文:太田安治、オートバイ編集部/写真:鶴身 健
カワサキ「Z650」解説

Kawasaki Z650
総排気量:652cc
エンジン形式:空冷4ストDOHC2バルブ並列4気筒
車両重量:211kg
エンジン、車体を新設計シャープな走りが自慢!
1976年に登場したZ650は、そのスタイリングからZ2の弟分と思われがちであるが、実際は大きくメカニズムを異にする、軽量・コンパクトなスポーツモデル。当時最大のライバルであったホンダのCB750フォアに対し、カワサキは動力性能ではZ2で対抗し、俊敏な走りではZ650で対抗するという挟撃戦略を想定。そのためにZ650は当時最高の技術で開発されたのである。
エンジンは一体鋳造クランクや分割式コンロッド、プレーンメタルベアリングなどが投入された高度なメカニズムを採用。これをZ2よりもコンパクトな車体に搭載し、快活なパフォーマンスを狙った。
「ザッパー」という愛称は風を切って走る擬音が由来。当時は俊足モデル全般をそう呼んでいたが、Z650の鋭い走りは、いつの間にかこの愛称を独占させるようになっていた。

ページ上の車両は1976年式の初期型、この撮影車は1981年式のF型。後年、輸出専用車となったZ650は前後キャストホイールを標準装備していた。

Z2同様の空冷直4ネイキッドだが、Z650は丸みを帯びたタンク、薄くスリムなテールカウルなど、細部の違いで印象が大きく異なる。
カワサキ「Z650」ライディングポジション・足つき性
シート高:800mm
ライダーの身長・体重:176cm・62kg

1000ccクラスのZに比べると車格もポジションも明らかにコンパクト。エンジン幅が狭く、足つき性がいいことも好評を博した。

カワサキ「Z650」各部装備・ディテール解説

エンジンは排気量652cc、最高出力は64PS。このエンジンは高度な技術を投入した意欲作で、後に排気量が拡大され、750ccモデルに活用される。

同時期のZ2系のようなモナカ構造の4本出しマフラーではなく、Z650にはモダンな左右2本出しの一体型マフラーが装着されている。

アナログ2連メーターの中央にインジケーター類を集中配置。国内仕様では回転計下に速度警告等がある輸出仕様では未装備。

国内仕様のZ650はフロント19インチ径のワイヤースポークホイールだが、写真は輸出仕様でキャストホイール仕様だ。

リアホイールは18インチ。撮影車のF型はリアにドラムブレーキを採用していたが、中にはトリプルディスク仕様のC型などもあった。

大径の丸形ヘッドライトを高い位置に装着するデザインはカワサキの空冷ネイキッドの特徴。Z650もその例に漏れない。

丸みを帯びた形状が特徴の燃料タンクの容量は16.8L。排気量を738ccに拡大した後継モデルのZ750FXⅡにも使われた。

シートは脱着式ではなく、車体右側にヒンジがあり、開閉してシート下の収納スペースなどにアクセスできるようになっている。

後ろ向きにツンと鋭く尖った造形が目を惹くZ650のテールカウル。重厚なZ2などとは一味違うモダンで軽快感あふれるデザイン。
カワサキ「Z650」主なスペック
全長×全幅×全高 | 2170×850×1145mm |
ホイールベース | 1420mm |
最低地上高 | 145mm |
シート高 | 800mm |
車両重量 | 211kg |
エンジン形式 | 空冷4ストDOHC2バルブ並列4気筒 |
総排気量 | 652cc |
ボア×ストローク | 62×54mm |
圧縮比 | 9.5 |
最高出力 | 64PS/8500rpm |
最大トルク | 5.8kgf・m/7000rpm |
燃料タンク容量 | 16.8L |
変速機形式 | 5速リターン |
キャスター角 | 27.0゜ |
トレール量 | 108mm |
タイヤサイズ(前・後) | 3.25H-19・4.00H-18 |
ブレーキ形式(前・後) | Φ275mmディスク・Φ180mmドラム |
文:太田安治、オートバイ編集部/写真:鶴身 健