バイクの作りが現代化した時代に登場したことと、ほとんどが国内流通車だったことからコンディションにも差異が少ない。その上で決定的な弱点はなく、基本的には丈夫と言われるのが、カワサキのゼファー1100/750。それでも生産終了からすでに15年以上経ち、経年による劣化もある。ではどこに気をつければいいか? ストライカーワークスで聞いた、そのポイントを前編・後編に分けてお届けする。
※本企画はHeritage&Legends 2021年1月号に掲載されたものです。

丈夫だからこそ配慮が必要な箇所が出てくる

前編からの続き〉

それでも……と鈴木さんは続けた。

「ゼファー1100/750はトラブルが起きないわけではないんですね。それなりに時間も経った車両ですから。どちらかと言えば“昔バイクあるある”を意識してチェックしていってもらえばいいかなと思います。

例えばキャブレター。普通に乗っていればおかしくなることは少ない。ですが燃料タンクの汚れや錆びがキャブレターに入って不調の原因になってしまうことがある。フューエルラインにフィルターを付けたりタンクを錆取りしたりしても出るようでしたら、タンクを交換するか、いいコーティングをするという選択も出てきます。

エンジン面だと、距離が出てきてヘッドカバーからオイルがにじむというのはありますね。ヘッドカバーガスケットを交換する際にタペットクリアランスも見て、できれば調整するといいでしょう。

長期間使用してきたエンジンはタペットクリアランスが大きく(広く)なると思われがちですが、バルブがヘッドに潜り込んできてクリアランスが小さくなったり、中にはクリアランスがゼロになっている場合もあります。それが原因で圧縮不良によるエンジン不調が起こっているケースも度々あります。あとはハーネスやシール等のゴム、それからホイールベアリングなどを見直す、交換するというところです。普通の整備になってきますけど、それをきちんとするというのが大事かと思います」

画像: ▲1100は1992年3月登場でボイジャーXIIの腰下に新作の腰上を組み合わせた。設計や組み立ては今の方法に近づいたが、30年前のプロダクトであることを考えれば旧車的な素性も見せる。そんな昔バイクにありがちなことが出ると思えば、維持は難しくない。

▲1100は1992年3月登場でボイジャーXIIの腰下に新作の腰上を組み合わせた。設計や組み立ては今の方法に近づいたが、30年前のプロダクトであることを考えれば旧車的な素性も見せる。そんな昔バイクにありがちなことが出ると思えば、維持は難しくない。

旧車と現代車の狭間のモデルという位置づけだから、ある面では現代的で長保ちする。一方でシンプルなキャブレターや空冷エンジンなどの作りは旧車的。その双方の特長をよく考えて対応していけばいいということだろう。

「今回撮影用にお借りした車両も、オーナーさんが自分でいろいろ作業して、きれいにまとめられています。その上で普段も2週間に1回、1カ月に1回と近距離でも乗ってられる。サーキット走行まで楽しんでおられるんですね。

そんなユーザーさんがゼファーには多いと思います。自分でひとつひとつ手を入れて、きちんと面倒を見る。この車両も今積んでいるエンジンはヨシムラピストンが入っていますが、先日サーキットで白煙も出たのでということで、このままオーバーホールしてくださいと依頼を受けました。こうした重整備は私たちに頼んでいただければいいと思います。

足まわりなどはゼファーにはパーツがたくさんありますから、カスタムも兼ねてリフレッシュという考えでもいいと思いますし、そういう気持ちで当たった方が難しくなくて済むでしょう。合わせてエンジンも冒頭の電気もリフレッシュして、オイル交換などメンテナンスも行って、長く乗れる、いいモデルだと思いますよ」

簡単なことから気をつけていけば、まだ楽しめる。

アフターマーケットパーツに関してもスイングアームやマフラー、ステップなど、多くの重要パーツがラインナップされ続けている。こうしたパーツの相談や取り付けにも、ストライカーワークスの存在はありがたいし、実際にパーツを見に来るお客さんが訪れることも多いそうだ。

ヘッドカバーのオイルにじみに対応
ガスケット交換時にタペットクリアランスも調整

画像1: ヘッドカバーのオイルにじみに対応 ガスケット交換時にタペットクリアランスも調整

シリンダーヘッドカバー合い面からのオイルにじみは性能的な問題はあまりないが、マメに確認を。ヘッドカバーガスケット交換時に合わせてタペットクリアランス(下イラスト、シム調整による)を調整するのも長期的に見れば賢い選択だ。

画像2: ヘッドカバーのオイルにじみに対応 ガスケット交換時にタペットクリアランスも調整

長期間使ったエンジンではバルブクリアランス増ではなくバルブがヘッドに沈む形でクリアランスはむしろ減ってしまっている可能性がある。ここはプロショップに相談を。

ホイールベアリング類はタイヤ交換時に確認

画像: ホイールベアリング類はタイヤ交換時に確認

他機種と同様に、ゼファーでもホイールベアリングには配慮しておこう。ホイールという位置から水も浸入しやすく、大きな荷重も受けるところでもあるので、タイヤ交換の際などに合わせて点検し、必要に応じて給脂する。壊れて回転しにくいケースも多くあるので、これもプロの目で見極めるなどし、交換。消耗品と考えていくのがいい。ステムベアリングも同様に気を配っておきたい。

前後サスも動きを確認してオーバーホールを

画像: 前後サスも動きを確認してオーバーホールを

ゼファーは1100ではインナーチューブ径φ43mmと大径のフロントフォーク。リヤはオーソドックスなツインショック。きちんとした腰のある動きになっているかを確認、年数や距離によってはオーバーホールも検討しておきたい。社外品も多いのでカスタムとして新品を選び、しっかりセットアップすれば全体としての性能維持に効く。

キャブレターは普通に乗っていればあまりトラブルはない

画像1: キャブレターは普通に乗っていればあまりトラブルはない

ノーマルでは負圧式のCVK34(途中からK-TRIC用のスロットルポジションセンサを追加)キャブレター、換装時にはFCRやTMRなどを使うことも多いが、普通に乗っている分にはトラブルはあまり見られない。

画像2: キャブレターは普通に乗っていればあまりトラブルはない

ただ、燃料タンクから汚れや錆が来て内部詰まりがないかは見ておくべきだし、長く使ったものは摩耗も注意。

スプロケットカバー交換時には内部のコードも注意

画像: スプロケットカバー交換時には内部のコードも注意

エンジン左サイド、フロントスプロケット部にはノーマルではカバーがされる(写真/ゼファー1100)。750でも同様のカバーがされるが、これを社外のスプロケットカバーに変える場合、オルタネーター(クランクエンド部。1100ではシリンダー背面のスリットの入った部分内なので問題なし)から出るコードが剥き出しとなるのでこの外れや劣化に注意。

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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