男女混成チームで、オフロードタイプの2輪EVを使って競う新しいイベント「FIM E-エクスプローラー ワールドカップ」。このイベントに、日本のM-TEC(無限)がオフィシャルマニュファクチャラーに登録され、主催者に対して技術的アドバイスをすることになりました。1973年の創業以来、さまざまな2&4モータースポーツで数々の成功をおさめてきた同社の、E-エクスプローラーへの貢献に期待したいです!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年1月19日に公開されたものを転載しています。

オフロードの世界で実績を積み上げてきた無限!!

1973年にホンダシビック用をベースとするFJ1300エンジン開発を皮切りに操業をはじめた無限(現M-TEC)は、その後周知のとおり、F1、F3000、フォーミュラ・ニッポン、SF(スーパーフォーミュラ)、GT選手権などの4輪モータースポーツの分野で幾多の成功を手中におさめています。

2輪モータースポーツに関しては、1976年2月にモトクロス市場への進出を発表。ホンダCR125/250用のチューニングキットを販売し、そして無限ブランドの市販レーサー、ME125、ME250の販売も開始しました。

画像: 1977年、無限(現M-TEC)はモトクロス用のチューニングキット、そして自社ブランドの市販レーサーを販売し、国内外で話題になりました。 www.mugen-power.com

1977年、無限(現M-TEC)はモトクロス用のチューニングキット、そして自社ブランドの市販レーサーを販売し、国内外で話題になりました。

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無限は1976〜1992年の間、全日本モトクロス選手権に参戦し、水冷化やアルミフレーム採用など、意欲的に新技術を盛り込んだマシンを実戦投入し、多くのモトクロスファンの注目を集めました。

画像: 1980年、水冷機構を採用した無限ME125W1。若き日のジョニー・オマラのライディングにより、世界選手権アメリカGPで優勝という偉業を達成。なんと無限は、このME125W1を3,995ドル(当時のレートで約90万7,000円)で市販。当時の同クラス市販モトクロッサーより3倍強も高価なマシンであり、アメリカでは5台が販売されたと言われています。 www.mugen-power.com

1980年、水冷機構を採用した無限ME125W1。若き日のジョニー・オマラのライディングにより、世界選手権アメリカGPで優勝という偉業を達成。なんと無限は、このME125W1を3,995ドル(当時のレートで約90万7,000円)で市販。当時の同クラス市販モトクロッサーより3倍強も高価なマシンであり、アメリカでは5台が販売されたと言われています。

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マン島で培った電動技術を活かし、電動モトクロッサーを開発!

2012年からは、マン島TTで行われていたゼロ・エミッション車によるクラス「TTゼロ」に電動ロードレーサーの"神電"で参戦を開始。3年目の2014年に、ジョン・マクギネスとブルース・アンスティによる1-2フィニッシュ達成で悲願の初優勝を記録! その後2019年大会まで6連覇を成し遂げるなど、TTゼロで圧倒的強さを披露しています。

画像: 2014年型「神電 参」。2019年の秋、「神電」の独壇場となったTTゼロは2020年、2021年は開催しない・・・ことが発表され、その間の各チームの開発が進むことで、再開時のエントリー台数が増えることを期待しての"モラトリアム"期間に当てることになりました。その後、世界的なパンデミックの影響で、マン島TTの開催自体が中止されることになった・・・のは既報のとおりです。復活開催が予定されている2022年5月28日〜6月11日の大会カレンダーにも、TTゼロは載ることがありませんでしたが、2023年以降はどうなるのか・・・注目です。 en.wikipedia.org

2014年型「神電 参」。2019年の秋、「神電」の独壇場となったTTゼロは2020年、2021年は開催しない・・・ことが発表され、その間の各チームの開発が進むことで、再開時のエントリー台数が増えることを期待しての"モラトリアム"期間に当てることになりました。その後、世界的なパンデミックの影響で、マン島TTの開催自体が中止されることになった・・・のは既報のとおりです。復活開催が予定されている2022年5月28日〜6月11日の大会カレンダーにも、TTゼロは載ることがありませんでしたが、2023年以降はどうなるのか・・・注目です。

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「神電」で鍛え上げた電動技術を活用して、モトクロスのジャンル用の電動車・・・「E.REX」をM-TECが開発していることが公になったのは、2017年の東京モーターサイクルショーでした。そして2019年の同ショーに、再びE.REXは登場。コンセプトモデル然とした2017年版よりも完成度を向上させた2019年版の仕上がりは、モトクロスファン以外の層の人からも注目されることになりました。

画像: 2019年の東京モーターサイクルショーに展示されたE.REX。ホンダと共同で開発されているこのプロトタイプの心臓部には、「神電」開発で得た技術を応用した水冷モーターを搭載しています。 www.autoby.jp

2019年の東京モーターサイクルショーに展示されたE.REX。ホンダと共同で開発されているこのプロトタイプの心臓部には、「神電」開発で得た技術を応用した水冷モーターを搭載しています。

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2021年の6月には、宮城県のスポーツランドSUGOで開催された「D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ第4戦」で、E.REXはデモ走行を実施。(当然ながら)排気系からの轟音を奏でることなく、静かにスムーズに走るその姿を、多くの観衆に披露して話題となりました。

画像: 【無限 電動モトクロッサー】 ‐ E.REX ‐ スポーツランド菅生 デモラン走行映像!! www.youtube.com

【無限 電動モトクロッサー】 ‐ E.REX ‐ スポーツランド菅生 デモラン走行映像!!

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FIM E-エクスプローラーへの、日本勢の貢献が増えることを期待しましょう!

FIM(国際モーターサイクリズム連盟)が2022年度から世界各地で5レース開催する「FIM E-エクスプローラー ワールドカップ」はMotoGPと併催されている電動ロードレースによるシリーズ戦「FIM エネル MotoE ワールドカップ」と異なり、1種類のマシンを使うワンメイク方式を採用しない・・・ことを明らかにしています。

FIMはE-エクスプローラーが、「電動バイク開発のための実験場」となることを期待しており、多くのメーカーに対してその門戸を開いています。そんなFIMの"呼びかけ"に応えるかたちで、M-TECのマニュファクチャラー登録が決まったわけです。

過去記事では願望を込めて、"日本もホンダや無限などが電動モトクロッサーを開発していることは多くのオフロードファンの知るところですが、近い将来に「FIM E-エクスプローラー ワールドカップ」に日本勢が参加して活躍することを、大いに期待したいですね。"と記しましたが、この度のM-TECのマニュファクチャラー登録の報は、日本のモータースポーツファンのひとりとしてはとても嬉しいことです。

「M-TECは"FIM E-エクスプローラー ワールドカップ"のオフィシャルマニュファクチャラーとして登録されたことを大変うれしく思います」と株式会社M-TECの取締役 勝間田 聡は述べています。続けて「マン島TTゼロクラス(EVバイククラス)への参戦や、EV-MX(※電動モトクロッサー)E.REXの開発の継続で培ったノウハウを活かし、さらなる挑戦をする最高のレースとなると確信しています」と述べています。
「まずはオフィシャルマニュファクチャラーとして、今年から始まるFIM E-エクスプローラー ワールドカップという先進的で素晴らしいイベントに協力し、技術面、スポーツ面での現在のノウハウを生かして、イベントの成功、発展につなげたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします」

今のところ、初年度の開催5レースの"舞台"については、スイスとアメリカという名前以外は具体的なことは発表されていませんが、M-TECがオフィシャルマニュファクチャラーとなったことによって、日本でのE-エクスプローラーの開催も検討されるようになったら嬉しいですね! そのうち、スケジュールと開催地は明らかになると思いますが・・・楽しみにその発表を待ちましょう!

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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