのデポジットが必要です。
世界で最も速く、最もスリリングなモトクロスバイクを作ることでモーターサイクル業界の持続可能性に挑戦し、インスピレーションを与えること。2つの車輪の上で究極の感動を提供すること。電気技術がガソリンより優れていることを証明すること。 私たちはモーターサイクルの未来を形作るために、テクノロジーの限界に挑戦しています。従来の技術を凌駕する電動バイクを作ることで、世界にサステナビリティへのインスピレーションを与えていきます。 私たちのバイクは、乗りやすく、メンテナンスが少なくて済み、近所の人に迷惑をかけずにどこでも乗れ、従来のガソリンエンジンのバイクよりも高い性能を持っています。
ICEV車よりも優れた2輪EVが存在し得ることを、モトクロッサーのカテゴリーで具現化したと自負するスタルク・フューチャーの自信作、スタルク・ヴォルグの実力を早く確認したいですね。日本への導入を、楽しみに待ちたいです!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)