以前、クロスカブ110の試乗インプレを行ったのは、未舗装路の林道といった若干特殊な環境だった。そのトコトコと粘り強い走破力と、多少の凸凹も意に介さないストローク量を確保したサスペンション、そして高めの最低地上高の設定など、しっかりアドベンチャーモデルとしての自由度の高さに感心したのを覚えている。今回は、舗装路100%、普段の通勤のみで使用した。
文:山口銀次郎/写真:西野鉄兵

ホンダ「クロスカブ110」通勤インプレ

画像: Honda CROSS CUB110 総排気量:109cc エンジン形式:空冷4ストOHC2バルブ単気筒 シート高:784mm 車両重量:106kg 税込価格:34万1000円(くまモン バージョンは35万2000円)

Honda CROSS CUB110

総排気量:109cc
エンジン形式:空冷4ストOHC2バルブ単気筒
シート高:784mm
車両重量:106kg

税込価格:34万1000円(くまモン バージョンは35万2000円)

通勤快速マシンとしての土俵とは異なる、マニュアルミッションの味わい深さで醸し出す雰囲気のみを評価されがちだが、キッチリぶん回すと和み系とは異なる元気な姿をみせてくれた。

クラッチレバー操作を必要としない、カブ系ロータリー式マニュアルミッションを搭載し、エンジンの回転上昇とギアチェンジの動作ひとつひとつがドラマチックで、いかにも「操縦している」という実感に繋がり、退屈な通勤路が充実のライディングタイムとなる。

エンジン回転数を示すタコメーターがないので、エンジン回転数の上昇は体感的なものになるが、その点が逆に毎度毎度のシフトチェンジでのエンジンフィーリング(シフト前のギアのエンジン回転数との兼ね合いで)が異なるので、興味を持って操作することで楽しみが増す。

画像1: ホンダ「クロスカブ110」通勤インプレ

実際に、エンジンを回さずに低回転域で速やかにシフトチェンジをしていくと、4速のトップギアでの速度のノリは重ったるく、50km/hからの伸びがまどろっこしく感じてしまう。

排気量が大きくトルクが太い場合では、トップギアでも負荷を感じずに吹け上がってくれるものだが、110cc弱の排気量のマニュアルミッション4速トップギアでは、速度をノせるためには低いギアから丁寧にぶん回してシフトアップしなくてはならない。

わかりきっているかもしれないが、それだけ操作の影響が大きく影響するということなのだ。むろん、キッチリぶん回せば、30mほどの距離もあればセカンドギアで50km/h以上の速度に達する加速力をみせるので、その元気良さは侮れないものがある。

画像2: ホンダ「クロスカブ110」通勤インプレ

エンジンを回してサードギアに繋げると加速力に淀みはなく一気に吹け上がる。このサードギアに於いての淀みない加速力は、車重やタイヤサイズなどの影響、さらに路面との抵抗など負荷が大きくなり力強さを試される速度域なのだが、クロスカブ110は物ともしない。ロー&セカンドのムチの入れっぷりで、こうまで性格が豹変するか! と驚くばかり。

カントリークロス的に低速で「粘り良くトコトコとのんびり」といったキャラクターのはずで、当然トコトコも狙い所バッチリに応えてくれるが、ギンギンに回ってくれるエンジンは、もしやもしやと通勤快速前線に顔を並べたくなるほど。と、いうのは少々お袈裟かもしれないが、それだけ幹線道路での流れに抵抗もなく、あわよくばリードする力強さを備えているということなのだ。

画像3: ホンダ「クロスカブ110」通勤インプレ

操安性を左右するといっても過言ではないショックユニットには、スーパーカブ110譲りのテレスコピックフロントフォークを装備。スポーツモデル同様の落ち着いた乗り心地を提供してくれるのも特徴のひとつと言える。

小径ホイール採用のスクーターでもテレスコピックフロントフォークを採用するモデルも多いが、そのほとんどがスペース的にも容量的にも寂しいダンピング機構と成らざるを得ないが、クロスカブはスクーターと異なる独自路線で足回りを重視しているように伺える。

低速走行から常用速度域まで、車格の割に長めのスイングアームとストローク量を持たせたリアショックとの相性も良く、多少の荷物を搭載しても細やかな衝撃を吸収&収束させドッシリ落ち着き、長時間走行での疲労軽減にもつながることだろう。

モデルの下川原リサさんが、クロスカブで日本一周を達成したと聞くが、その乗り心地の良さゆえに相棒に選ばれたのだろうと納得してしまった。なかなかの上質な車体パッケージで、正直お得感アリアリと思わせるポイントでもあった。

画像4: ホンダ「クロスカブ110」通勤インプレ

元々片手運転を視野に入れたカブ特有の車体構成なので、ハンドルとシートの距離が近く体躯の大小関係なくハンドルへの入力がしやすくなっている。

自由度の高いハンドリングとも言えるが、身長177cmの私はゆったりと乗りたい乗車姿勢をとると、シートの着座位置が後ろも後ろ、というか臀部がハミ出てキャリアの当たってしまう感じで、尾てい骨をしたたか痛めるポジションとなってしまう。

歴史あるカブ特有のポジションなので、万人が諸手を挙げて受け入れていることだと思うが、あえて私の困り事としてここに記しておこうかな、と。なので、カブ系のモデルに乗る時は、こぢんまりと正しい姿勢で乗ることを心がけている。

21世紀、年号は令和のいま、前後ドラムブレーキというのはなかなか時代を感じさせる設定だが、前後バランス良く効かせることで充分の制動力を発揮し、コントロール性も豊かで不満はなかった。ただ絶対的な効きやコントロール性は比較すること自体無粋に感じるほどディスクブレーキに劣るので、過度な期待は禁物だろう。

また、フロントブレーキしか使わない癖のあるライダーにとっては、前後のブレーキングバランスの必要性を知る良いモデルになるといえるかもしれない。正直、ドラム式のフロントブレーキのコントロール性について苦手意識があったが、コントロール幅に深度がありストレスを覚えることはなかった。前後ドラムブレーキ設定モデルに幸あれ! と、なぜかイキんでしまった。

画像5: ホンダ「クロスカブ110」通勤インプレ

少し走行するだけで、エンジン回転抑え気味に大人しく走行する場合と、ギンギンにぶん回して走行するとではかなり性格が異なることが分かったので、給油1回のタイミング約155km走行を2回分、徹底して乗り方を変えて走行すると燃費はどれぐらい変化するのか? と、試した。

しかし驚くほど変化はなく、大人し目走行で44.9km/L、ぶん回し走行で44.3km/Lといった結果が出た。さすがカブ系エンジン! 乗り方を変えても動じない懐の深さというか、ビクともしないタフネスさを見せつけられた気がした。

今回の試乗距離:366km。実測燃費:44.6km/L。

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