現代4スト750クラスオーバー的なトルク感と吹け上がり
1983年の世界GP500クラスチャンピオンを獲得したホンダNS500。そのレプリカとして登場した2ストロークV3エンジンモデルがNS400R。この車両は30年近く保管されていたものをフオリセリエで再生、かつ同店独自のボルテックスチューン(ディンプル加工により混合気の流れを効率化する)を施すなどの手が入ったものだ。
「動かそうとした時の走行距離は3000km弱でしたが、まったく動かされていなかったので固着や劣化部分を解消することから始めました。ボルテックスチューンは既に、同じNS400Rで手を入れた“1号機”がありましたが、そちらはキャブレターのみに施した“ライトプラン”でした。今回はシリンダーにも施す“プレミアムプラン”でしたので、吸気の流れを確認した上でスムーズ化し、吸気通路に合う形状でディンプルを加えています」と、フオリセリエ・島村さん。
ディンプルは機種(シリンダー)ごとに配列や大きさを変えて施され、充填効率が高められる加工。キャブレターは口径を大きくするためにNSR250R用を3気筒分用意した上で、そのディンプル加工(これは前述の1号機に同じ)を施して換装した。
一方で車体側はリヤに180サイズ・ワイドタイヤを履くことなどがテーマとなった。前後17インチ化は1号機のノウハウによって、CBR600RR用を主に構築したが、JL製右3本出しチャンバー装着と組み合わせた際のクリアランス確保に苦労する。これはギリギリでクリア。
ライトプランの1号機でも軽い始動やスロットル開け始めからの厚いトルクが好印象だったが、シリンダー側加工を加えたプレミアムプランで、その印象はより強まったようだ。さながら現代の4ストミドル(800-900cc)クラスマルチのといったトルク感で、車体はNSそのままの軽さ(ちなみにノーマルの乾燥重量は163kg)。現代的17インチの足まわりとも相まって、軽快で気軽に現代のストリートを走ってしまえる作り。それはまさにボルテックスチューンの恩恵だろう。
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Detailed Description 詳細説明
ミラーはマジカルレーシング、ハンドルはセパレートアップ、スクリーンはMRAスモークと、全体にアップデートされた車両の雰囲気も持つ。
メーターはノーマルの3連・針式からフルカラー液晶ワンディスプレイのオールインワン多機能デジタルへと変更。現代的な雰囲気を作り出している。
各部パーツはオーナーの持ち込んだものを軸にしながら、必要な部分を追加。外装は車両に付いていた純正だが、当時の塗装を可能な限り残しつつ、褪色していた部分を再塗装して当時の新車的な雰囲気にした。シートも張り替え(ステッチはオーナー指定のシルバー)済み。
前2/後ろ1の90度V型3気筒の387ccピストンリードバルブエンジンは腰上を全バラ、シリンダーとピストンをWPC処理してピストンリングをリケン製新品に。シリンダーは吸気の流れがスムーズになるように整えた上で吸気側にボルテックスチューン。外観は耐熱塗装。キャブレターはNSR250R用を3気筒分用意してボルテックスチューンした上でセット。大径化しながら低速も充実する仕様になる。
フレームは走行距離の少なさで劣化も少なかったため、クリーンアップのみで済ませる。リヤショックは他機種用のナイトロンを再調整して使用する。
元の16/17インチホイール、リヤ110幅タイヤから前後17インチ&リヤ180化。5本スポークのホイールはオーナーが持ち込んだマルケジーニ・マグで3.50-17/5.50-17サイズ、フロントフォークやブレーキまわりはステム打ち替えでCBR600RRを流用。ブレーキディスクはペータルタイプへと変更。
角型のアルミスイングアームはNSR250R(MC18)で、リンクプレートを製作して装着される。ドライブチェーンはエヌマThreeDで530→520サイズとした上でフロントスプロケットをX.A.Mで製作。このように、エンジンのみならず車体の細かな部分にまで手が入るのだ。
右3本出しのJL製GPスタイルステンレスチャンバーを装着するが、スイングアームのクリアランスも確保される。ステップは他機種用を同店で加工装着した。