文:中村浩史/写真:松川 忍
クシタニ 取材レポート
レストランなら、契約農家から納得いく材料を仕入れたい
日本の革ジャンメーカーといえば? バイク乗りにこう質問をすると、クシタニの名前はトップ3に入るだろう。もちろんパンツもテキスタイルも製造販売するが、原点に革ジャンがある。
「日本で最初に革ツナギを作ったと言われるクシタニですが、革製品のメーカーであると同時に、ずっとバイク乗りの安全を守るメーカーとしてやってきました」というのは、クシタニの広報であり、販売部門「クシタニ東京」の代表を務める櫛谷信夫さん。
最たるものがツナギであり、革ジャン。ライダーの安全を守るための最適な素材である革との付き合いは、その経験や実績もユーザーに浸透していて、近年は若いユーザーも増えている。
「今まではベテランのお客様のイメージもあったと思うんですが、最近は若いお客様が、事前に情報を吟味してから購入に来てくれます。若いファンのみなさんは、情報の収集も上手いですね。クシタニの考えに共感してくれているんだと思うと、嬉しいですね」
ウエアがライダーの安全を守る、という思いを商品にすべく、クシタニは独特な手法を採る。特に革製品に関して、素材を仕入れて裁断、縫製で製品を仕上げるだけでなく、素材から製造特許を取ってオリジナルの『バイク専用』の革を作り、生産に入るのだ。
「確かにコストはかかりますが、いまはクシタニが手配できる『いいもの』=安全なものを、頑張った価格で発売しているということです」
櫛谷さんは、現在市販されている製品をレストランに例えてくれた。メニューの中には、買ってきたお惣菜をレンジで温めただけのものから、材料を買ってきて調理したもの、そして契約農家に材料を生産してもらって、調理して出してくれるものがあるという。
一概にどれが良い悪いではない、それはニーズに合ったものを消費者が選べばいいだけ。クシタニは、契約農家に「こういう野菜を」と指定して作ってもらっているし、場合によっては自ら農作物を作り、それを調理して出すレストランでありたい、という。
「革ジャンは、クシタニの職人が作りたいものと、一般的な価格帯が離れている時期があったんですが、今は思った通りのものを作って、イイものだから高価なんだ、と納得してくれるお客様が増えました。お客様側が成熟してきたように思えますね」
ウエアはライダーを護るもの。クシタニにはサーキット、ツーリング、街乗り専用の材料を使った料理がある!
クシタニ おすすめレザージャケット
クシタニ独自の撥水性に優れ、家庭でクリーニングもできる「エグザリートレザー」で、立ち襟と呼ばれるスタンドカラー革ジャンを製作。肩、ひじ、背中に着脱式のソフトパッドを備え、カラー/サイズのフルオーダーも可能。ブラックもあり。
通常は仕上げに表面顔料を塗布するレザー製品を、表面仕上げせずに仕上げたシングルライダース。ツヤ消しのような革の表情がそのままで、柔らかく伸縮性の高いジャケット。ライダースというより、一般の街着のニュアンスがありながら、肩、ひじ、背中のソフトパッドを標準装備。写真のカラーはオリーブグリーン。
脇にケブラーニットとシャーリング、エアインテークやダクトも装備した、レザースーツ的シルエットを持つフィット感の高いスポーツジャケット。撥水性が高く、自宅でクリーニングもできる、クシタニ独自の「エグザリートレザー」を使用し、フィット感と着心地の柔らかさを両立している。
文:中村浩史/写真:松川 忍
※この記事は月刊『オートバイ』2021年12月号の特別付録「RIDE」に収録した内容を一部再編集して掲載しています。