意外なパーツの流用が大きな効果につながる
「特別なことはしていないんですよ」。
メカドックでメカニックを務める畑中さんにこのGS1000Sの特徴を聞くと、こんな答えが返ってきた。
「いや(笑)、それがコンセプトのようなもので、“ノーマルのスタイルを崩さないで、あまり目立たないように手を入れたい”というオーダーをいただいたんです。それに沿って、できるだけノーマルっぽく、でもこっそり速いという仕様に仕立てたんです」
往年の5本スポークに近いデザインを持ったホイールはMAGTAN JB1で、色はシルバーをセレクト。スイングアームがビトーR&DのJBスクエアタイプ、フロントフォークが同じくJB-KYBというあたりも、オーダーに合わせた目立たなさと言うか、ノーマルに近く見える雰囲気を醸し出している。見た目は確かに普通だが、ここまで説明した内容で軽量化や作動の上質化が図られたことは、既に十分わかる。
エンジン側もJBコスワースφ75mmピストンによって998→1144cc化され、余裕のトルクを持たせた。畑中さんはここに、意外なパーツの効果を加えられたのだと言う。
「クラッチです。GSにGSX1100Sカタナのクラッチを使うとフィーリングが良くなるというのをネットで見つけたんですね。もちろん両車でハウジングの厚みが違う(カタナの方が厚い)ので、そこはクリアしないといけないんですが、その違いを解消できるカバースペーサーを入手してコンバートしたんです。
そうしたら“こんなに上質になるの?”ってくらいにフィーリングが良くなった。これはびっくりです。カタナそのものよりキレもつながりも良くて、それこそ街乗りするにもいい。排気量を大きくして高まった低回転からのトルクとで、このGSは普段使いもすごく良くなりました。いいバイクって、普段使いで良いバイクのことだと考えていますけど、これはそうなったと思います」とも畑中さん。
冒頭の“特別なことはない”というのは、普通に乗れるための要素をきっちり作り込んだからこそ言える言葉。何かが突出するよりも、全方位を高いレベルでまとめるというのは実は難しい。それを、メカドックはこの車両に実現したわけだ。
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Detailed Description 詳細説明
“クーリーレプリカ”GS1000Sの大きな特徴となるビキニカウルはノーマル、水色×白の純正スズキ・レーシングカラーもきれいに表現した。
時計や燃料計、油温計も備えたメーターまわりもGS1000Sのノーマルで、ステムはJBパワー。ハンドルバーはポッシュ・スーパーバイクバーをセットしフロントマスターシリンダーとクラッチホルダーはゲイルスピードで操作感も高める。クラッチは調整もしやすい。
独特の上面パターンを持ったシートも純正がベース。左右および前側両側のエッジを落とし、座りやすく自然に操作できるよう加工している。
キャブレターはまめしばCR-Mφ33mm(CRスペシャルにオリジナルノズル等を加えている)のTPS仕様を3Dエアフィルター仕様で装着した。
アルミの地色をきれいに見せるエンジンはオーバーホールするとともに、JBコスワースφ75mm鍛造ピストンによって998→1144ccにスープアップして低回転域から余裕のトルクを発揮する仕立てとした。そのトルクはGSX1100Sへのクラッチコンバート(カタナの方がハウジングが厚い分を、ファクトリーまめしばのクラッチカバースペーサーによって調整)でより生かされ、使いやすくなったという。
フロントフォークはJB-KYBで、インナーチューブ径は純正φ37mmから1mmサイズアップの38mm。フロントブレーキはブレンボレーシング4Pキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスクφ320mm。ブレーキラインはステンレスメッシュ+クリア被覆だ。
排気系はバンス&ハインズ製4into1でスチールめっき仕上げ。軽量化も果たした上にルックスも車両全体に合ったものとなっている。
リヤブレーキはブレンボ2ピストンキャリパー+サンスターφ250mmディスク。前後ホイールはJB MAGTANのJB1で2.75-18/4.00-18サイズ。スイングアームはJBスクエアタイプでリヤショックはナイトロンR1。全体にうまくノーマルのような雰囲気を作り出す。
ライディングステップもビトーR&D。滑らかなトルクや全体の軽量化等に合わせてドライブチェーンもEKの520ZVX3に変更した。