ヤマハ「YZF-R7」の開発チームに話をうかがった。「ちょうどいいスーパースポーツ」というコンセプトはどのようにして生まれ、どう練り上げられていったのか。そこには彼らの熱い想いがあった。
文:オートバイ編集部/写真:南 孝幸
画像: YAMAHA YZF-R7 総排気量:688cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 シート高:835mm 車両重量:188kg 税込価格:99万9900円 発売日:2022年2月14日(月)

YAMAHA YZF-R7

総排気量:688cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:835mm
車両重量:188kg

税込価格:99万9900円
発売日:2022年2月14日(月)

【開発者インタビュー】ヤマハ「YZF-R7」

画像: 【写真左から】 エンジン設計:中川利正 氏ヤマハ発動機株式会社 パワートレイン開発統括部 第2PT開発部 プロジェクトリーダー:今村充利 氏 ヤマハ発動機株式会社 PF車両開発統括部 SV開発部 デザイナー:木下保宏 氏 ヤマハ発動機株式会社 クリエイティブ本部 プランニングデザイン部 商品企画:兎田潤一 氏 ヤマハ発動機株式会社 MC事業本部 グローバルブランディング統括部

【写真左から】
エンジン設計:中川利正 氏ヤマハ発動機株式会社 パワートレイン開発統括部 第2PT開発部
プロジェクトリーダー:今村充利 氏 ヤマハ発動機株式会社 PF車両開発統括部 SV開発部
デザイナー:木下保宏 氏 ヤマハ発動機株式会社 クリエイティブ本部 プランニングデザイン部
商品企画:兎田潤一 氏 ヤマハ発動機株式会社 MC事業本部 グローバルブランディング統括部

純粋にライディングを楽しめる「身近な存在」

「アメリカで、MT-07にカウルを付けて草レースを楽しむムーブメントがありまして、それがYZF-R7の商品企画のきっかけになりました。ヤマハでも調査をして、これは面白そうだ、ということで開発がスタートしました。2017年ごろのことです」

YZF-R7開発のきっかけを語るのは、プロジェクトリーダーの今村さん。初代MT-07の頃から、カウル付きモデルへの要望は各国からあったようで、R7が誕生するきっかけも前々から芽吹いていたようだ。

そんなR7の開発コンセプトは「Fun master of Supersports」。R1R6が「トラックでの走りを極める」モデルだとしたら、R7は「楽しさを極める」モデル。「かっこよくて、ちょうどいい」スーパースポーツを目指したそうだ。

その「ちょうどいい」とはどういうことなのか、今村さんに尋ねてみた。

「ちょうどいい、という言葉で表現していますが、具体的には『扱い切れる喜び』に主眼を置いています。安心してアクセルを開けられ、峠道が爽快だったり、時にはサーキットに挑戦してみたくなるようなスポーツバイクを目指して造り込みました。誰が見てもカッコいい、というのも大事な要素です」

そんな「カッコいい」フォルムを創り出したのが、デザイナーの木下さん。聞けば、ストリップ状態のマシンを1カ月近く眺めながら「どうしたらカッコいいものが創れるか」考え抜いたのだそうだ。

▲R7のストリップ状態。デザイナーの木下さんはこれを毎日眺めて案を練ったという。

「こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、本当に楽しくて、仕事というより趣味のような感覚でした(笑)」

そんな木下さんがたどり着いたデザインコンセプトが「スキニープロポーション」。空力を意識したフルカウルでありながら、妥協なくスリムに造り込んだそうだ。

そんなR7の大きな特徴が、M字ダクトにビルトインされたヘッドライト。このデザインには相当苦労したようだ。

「はじめはダクト内にライトを入れたくなくて、色々悩みましたが、スケッチを重ねるうちに、段々カッコよく見えてきまして…(笑)。あとは『新しい時代のRシリーズ』の顔を造りたい、という気持ちもありました」

画像: ▲「スキニープロポーション」のイメージスケッチ。極力コンパクトでスリムなことを目指した。

▲「スキニープロポーション」のイメージスケッチ。極力コンパクトでスリムなことを目指した。

こうした苦労の末に生まれたデザインに合わせて、開発チームは車体をスリムに造り込む努力を重ねることになる。今村さんがその時のことを振り返ってくれた。

「デザインを見て、もうコレだ、となりまして。それをできるだけカタチにできるよう、とことん造り込んでいきました」

お話を伺っていて感じたのは、開発メンバーの皆さんが楽しみながら開発をしているということ。「苦労もありましたが、楽しかったですね」と今村さんも教えてくれた。

最後に、そんな開発チームの皆さんからメッセージをいただいた。

「ちょうどいい、というコンセプトは妥協ではなく、乗り手に真摯に向き合えることだと思っています。バイクと一緒に成長していく感覚を、ヤマハのバイクの中で一番楽しめるのがR7だと思っています」(兎田さん)

「同じエンジンでも車体とのマッチングでこれだけ違うのか、と驚いていただける仕上がりになっています。楽しんで下さい」(中川さん)

「ツナギはあるけどトランポはない。ライセンスはないけどヒザなら擦れる。若者だけでなく、そんなオジサンにもぜひ楽しんでいただきたいです。個人的にはリアクオーターから眺める、えぐれるようなプロポーションを見ていただきたいです」(木下さん)

「リターンライダーがいったん戻る場所としても、R7は手の届くところにあるバイクだと思いますし、これからバイクを楽しもう、という若者にも一番近くにあるスポーツバイクだと思っています。正面から眺めた時の、上質さが凝縮したようなコンパクト感にも注目して下さい」(今村さん)

誰もが楽しめるスポーツバイクを追求して誕生したR7が、Rシリーズの新たなる扉を開く。

画像: 【動画】Yamaha R7 - Where R/World Meets Yours www.youtube.com

【動画】Yamaha R7 - Where R/World Meets Yours

www.youtube.com

文:オートバイ編集部/写真:南 孝幸

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