文:太田安治/写真:南 孝幸、赤松 孝
【クルーズ適性比較】ヤマハYZF-R7・ホンダCBR650R・カワサキNinja650・アプリリアRS660
マシン造りの「味付け」がクルーズ適性を左右する
ツーリングのシチュエーションは多様だ。混雑した市街地、速度域が低い郊外、淡々とクルーズする高速道路、刻々と変わる景色とコーナリングを堪能する峠道……。そうしたシーンで重要なのは絶対的な速さではなく、ライダーを疲れさせないキャラクター。
今回の4車はフルカウルスポーツという点は共通しているものの、キャラクターの違いは大きい。直進安定性と乗り心地の良さ、無造作なスロットルとシフト操作でもギクシャクしないエンジン特性、カウル/スクリーンが生むウインドプロテクション性能の配分の違いが各車の乗り味を形作っている。
最新モデルのYZF-R7は意のままに向きを変えるスポーティなハンドリングと、そのハンドリングとは裏腹にどの回転域でもフラットに力強く反応するエンジン特性が特徴で、想像よりはるかに扱いやすい。ただしライポジは深い前傾姿勢で、長時間のゆったりツーリングだと身体に掛かる負担が大きい。
RS660のポジションはYZF-R7より楽で、乗り心地もスーパースポーツほど硬くない。とはいえエンジンが高回転まで回りたがる性格なので、これもゆったりツーリング向きではない。
上体の前傾度が最も弱く、ウインドプロテクション性能も高いのがニンジャ650。180度クランク採用のエンジンは極低回転でギクシャク感が出るが、中回転域からトップエンドまでの二次曲線的な加速感は実に爽快。足着き性も乗り心地もずば抜けて良好だ。
CBR650Rは4気筒エンジンのスムーズな反応と振動のなさが魅力。重量車的な落ち着いたハンドリングもライダーを疲れさせない。
この4車をあえて区分するなら、YZF-R7とRS660はスポーツ寄りで、ニンジャ650とCBR650Rはツアラー寄り。選ぶ際は自分がツーリング中に求める要素の優先順位をハッキリさせることが重要だ。
各車の特徴
[諸元並び順]
●エンジン形式 ●排気量 ●最高出力 ●最大トルク ●車両重量 ●シート高 ●燃料タンク容量 ●タイヤサイズ前・後
日帰り弾丸ツーリングが楽しい
車体が軽く、足着き性もカタログデータから想像するより良好。加えて低回転域から粘るエンジン特性で、頻繁な発進/停止も苦にならない。不快な振動はなく、コロコロと軽くスムーズに回るので、カウルの防風性能の高さと併せて高速道路クルージングも快適。強い前傾姿勢さえ苦にならなければツーリングもOK。ただし荷物の収納は小ぶりなシートバッグに限定されるから、日帰りで峠道を楽しむような弾丸ツーリングに合っている。
重厚なフィーリングを楽しめる
ホンダには本格スーパースポーツのCBR600RRがあるだけに、CBR650Rはツーリングユースに振ったキャラクター。4車中唯一の4気筒エンジンは「超」が付くほどスムーズで、静かな排気音、しっとりとしたハンドリングと併せて大排気量車的な重厚さが持ち味。見た目のボリュームに反して足着き性が良く、後部シートの高さが抑えられているので乗り降りも楽。シートバッグを装着しやすいこともツーリングユースでは見逃せないメリット。
ニンジャシリーズ1のツアラー適性
数あるニンジャシリーズの中で最も優れたツーリング適性を持つのが650。上体がごく軽い前傾になるライディングポジションとストロークを有効に使ってしなやかに動く前後サスペンション、カウルの防風性能により、長時間ライディングや荒れた路面での疲れにくさは秀逸。180度クランクのエンジンは使う回転域に応じてフィーリングが変わる性格で、低中速コーナーでの高い旋回力と併せてメリハリの効いた走りが楽しめる。
意外にポジションはラクで快適
ハンドルは低くセットされているが垂れ角が弱めで、着座位置の高さと併せてライディングポジションは意外なほどの余裕がある。軽量な車体に弾けるようなパワー特性の100馬力エンジンの組み合わせにより、4台の中では群を抜いてエキサイティングなキャラクターだ。最新リッターバイクと同等の各種電子制御でスポーツライディングを支えるだけではなく、ライダーのスキル、道路状況を問わず安心・快適に走れることも特徴だ。
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文:太田安治/写真:南 孝幸、赤松 孝